パワーカップルとは、夫婦どちらか一方ではなく、両方が経済的に成功しているカップルを指します。
この言葉は欧米で生まれたもので、エンタメ業界やビジネス業界で成功し二人ともパワー(経済力・影響力など)を持ったセレブカップルを指す言葉として誕生しました。その後、一般にも広まり、現在は、双方とも高所得の夫婦がパワーカップルだと言われています。
今回は、パワーカップルの定義や、日本にはどれくらいの割合で存在するのか、などパワーカップルの実態について簡単に解説していきます。
パワーカップルの定義とは?高収入?社会的影響力?
パワーカップルとは?
夫婦、または付き合っている二人の双方が、高い能力を持っており社会的に成功しているふたりのことを指します。
例えば、妻が大企業の取締役、夫がクリエイティブ系の専門職で、それぞれが高収入を得ている場合などは、それぞれのキャリアで成功を収めていることから、パワーカップルと定義されます。
また、パワーカップルは消費意欲が高く、SNSでの発信力も強い場合が多いことから、「インフルエンサー」として注目されることもあります。
パワーカップルという言葉の由来
もともとパワーカップルという言葉は、
当初は世帯年収の高さだけではなく、職業や社会的なステータスのバランスも考慮されました。
そのため、そこまで高収入ではなくても、有名で社会的影響力がある夫婦や、社会的に尊敬される専門職についているカップルなどもパワーカップルと呼ばれていたのです。
しかし現在では、一般にパワーカップルと言う場合、年収だけを考慮するケースが増えてきています。
パワーカップルという言葉が出てきた当初は、社会的な影響力があるカップルという意味も含まれていたけれど、現在ではパワーカップルは単に「ふたりとも高収入のカップル」の意味で使っている人が多い、と理解しておきましょう。
パワーカップルの世帯年収はいくら?割合は10年で2倍になった
1000千万が基準?パワーカップルの世帯年収はいくら?
ところで、
一体パワーカップルと呼ばれる世帯の年収はいくら以上なのでしょうか?
実は、「世帯年収いくら以上がパワーカップル」という明確な定義はありません。国や文化によって基準が異なります。
例えば平均年収が約900万円のアメリカと、平均年収が450万円程度の日本では、パワーカップルの定義が異なるのは想像に難くないでしょう。
総務省の調査によると、共働き夫婦の平均世帯年収は約830万円(2023年時点)。それに比べると、1400万円という基準はかなり高収入と言えます。
夫婦ともに700万円以上の年収を得ている世帯数は、2013年には約21万世帯でしたが、2023年には約40万世帯と2倍近くに増加しています。この10年間で共働き世帯が増え、より高収入なカップルが増えていることがわかります。
日本におけるパワーカップルの割合は1%以下
次に、日本では実際に何割程度パワーカップルが存在しているのか、について確認していきましょう。
また、地域別に確認すると、南関東や東海、近畿エリアに高収入カップルが多く、都会に集中していることが見て取れます。
都市部では共働き高収入カップルが存在している一方、田舎ではとても珍しい存在のようです。
豊かな家庭と貧しい家庭の差が大きくなっている理由。拡大する世帯間格差
パワーカップルの割合が10年間で2倍に増えた、という数値を見て、
不景気なのに、なぜ?
と、不思議に感じる方もいらっしゃるかもしれません。
実際、日本全体で見れば給料は上がっておらず、貧困に苦しむ人も減っていません。パワーカップルが増えたということは、「金持ちが金持ちと結婚するようになった」ということです。
なぜ、このような事態になっているのでしょうか?
一因として、共働き家庭が増えてきた点が挙げられます。
日本では、昔から夫の収入が高いほど、妻の就業率が下がる、という法則が観測されていました。2023年のデータを見ても、夫の年収が400万円以下の場合と、400万円以上の場合とで比べると、400万円以上で高収入であればあるほど、妻の就業率が低い、という法則は健在です。
一方、夫の年収に関わらず、全体的に妻の労働力が上昇しているため、夫が高収入であっても、妻が働き、高収入を得ているケースが増えてきているのです。
また、高収入の女性は、高収入の男性と結婚するため、パワーカップルが誕生しやすい、という統計もあります。2023年時点で、年収1000万円以上の妻の69.2%が、夫の年収も1000万円を超えています。
高収入女性が、高収入男性とカップリングしやすい背景には、同業者と結婚している、という場合も多いですが、男性側が自分よりも学歴や収入が高い女性に対し、引け目を感じているという場合も珍しくないようです。
「男性の方が女性より収入が多くあるべき」という固定観念を男女ともに抱いているために、高収入女性の結婚相手が高収入男性に偏りがちなのでしょう。
パワーカップルに多い職業とは?
