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忙しい時こそ、誰にも譲らない時間を作り、少しでも自分のための食づくりに向き合うと心が整います。特に野菜には不思議な力があり、お世話をする気持ちで料理すれば気持ちが優しくなり、それを感謝して口にすれば細胞が喜ぶ。細胞は喜んだら、どんどん健やかに美しくなる。

野菜はスープにして、出汁まで余すところなくいただくことで、その未知数のパワーをいただくことができます。美と健康は、残念ながら楽をしては得られませんが、日々楽しみながら積み重ねれば、心も軽くなり、細胞レベルの美しさと快調さにつながります。

長い歴史の中で育まれてきた「医食同源」を今一度、取り入れてみませんか?

突然ですが、野菜はお好きですか?

子供の頃にはキライだったことも多いお野菜、オトナになったら大好きになった、という方も多いのではないでしょうか?

なぜキライだったか?というと、子供の味覚はオトナよりもかなり敏感で、キライな野菜の多くは苦味や辛味、えぐみ、香りなどがあったためであることが多く、また本来人間の味蕾(みらい:味を感じ取る舌の細胞)は、苦味を感じたときに<毒>だと認識する本能があったりもします。ですので子供が野菜嫌いになることはかなり当然のことだといえます。そして、成長とともに食を楽しむことができるようになると、大抵の人は自然と野菜も食べられるようになります。

オトナになると、今度はダイエットや健康への関心で「お野菜をたくさん摂ろう」となってきたりします。

では、野菜はどんな形で摂るのが理想的なのでしょうか?

酵素をより摂るためには加熱しない生野菜やスムージー?

カロテンをより摂るために野菜炒め?

栄養素によって、各々の素材によって、ベストな食べ方があると思います。

ただ、いくらカラダに良いといっても美味しいとは思えないものを無理に食べ続けることはなかなか難儀だったり、気が進まずにいただくものは、自らの吸収力が落ちる気がします。(私たちも、生き物ですから!)

本当に人間の身体に大切なものは、感覚的に「美味しい」と思えることも重要だと思うのです。

そんな中で今回は、「美味しいから」毎日食べたい、そして毎日食べたら身体の細胞がイキイキしてしまう、なめらかベジスープのお話です。 まずはナゼ、野菜を摂るのがよいとされるのでしょうか?

注目すべきは植物が持つ “ファイトケミカル (phytochemical)”

最近よく耳にするようになった、植物が持つ栄養素 “ファイトケミカル”。

語源は、英語のfight(たたかう)ではなく、ギリシャ語のphyto(植物)+chemical(化学物質)です。自分で動いて移動のできない植物が、自然界の敵(紫外線や虫など)から自らの身を守るために持っている化学成分。人間から見ると、それは色だったり香りだったり、アクだったりします。栄養学的には、炭水化物・タンパク質・脂質・ビタミン・ミネラルの五大栄養素、第六の栄養素・食物繊維に次いで、第七の栄養素といわれることも。

ファイトケミカルとは、ポリフェノールやカロチノイド、含硫化合物の総称で、聞き慣れたところだとポリフェノールに分類される<アントシアニン><イソフラボン>やカロチノイドに分類される<βカロテン><リコピン>などの抗酸化物質。

紫キャベツ、赤かぶ、あずきなど、赤色や紫色の野菜・果物にはアントシアニンを含むことが多い。にんじんにはたっぷりのβカロテン

その成分によりますが、抗酸化作用、抗炎症作用、免疫力向上などが期待されるため、日常的に食事の中で摂ることで、現代のさまざまな疾患やアンチエイジングなどにも効果が見込まれています。

「抗酸化作用」が重宝される理由としては、酸素を取り入れて生きている人間の体内で、同時に生じている「活性酸素」を除去することが大切であるためです。「活性酸素」こそ、増えると組織を傷つけ、老化やガン、生活習慣病などを引き起こす一因といわれています。

