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最近、リスキリングという言葉がメディアに登場することがよくあります。政府も、国民のリスキリングを推奨しており、リスキリングに取り組む企業や従業員に補助金を出す制度も始まっています。

しかし、「リスキリングは自分には関係ない」「いまさら新しいことを学んでも遅いのではないか」「そもそもリスキリングがなにかよくわかっていない」という方もいらっしゃるでしょう。

今回は、そういった方向けに、リスキリングとはなにか、どういったリスキリングがお勧めかについて簡単に解説していきます。

そろそろ新しいことを学びたい、という方は本記事を参考にしてみてください。

リスキリングとは? リカレント教育、生涯学習との違いとは?

リスキリング(Riskilling)とは、広義には、仕事に生かせる能力の再開発、再教育を指します。狭義には、技術の進歩や社会の変化に対応するための知識や技術を学び直すことを指します。

たとえば、AIが進歩した社会の変化に対応するために、AIの使い方について学ぶ、といったことがリスキリングになります。

リスキリングとリカレント教育との違い。リスキリングは働きながら学ぶ

大人になってから学び直す、という点でいうと、リカレント教育や生涯学習と何が違うの? と疑問に思われる方もいるでしょう。

リカレント教育とリスキリングは、社会に出てから学び直しをする、という点では同じです。違いは、リカレント教育は、休職などをしていったん仕事から離れて学び直しに専念するニュアンスがありますが、リスキリングのほうは、「働きながら学ぶ」意味あいが強いため、就業しながら学ぶことが大半です。

また余談ですが、日本の政府は現状、リスキリングを「従業員が働きながら学ぶ」と捉えているようです。そのため、リスキリングのためにスクールに通う際、補助金が出るのは、企業に雇用されて、雇用保険を払っている(または直近で払っていた)人のみを対象にしています。そのため、フリーランサーや個人事業主は、リスキリングの補助金を受け取ることはできません。

リスキリングと生涯学習の違い。生涯学習はお金にならない趣味も含む

生涯学習とは、生涯にわたって行う学びのことです。リスキリングと生涯学習は、学びの範囲において違いがあります。たとえば、老後に油絵やテニスを習い始める、ボランティア活動に従事する……そういったことは生涯学習ではありますが、リスキリングではありません。

生涯学習とは、キャリアに直結するものだけではなく、人間が生涯に行うあらゆる学習を指しています。そのため、文化芸術活動やスポーツなどの趣味も生涯学習とされるのです。

リスキリングが注目される背景とは? 国、企業、個人の思惑は?

国主導によるリスキリング。スムーズな労働力の移動により、国際競争力UP

経済産業省が発表した「DXレポート」ではIT人材不足が加速することで、業務効率や国際競争力の低下が示唆されていました。こういった流れを受け、2022年、岸田政権はリスキリング支援に注力する、と表明したのです。岸田政権が支援しているのは、前述したように、「従業員」のリスキリングです。目的は、失われる雇用から、新しく生まれる雇用に、スムーズに労働力を移動させ、業務効率や国際競争力を向上させることにあります。

企業は必要な人材を新しい人材を雇用せずに確保したい

企業は、デジタルトランスフォーメーション(DX)やAIなどへの対応を迫られるなか、必要な最新の知識を備えた人材を確保したいと考えます。新たに雇用するよりも、現在雇用している従業員にリスキリングのための教育を受けさせるほうがコスト面で合理的だと考える企業は、従業員にリスキリングを促します。

人生100年時代。終身雇用の崩壊……個人のリスキリングの思惑は様々

個人がリスキリングを主体的に取り組もうとする動機はさまざまですが、その背景には、「長寿化と終身雇用の崩壊」が挙げられるでしょう。近年、終身雇用の概念は廃れ、転職は珍しくなくなり、非正規雇用で働く人々は増加しています。

寿命は延びているけれど、一つの会社に入社すれば生涯安泰とはいかず、必要とされるスキルも刻一刻と変わっていく……という現代において、「生涯ひとつのスキルだけを使い、ひとつだけの仕事をする」人は少なくなってきているのです。