そんな高収入なパワーカップルは、どんなお仕事をしているのかが気になるでしょう。パワーカップルの職業は多岐に渡りますが、以下のような職業についていることが多いようです。
経営者・起業家
夫婦ともに会社を経営しているカップルは珍しくありません。ビジネススクールや大学院などで出会ったり、役員として職場で出会って結婚したりするパターンも多くあります。
経営者は孤独な存在ですから、同じ立場で語り合えるパートナーがいることは心強いことに違いありません。
高収入が期待できる専門職
弁護士や会計士などの士業。医師や薬剤師などの医療関係。ITエンジニア、AIの開発者などのIT関係の専門職など、高収入が期待できる仕事についているケースも多いようです。
国家公務員
外交官や政府の高官など、国家一種試験に合格したエリート公務員、または国立の大学教授など、高収入が期待できる公務員のカップルも存在します。
エンタメ業界
モデル、俳優、ミュージシャン、脚本家、など、競争が激しく、多くは低収入しか得られない業界において、一握りの成功者となった人物が、起業家などとカップルになるケースは珍しくありません。
俳優やモデルが経営者が違う業界にいながらもカップルになるのは、お互いの収入が釣り合いがとれたり、お互いの影響力に魅力を感じたりするからでしょう。
クリエイティブ業界
ファッションデザイナー、アートディレクター、小説家など、クリエイティブな世界で人気を得た人が、同じ業界の売れっ子とカップルになり、パワーカップルになるケースもあります。
以上の職業に共通しているのは、高い専門性があり、高収入が期待できるという点です。また、社会的に尊敬されやすい職業で、影響力が持ちやすい職業でもある、という共通点もあります。
パワーカップルの子育て事情。いわゆる”子なし”DINKSが多い、は嘘?
パワーカップルというと、DINKS(夫婦共働きで子供はいない)の印象が強いかもしれません。
ですが、現代日本のパワーカップルの62.5%は、子どものいる世帯です。夫婦のみ、つまりDINKSの割合は35%であり、少数派なのです。
子育ての傾向
パワーカップルはキャリアを追求する一方で、子育てにも励んでいるケースが多いのです。しかし、キャリアと子育てとの両立には、相応の工夫が必要になってきます。
保育サービスを利用する
パワーカップルはふたりとも働いており、重要な仕事をこなしています。そのため、子どもにつきっきりになることはできません。
お金に余裕があるので、外注サービスを使いやすい、というのはパワーカップルの子育ての利点だと言えるでしょう。
工夫して時間を捻出する
パワーカップルはお互いに多忙ですから、子どもとの時間を捻出するためには工夫が必要です。時には、仕事を犠牲にしなければならない場合もあるでしょう。
教育への投資は惜しまない
パワーカップルは自身も高度な教育を受けているケースが多く、自分たちの子どもにも同じか、それ以上の教育を受けさせたいと考えがちです。
インターナショナルスクールに入れて幼少期から英語に親しませたり、海外留学をさせたり、教育レベルの高い私立に入れたりするケースも多いでしょう。
パワーカップルは今後増えていく。貧困はどうなる?
10年で二倍に増えたパワーカップルですが、今後も増えていくことが予測されます。
一つには、男性が結婚相手の女性の年収を気にする割合が年々高くなっていることが挙げられます。共働きが当たり前になりつつある現在において、性別関わらず相手の年収を気にするのは当然の流れと言えるでしょう。
また、働き方改革や女性の社会進出がさらに進むことで、女性がキャリアをより築きやすい環境になる可能性もあります。そうなれば、高い収入を得られる女性が増えていき、必然的にパワーカップルは増えていくでしょう。
夫婦それぞれが高い収入を得て、豊かな家庭を築けることは素晴らしいことです。一方、日本経済全体が低迷していることも忘れてはならないでしょう。同類婚が増えることで、パワーカップルが増えても、貧しい世帯は貧しいままです。
また、男女の賃金格差はまだまだ大きく、高い収入を得られる女性はごく一部だということも忘れてはいけません。シングルマザーのふたりに一人は貧困ライン以下の収入しか得られておらず、苦しい生活を余儀なくされています。
パワーカップルが増える未来は、経済格差がより顕著になる未来かもしれません。日本の貧困率は15.4%であり、他の先進国と比べると高い数値をマークしていることも、忘れてはならないでしょう。
参考資料
ニッセイ基礎研究所 パワーカップル世帯の動向
https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=78287?pno=1&site=nli
厚生労働省 国民生活基礎調査
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/20-21.html
家計調査 / 家計収支編 二人以上の世帯 詳細結果表, 総務省
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00200561&tstat=000000330001&cycle=7&year=20230&month=0&tclass1=000000330001&tclass2=000000330004&tclass3=000000330005&stat_infid=000040140554&result_back=1&tclass4val=0