ファイトケミカルの研究はまだ未知の部分もありながら、日本でも熊本大学名誉教授でいらした故・前田浩先生や、麻布医院院長の高橋弘先生が、いずれもハーバード大学で研究されたご経験と実際の臨床経験をもとに、ファイトケミカルが最も効果的に摂れると考えられた「野菜スープ」を提唱されています。

野菜のファイトケミカル成分の細胞壁 は、人間が生の野菜を歯で咀嚼したぐらいでは壊れず、加熱することにより細胞壁が壊れ、人間が吸収できる状態になるのだそうです。加熱した野菜は、生野菜よりも抗酸化力が10倍〜100倍ほどもあるとか。

「ナゼ、野菜スープが体に良いのか」については、PRESIDENT WOMANに掲載されていた前田先生のインタビュー記事がとてもわかりやすいので、ご参考までに。

https://president.jp/articles/-/62178

ファイトケミカル増し増しの “なめらかベジスープ” をつくる

研究者の先生方のメソッドも踏まえて野菜スープを色々試してみると、野菜を煮込んで撹拌したポタージュ状のスープにすることで、より栄養価を高めながら、美味しくリッチに仕上げられることを実感します。

普段なら捨ててしまいがちな、成長点と呼ばれるヘタや芯、紫外線や外敵にさらされやすい外皮、葉物であれば緑が濃い部分などが、より抗酸化物質が多いといわれていますので、そういった部分こそ大事に使います。そしてそれらを入れたら、出汁だけではなく具材もすべていただきたいので、粉砕してなめらかなポタージュ状に仕上げた方が食べやすいのです。さらに、ヘタや皮には滋味深い野菜のうまみエキスが潜んでいるため、味わいも深くなります。

ファイトケミカルに関しての加熱は、細かく言えば93℃ぐらいが適温だそうなので、そのぐらいの温度が可能な電気調理器で煮込めたらベスト。でもそれが難しい場合は、水分と野菜をお鍋に入れて、火が通るまで煮込んで。加熱中に揮発してしまう(気体化して逃げてしまう)ファイトケミカルもあるそうなので、極力フタをして加熱するのが良いそうです。それをミキサーやフードプロセッサーなどで撹拌して “なめらかベジスープ” へ。

今は、これらの「煮込んで、撹拌する」という一連の工程をスイッチひとつで操作できるスープメーカーも出ていますので、かなり簡単に作ることも可能です。

なめらかなベジスープなら、離乳食から介護食まで、誰もがいただけるスープになるというのもひとつの特長です。病後やファスティング後の回復食としても、消化が良く、美味しくいただけます。

なかなか温度まで意識したパーフェクトな作り方は難しいかもしれませんが、まずはポイントだけ押さえて、手持ちの器具で可能な限り作っていくのでも十分。

野菜の種類の選び方は、まずメインの野菜を決めると組み立てやすく、なめらかなポタージュ系なら、メインと同系色の野菜を合わせるとキレイな色味に仕上がりやすくなります。

そしてできるだけ、季節の露地物を選びましょう。より栄養価も高く、味や香りも濃厚である傾向があります。さらに外皮なども使うので、汚れや農薬をよく落として、あるいは農薬がまり使われていないものを選ぶなど、可能な限り意識できればと思います。

ケバケバの根っこは取りますが、根っこの生えている白い硬い芯は、捨てるべからず!