そういった時代背景があるため、社会に出てから新しいスキルを学んでキャリアアップ、またはキャリアチェンジしたいと考える人が増えるのは、ごく自然な流れでしょう。

個人がリスキリングをする際、単純に知的好奇心で行うこともあるはずです。一方、自分の仕事が時代の流れによってなくなるのではないかという不安やリスクヘッジの観点からリスキリングに取り組む人もいます。


女性のリスキリングの例とは? インストラクター→芸人→研究者

たとえば、芸人として40代でブレイクした「エド・はるみ」さんは、41歳でお笑い養成所に入りました。それまでは、俳優の仕事や、マナー講師、コンピューターインストラクターの仕事をしていたそうです。41歳でお笑い養成所でリスキリングを行い、44歳で大ブレイク。流行語大賞などを受賞しました。

しかし、エドさんのリスキリングはこれで終わりません。50歳で慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科の修士課程に入学、その後、研究者としての道を歩んでいます。エドさんの開発したカードゲームは、グッドデザイン賞を受賞。その後、筑波大学大学院の博士課程に合格し、59歳の現在は研究にいそしむ日々です。

エドさんのように、ひとつの仕事で成功したあと、頻繁にフィールドを変える「リスキリングの達人」のような人は、ときどき存在しています。一度リスキリングをしてしまえば、興味のある分野を積極的に学びにいく姿勢が身につき、キャリアの幅を広げやすいのかもしれません。


女性におすすめの「収入につながりやすいリスキリング」2選

収入アップを目指してリスキリングを検討している女性も多いでしょう。エドさんのような大幅なキャリアチェンジを何度も繰り返すのはハードルが高くても、まずはリスキリングをして、副業から始めて見るという手もあります。

次に、女性におすすめの「収入につながりやすいリスキリング」を2つご紹介していきます。

女性におすすめのリスキリング1 ウェブマーケティング

近年、テレビや新聞などのマスメディアで出される広告の量は右肩下がりになり、ネット上で出される広告の量が増加してきています。この流れを受けて、ウェブ広告やSEO、ウェブマーケティング全般に知識がある人材が求められるようになってきました。ウェブマーケティングは、しっかりと学ぶことで転職の際にも有利になることに加えて、副業としても始められるという利点があります。子育てをしながらでも学び、仕事を受注できる可能性の充分ある分野です。

また、クリエイティブ系が得意な方は、ウェブマーケではなく、ウェブデザインを学ぶというのも一案です。

女性におすすめのリスキリング2 プログラミング

プログラミングも、ウェブマーケティングと同じく、転職に有利になるスキルであると同時に、自宅で独立して仕事を開拓できる仕事です。そういった意味で女性におすすめのリスキリングなのですが、習得するまでに時間がかかるというデメリットはあります。

簡単に習得できるスキルはそれだけ競合が多くなり、収入も低くなりがちですから、時間をかけてじっくり学んで、希少な人材になることを目指すのもいいでしょう。


さいごに。「女性におすすめ」のリスキリングを始める際の注意点とは?

リスキリングを始める前に、目的を明確にしましょう。自分の知的好奇心を満たしたいという理由であれば、リスキリングをした後の収入のことはそこまで気にしないでいいでしょう。

ですが、もしリスキリングの目的が収入アップや副業などであれば、「実際にリスキリングをすることで、収入アップにつながるのか、どれくらいの収入が得られるか(転職を希望している場合は、転職がしやすいか)」をしっかり確認しておく必要があります。

「女性におすすめ」とされるキャリアを選択するときに気を付けなければならないのは、「給与が安い」可能性があるという点です。保育士などがその典型です。保育士は素晴らしい仕事ですが、給与が安い割に責任が重くハードです。本来望ましいかたちではありませんが、「女性におすすめ」は、「家計を担うことができないほど賃金が安い仕事」の単なる言い換えである場合があるので注意してください。

リスキリングを始めるためには、お金と時間が必要です。自分の大切なお金と時間を投資するのですから、リターンをしっかり見極める必要があるでしょう。

また、「収入につながりそうだから」という理由だけで学ぶ分野を決めてしまうのは危険です。興味がない分野の勉強ほど苦痛なものはありません。まずは興味があり、楽しそうだと思える分野の勉強を始めてみましょう。「何に興味があるのかわからない」という場合は、ひとまず「リスキリングを謳っているスクールの体験授業を片っ端から受けてみる」というのもお勧めです。