電車で「おじさんが臭い」と感じるのはなぜ?原因・対策・周囲ができること

満員電車、扉が閉まった瞬間にふわっと漂う独特のニオイ。「うっ」と息を止めて、次の駅までひたすら耐える。そんな経験、ありませんか?

 SNSで「電車 おじさん 臭い」「通勤 ニオイ 限界」といった検索ワードが毎年夏に急増するのを見ると、悩んでいるのは決してあなただけではないことがわかるでしょう。

会社に着く前にすでにHPを削られている、というのは大げさではないこと思います。
とはいえ、この記事はおじさんという存在を一括りに「臭い認定」するためのものではありません。実際には、中高年男性の中にも全く臭くない人もたくさんいますし、逆に若い世代でも汗や生活習慣次第で臭くなってしまっている人もいます。

 大事なのは「なぜ中高年男性はニオイの悩みを抱えやすい傾向があるのか」を正しく知ることです。また、悩んでいる側・悩まされている側の双方が気持ちよく電車に乗れる工夫を探ることも大切でしょう。

 今日は、電車内のニオイに悩まされている人、あるいは、自分が臭いのではないかと不安な人向けに、各々ができる対策についてご紹介します。

この記事を書いた人

今来今

切れ味鋭くリアルを斬るフリーライター。恋愛や仕事、社会のモヤモヤをアラサー女子の先輩目線でズバッと斬り込み、読む人に新しい風を届けます。

目次

「おじさん臭」の正体は一つじゃない

「加齢臭」という言葉が一人歩きしがちですが、実はあの独特なニオイは単一の原因ではなく、いくつもの要素が重なって生まれる”合わせ技”です。

加齢による皮脂の変化(いわゆる加齢臭)

資生堂の研究チームが2001年に発表した研究では、40代以降の男性の皮脂に「ノネナール」という脂肪酸の酸化物質が増えることが確認されています。

これは皮脂に含まれるパルミトオレイン酸という脂肪酸が、加齢に伴う抗酸化力の低下と結びついて酸化することで発生するもので、ロウソクや古い油のような、独特の重みのあるニオイの正体とされています。

つまり「不潔だから」ではなく、加齢という体の変化がベースにある生理現象なのです。

汗と皮脂の質の変化

中高年になると汗腺の働きが変わり、汗自体のベタつきや皮脂量が変化しやすくなります。若い頃と同じ量の汗でも、成分バランスが変わることでニオイが強く感じられることがあります。

口臭

唾液の分泌量は加齢とともに減少しやすく、口の中の自浄作用が弱まることで口臭が強まりやすくなります。また歯周病や胃腸の不調、逆流性食道炎などが背景にある口臭も少なくありません。

これは「マナーの問題」というより「体からのサイン」であるケースも多いのです。 

衣類のニオイ

汗をかいたスーツやシャツを毎日完全に乾かしきれず、雑菌が繊維の奥に残ることで「生乾き臭」が蓄積していくことがあります。これは洗濯の頻度や乾かし方の問題であることが多く、本人が一番気づきにくいポイントでもあります。

喫煙

タバコのヤニ成分は髪や衣類に付着しやすく、加齢臭や汗のニオイと混ざり合うことで、より複雑で強いニオイとして知覚されやすくなります。 

生活習慣・体調

睡眠不足、ストレス、アルコールの多飲、脂っこい食事、運動不足による代謝の低下、これらはすべて汗や皮脂の質に影響します。さらに、糖尿病や肝機能・腎機能の低下など内臓の不調がニオイとして現れることもあり、単なる「不潔」で片付けられない場合もあるのです。

こうして並べてみると、「おじさんのニオイ」は加齢臭・汗・口臭・衣類・生活習慣・喫煙・体調という、少なくとも6〜7種類の要因が絡み合って生まれる、意外と奥深い現象だとわかるでしょう。

なぜ私たちは「おじさん=臭い」と感じやすいのか

ここで少し心理学の視点を挟んでみます。私たちが電車で「またこの人か、臭い」と感じるとき、実はニオイそのものだけでなく、脳の”思い込み”も働いています。

嗅覚の情報は脳の中でも扁桃体という、感情や記憶と直結した部位にダイレクトに届く数少ない感覚だと言われています。そのため一度「不快」という感情とニオイが結びつくと、似たような属性の相手(たとえば同世代・同じような服装の男性)に対しても無意識に警戒心が働きやすくなります。

