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桑山の超私的おすすめ!エクササイズに役立つ本 #3 『もっと自由に楽しく生きるための心理学』

Date
2023/05/27
Writer
Wellfy
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おすすめ本のご紹介!

昨今の健康志向ブームで、健康や運動に関する書籍が本当に増えました。健康で快適な暮らしを送るための情報が手に入りやすくなった反面、どれを読んだらいいか迷ってしまいますよね。そこでこのコラムでは、健康・運動指導のプロ目線から、皆さんにぜひおすすめしたい本をピックアップ! 今回紹介するのは、次の書籍です。

『アドラーおばあちゃん』
[著]谷口のりこ、土居一江
リンダパブリッシャーズ 2016年

アドバイザー:桑山 純一

健康運動指導士、パーソナルトレーナー。

●略歴
「日本を元気にしたい!」…その思い一つで、新宿にそびえる某お役所を飛び出してきた、フィットネス界の異端児。
やせたい、体を鍛えたい、健康に暮らしたい、あなたのそんな「変わりたい」を一生懸命お手伝いします。

●所持資格等
・東京大学教育学部身体教育学コース卒
・健康運動指導士

もっと自由に楽しく生きるための「希望」の心理学~アドラー心理学

日々の人間関係に悩んでいる人、自分に自信が持てない人、自己嫌悪に陥っている人、さらには部下の育成や子育てに悩んでいる人。世の多くの人は、何かしら悩みを抱えストレスや生きづらさを感じています。そのような人にぜひ知ってもらいたいのが「アドラー心理学」です。

アドラー心理学とは、オーストリア出身の医師アルフレッド・アドラー(1870~1937)が体系化した心理学です。アドラーは、フロイト・ユングと並び称される心理学の三大巨頭の一人で、日本では、2013年にアドラー心理学をテーマにした書籍「嫌われる勇気」がベストセラーとなり、多くの人に知られるようになりました。アドラー心理学の根底にある考え方は、アドラー自身の次のような言葉に表れています。

「人間は自分自身の人生を描く画家である。あなたを作ったのはあなた。これからの人生を決めるのもあなた。」

「できないことはない。人はどんなことでもできる。」

「人生が困難なのではない。あなたが人生を困難にしているのだ。人生は、極めてシンプルである。」

人はよく「子どもの頃、○○な出来事があって、それがトラウマになっちゃって○○できない」と言ってしまいます。これはつまり自分の行動の原因を過去の出来事に求めているのですが、アドラーはこれをキッパリと否定します。同じ出来事でもそれをポジティブに解釈するかネガティブに解釈するかは自分次第。同じ状況でどのような行動を選択するのかも自分次第。これまでの解釈や行動もすべては自分自身が何らかの目的を達するためにとったもの。ゆえに、幼少期に形成された価値観や性格だって、自分が変えようと思えばいつだって変えることができる。アドラーはそう考えるのです。

「相手は変えられないが、自分は変えられる」

「過去は変えられないが、現在・未来は変えられる」

「変わる勇気があれば、人はいつだって変われる」

よくありがちな「なるほどね~。だから私はこうなんだぁ。」とこれまでの自分を理解した気になっておしまいではなく、これからの人生をより良いものにしていく「希望」の心理学。それがアドラー心理学なのです。

「物語」として面白い!

心理学の本というと、専門用語が並んでいたり難しいことが書かれていたりしてハードルが高そうに感じるかもしれませんが、そういった心配は一切無用です。というのも、この本は、学術書や教科書、あるいはレジメのような体裁ではなく、物語なのです。

物語の主人公は、出版業界で働く32歳の女性・静香。静香と同居するおばあちゃんはアドラー心理学の元教授で、物語は静香の会社であった出来事や人間模様に関する二人の会話を中心に展開していきます。会話の話題は、次のような、きっと誰もが一度は思い悩んだことのあるものばかりです。

 

「第1章 思ったこと、言っていいの?」
「第2章 ハッキリと断れない!」
「第3章 「苦手な人」「嫌いな人」がいる……。」
「第4章 怒る上司を何とかして!」
「第5章 子どもだって、大人だって仲間になりたい!」
「第6章 ステキな彼と出会いたい!」
「第7章 やりたいこと、あります!」
「エピローグ ~ありのままの自分で、自由に生きていく~」

軽妙な語り口で、思わずクスッと笑ってしまったり「あるある」とうなずいてしまったりで話に引き込まれていき、あっという間に読み終えてしまいます。

アドラー心理学の「使える」エッセンスを学べる

軽~く楽しみながら読み進められるストーリーの随所に、アドラー心理学の考え方がちりばめられています。それも説明的な文章は一切なしで、静香とおばあちゃんの日常会話的なやり取りの中で語られているので、すんなりと頭に入ってきます。さらにこの本が素晴らしいのは、その考え方を活かすと静香や会社の人々の発言・態度が具体的にどう変わるのか、まで描かれている点です。アドラー心理学に関する知識を得るだけでなく、日常生活での実践方法まで学べるのです。

著者自身が述べているとおり、この本が「アドラー心理学の理論を紹介することではなく、一つでもいいからその極意を体得して、『使える』ように」なることを目的としている点が、他のアドラー本と一線を画す特長です。この本を読むと、物語で描かれた静香たちの成功体験を追体験することができ、何となく「自分もできる!」という気になります。この「できる感」は行動変容に重要な要素で、人は「できる感」が高いほど新しいことにチャレンジしやすくなるとされています。アドラー心理学ではチャレンジする人を勇気づけることが大切とされており、この本はその精神を見事に体現しています。

快適な暮らし、豊かな人生を送っていくためには、心と体どちらの健康も欠かせません。アドラー心理学は、あなたの心の健康にきっと役立つと思いますので、おすすめします!

(なお、本書は出版社倒産により絶版となっていますが、Amazonなどで中古本を購入することができます。)

いかがでしたか?
次回はシリーズ最終回。個人的な思い入れ込みの一冊を紹介する予定です。お楽しみに!

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