そして栄養価の面でも味の面でも、基本的に玉ねぎを入れることをおすすめします。特に、普段は捨ててしまいがちな根っこの上にある芯の部分を必ず入れましょう。ココこそが成長点として栄養たっぷりの場所。そのまま炒めたりしていただくには抵抗ありますが、粉砕してしまえばわかりません。

また、とろみをつけたい場合はじゃがいもや里芋、さつまいもなど、いも類を入れて。女性の方は大さじ1程度の大豆を入れると、女性ホルモンに近いと言われるイソフラボンも自然と摂れます。

水分には、さっぱりしたい場合は水、コクを出したい場合は牛乳で。水+牛乳でもOK。素材が美味しければ塩だけでも十分ですが、組み合わせによっては味付けした方が美味しくいただけますので、和風なら昆布茶、洋風ならコンソメ、中華風なら鶏がらスープ、といった顆粒のものを使うと便利です。気になる方は、無添加などにこだわっても。

仕上げに、エキストラバージンオリーブオイルやごま油、野菜のソテーやハーブ、香辛料などをトッピングすれば、見た目も栄養価もワンランクアップしたスープになります。

なめらかベジスープ、毎日食べてみたら

なめらかベジスープを日常に取り入れてみると、食べて美味しいだけではなく、細胞レベルで身体が喜んでいる感じがしてきます。実際に、実践した女性たち7-8人の感想は以下のようなものでした。

・3ヶ月ぐらいで便秘が解消し、「痩せた」「お肌がキレイになった」と言われるようになった

・3週間ほどで、腕時計のバンドがゆるくなった

・にんじんの葉を入れたスープのデトックス効果がすごかった

・満腹感が得られるので食べ過ぎなくなった 特に遅い夕飯などでは、栄養的にも身体の負担的にも、ベジスープがあれば十分満足

じゃがいも・玉ねぎ・大豆などと合わせた、見た目の色よりも格段美味しいにんじんの葉のスープ。抗酸化物質が最も多い部類のにんじんの葉は、デトックス効果がすごい!

もちろん個人差はあるものの、ファイトケミカルを意識した野菜スープは続ければ大抵の方が何かしら身体や食習慣の変化を感じるようです。そしてスープの栄養価や美味しさが身体を癒してくれる一方で、スープを作る行為もまた、気持ちを癒してくれるマインドフルネスな時間となります。

なめらかベジスープに使う野菜は、カタチが悪くても大きさがバラバラでも、極力新鮮であれば見た目は問題ありません。もし、農家さんが規格外や獲れすぎで捨ててしまうようなものが入手できれば、エコであり、エシカルであり、より価値あるスープになるでしょう!

なめらかベジスープ 作り方メモ

1. 精進スタイルを参考に

新鮮野菜の皮やヘタも、きれいに汚れを落として入れてみます。精進料理の教えでもある「一物全体(いちぶつぜんたい)」では、「皮も根っこも、ひとつの食材をまるごと余す所なくいただく」というのが自然界への敬意でもあり、命をいただく感謝の姿勢でもあります。現代においては、ゴミやムダを少しでも減らすエコにもつながります。何より、実皮やヘタや種といった部分は栄養と滋味深さの宝庫でもあります。

また、季節のもの、地場のものをいただくというのも精進料理の基本。そのロジックは実は栄養価にも通じていて、前述にもある通り季節の地場のものはより栄養価が高いことが多いので、そのあたりも意識してみるとよいと思います。

ちなみに大根やにんじんは、通常の可食部である根っこよりも葉の栄養価の方が高いそうなので、できれば葉付きを見つけて、余すところなくいただきたいものです。

にんじん、大根の葉は根の部分よりはるかに高栄養。捨てるべからず!

2. 野菜の色を、同系色でまとめて

なめらかベジスープの場合、それぞれの野菜の色が混ざり合いますので、色味を同系色で揃えるとより美味しそうに仕上がります。大根・白かぶ・カリフラワー・れんこんなどの白い野菜、葉物やブロッコリー・アスパラガス・グリンピースなどの緑色野菜、トマト・パプリカ・にんじんなどの赤色野菜、という感じで。玉ねぎやえのき、生姜などは色味に影響を与えませんので、基本的に何色とでも合わせられます。その日のテーマカラーも意識して作ってみると、スープ作りがより楽しくなったりします。