心理学ではこれを確証バイアスと呼び、「おじさんは臭いものだ」という先入観があると、そうでない中高年男性よりも”それらしき人”のニオイにばかり意識が向いてしまう、という現象が起こりえます。
また、嫌悪感情の研究で知られる心理学者ポール・ロジン氏らの研究では、嫌悪は本来「体に有害なものを避ける」ために進化してきた感情であり、そのぶん一度形成されると強く持続的になりやすいことが指摘されています。

満員電車という「逃げ場がない」状況は、この嫌悪感情を増幅させる典型的な環境とも言えるでしょう。

「この人は本当にニオイ対策不足なのか、それとも自分の思い込みも混ざっているのか」と少し立ち止まって考える余裕も必要かもしれません。

中高年男性ができるニオイ対策とは?

ニオイに悩まされているのは若者や女性だけではありません。当の中高年男性たちも「臭くないかな」と不安になっているケースはあります。

ここでは、中高年男性ができるニオイの対策をご紹介します。

朝晩のシャワー・こまめな着替え

特に加齢臭のもととなる皮脂は皮膚の表面に蓄積しやすため、こまめに洗い流すことが最も基本的な対策です。

デオドラント製品の活用

近年は男性向けの制汗剤・ボディシートの種類が非常に増えており、通勤前後の一手間で体感が大きく変わります。

衣類のケア

部屋干しではなく完全乾燥を意識する、あるいは制菌・防臭加工のシャツを選ぶだけでも生乾き臭はかなり軽減できます。

食生活・生活習慣の見直し

脂質の多い食事や飲酒を控えめにし、睡眠をしっかりとることは、体臭対策としても健康対策としても効果があります。

禁煙、または喫煙後のケア

うがいや歯磨き、衣類の消臭スプレーなど、簡単なひと手間で印象は変わります。

気になる場合は専門外来へ

近年は「体臭外来」「多汗症外来」など専門的に相談できる医療機関も増えています。体調由来のニオイの場合は、対策グッズより先に治療が近道になることもあります。

ニオイに悩んでいる側ができること

一方で、ニオイに困っている側にもできる工夫はいくつかあります。

移動して物理的に距離を取る

車両やドア付近の位置を変える、時間帯をずらすなど物理的な距離を取る

マスクをつける

マスクや、香りの強すぎない自分用のハンドクリーム・アロマシートを持ち歩く

社内の相談窓口を利用する

直接本人に指摘するのはリスクが高いため、どうしても改善してほしい場合は、社内の相談窓口や匿名のフィードバック制度を利用するのも一つの方法です。

たかがニオイのことで相談していいのかな、と躊躇する必要はありません。「スメルハラスメント」という言葉が定着してきたように、企業によってはニオイに関する研修やガイドラインを設けているところもあり、社会全体としてこの問題への理解は広がりつつあります。

迷っている場合は、ひとまず相談してみるのも一つの手です。

車内でお互いが余計なストレスを感じないための心持ち

「おじさんが臭い」という悩みの奥には、加齢という自然な体の変化、生活習慣、体調、そして私たちの脳の嗅覚と感情の結びつきという、いくつもの要素が重なっています。

仕事で疲れている時に、電車で隣に座った人から臭いニオイがした場合、「しっかりニオイ対策してくれたらいいのに」とイライラする気持ちは理解できます。当然、自覚がある方は、何らかの対処法を取るべきでしょう。

しかし、世の中には、加齢や病気によって、ニオイ対策をしようと思ってもままならない人もいます。また、家族がいない人などは、ニオイを指摘してくれる人がおらず、全く気が付かずに生活しているというケースもあります。不可抗力の場合もありますから、将来、自分がそうなってしまう可能性もゼロではありません。

環境的にニオイ対策が難しい方もいるし、他人事ではない、という想像力を持っていた方が、イライラしないで済むでしょう。

夏の通勤電車はまだしばらく続きます。ニオイ対策としてできることの限界を知り、想像力を働かせて他者に優しくなることで、このストレス社会を乗り切っていきましょう。

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