3. 味付けやトッピングで遊んでみる

新鮮で美味しい野菜であれば、塩だけでも美味しく仕上がりますが、味付けしたい場合・バリエーションを増やしたい場合は、和なら昆布茶をはじめ、白だしや味噌、洋ならコンソメ、中華なら鶏ガラスープなど。カレースパイスやタイ風なども目先が変わります。また、精製されていない油、信頼のおけるエキストラバージンオリーブオイルやごま油など(できれば天然の素材の色が残った油)、をひとまわしかけることで栄養価も風味もアップします。ガリガリと挽いた胡椒もぜひ。

他にも、スープに入れた野菜の一部をオリーブオイルでソテーしてのせたり、ハーブやスパイス、ナッツ、チーズなどのトッピングも、ちょっとリッチなスープに仕上げてくれます。

なめらかベジスープ、レシピ例

【菜の花とアスパラガス】

菜の花、アスパラガス、玉ねぎ、じゃがいも、えのき、大豆(乾燥大豆を水で戻したものを冷凍ストックしておいたもの。以下同)、牛乳、水、無添加コンソメ顆粒。仕上げには、エキストラバージンオリーブオイル(以下、EVオリーブオイル)、黒胡椒、菜の花&アスパラのソテーをトッピング。春の香りたっぷりです

【れんこん】

れんこんをメインに、里芋、しょうが、玉ねぎ、えのき、大豆、牛乳+水、昆布茶。仕上げには、EVオリーブオイル、黒胡椒。れんこんの微妙なシャリ感と里芋のとろみがあり、各素材の優しい甘みが出ます

【かぼちゃとあずき】

かぼちゃ、あずき、玉ねぎ、えのき、大豆、牛乳+水、無添加コンソメ顆粒。仕上げには、EVオリーブオイルとセージの葉をトッピング

【さつまいもとあずき】

さつまいも、あずき、玉ねぎ、えのき、大豆、牛乳+水、昆布茶。仕上げには、バターとシナモンをトッピング

【金時人参とトマト】

金時にんじん、トマト、玉ねぎ、えのき、大豆、水、無添加コンソメ顆粒。仕上げには、EVオリーブオイルと黒胡椒。トッピングにはミニトマトをスライスしてオン

【ゴールデンビーツ】

ゴールデンビーツ、にんじん、玉ねぎ、水、無添加コンソメ顆粒。1回目はごろごろベジスープにし、EVオリーブオイルとディルの葉をトッピングして。2回目は、その残りを撹拌してなめらかベジスープに。トッピングはEVオリーブオイルとチャイブを

【 野菜スープのメソッドを提唱される先生 】

<故・前田 浩 先生>

医学博士。ハーバード大学がん研究所研究員を経て、熊本大学名誉教授、バイオダイナミックス研究所理事長。大阪大学招聘教授、東北大学特別招聘プロフェッサー。副作用のない抗がん剤の研究で、ノーベル化学賞候補となる(2016年)ウィルス感染で活性酸素が大量に生成、細胞や核酸を傷つけることを、世界で初めて明らかにした。

(前田 浩「ウィルスにもガンにもスープの力」幻冬舎/2020年 より)

[ 前田先生の著書情報 ]

「ウィルスにもガンにもスープの力」幻冬舎

「最強の野菜スープ」(シリーズ)マキノ出版

「コロナから身を守る最効の野菜スープ」幻冬舎 ほか

<高橋 弘 先生 >
医学博士、麻布医院院長、ファイトケミカル研究家。1985年ハーバード大学医学部留学。ハーバード大学附属マサチューセッツ総合病院にて、フェロー、助手、助教授を経て内科准教授となる。帰国後、セレンクリニック診療部長などを経て、2009年麻布医院院長に就任。専門はがんと肝炎の治療。

(高橋 弘 「ハーバード大学式 命の野菜スープ」 宝島社/2015年 より、一部抜粋)

[ 高橋先生の著書情報 ]

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