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「子供部屋おじさん」は気持ち悪いと思うのはナゼ?「こどおじ」の実態とは

Date
2024/05/11
Writer
今来今
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子供部屋おじさんとは、2014年にインターネット掲示板2ちゃんねる(現5ちゃんねる)で生まれたインターネットスラングであり、中年になっても実家の子供部屋に住んでいるおじさんを揶揄する言葉です。

子供部屋おじさんは、気持ち悪いとか、自立心がない、いつまでも大人になりきれない、といった負のイメージが強いですが、なぜ、実家に住んでいるだけでそのようなマイナスイメージを持たれるのでしょうか? 大人になっても子供部屋に住み続けることは、恥ずべきことなのでしょうか?

今回は、子供部屋に住み続ける大人が、なぜ奇異の目で見られるのか、子供部屋おじさんは本当に、自立心がない、大人になりきれない人なのか、について解説していきます。

なぜ、子供部屋おじさんは「気持ち悪い」と言われるのか

まず、なぜ子供部屋おじさんは揶揄の対象になるのか、について整理しておきましょう。

子供部屋おじさんが気持ち悪いと言われる理由1 自立すべきなのに、していない

子供部屋おじさんが気持ち悪いと言われる最大の理由は、「大人なのに、いつまでも子供のような状態であり、自立してない」とみなされるからです。
大人になったら親元から離れて暮らすべきだ、という社会規範に背いているため、「気持ち悪い」と揶揄されているのです。

子供部屋おじさんが気持ち悪いと言われる理由2 結婚するべきなのに、していない

40代、50代になっても、結婚せずに親と暮らしていることに対して、気持ち悪さを感じる人もいます。近年は減ってきてはいますが、「なんで結婚しないの?」という問いかけをする人は、未だに存在しているのです。結婚している人に対して、「なんで結婚してるの?」とか「早く離婚したほうがいいよ」としつこく言う人はいないのですが、「早く結婚したほうがいいよ」「なんでしないの?」という人は、存在しているのです。

「所帯を持つべきなのに、持っていない」「結婚してこそ一人前」「子育てをしてこそ、人は人間的に成長できる」……そう考える人から見ると、いつまでも両親と一緒に暮らし、自分の家族を作ろうとしない人は、「子供っぽい」人、または、得体が知れない「気持ち悪い人」に見えるのでしょう。

たとえば、子供部屋おじさんが結婚して、妻を実家に迎え入れ、二世帯で生活を開始した場合、どうなるでしょうか。その場合、子供部屋おじさんは子供部屋おじさんとは呼ばれず、単に自分の実家で妻と同居している「一人前の男性」とみなされます。この男性が、自分で家事や育児に従事せず、妻や母親にすべてしてもらっているとしても、「自立していない」とはみなされないのです。

なぜ、既婚者の男性は、家事や育児を、妻や母に任せきりであっても、「自立していない」「子供のままだ」と揶揄されないのに、独身だと馬鹿にされるのでしょうか?

それは、シングリズムが存在しているからです。シングリズムとは、独身差別のことです。「独身が未熟で、既婚が成熟」「結婚していない人は、結婚できないかわいそうな人」「独身を謳歌して結婚しないなんてワガママ」、こういった考えがシングリズムです。

私たちの生きている社会は、結婚を良きこととして推奨しているため、結婚しない人を冷遇し、結婚をしたいと思わせる圧力を内包しています。それゆえに、結婚するべきなのに、いつまでも独身で、しかも実家から出ないという状態の「子供部屋おじさん」が揶揄の対象となるでしょう。

子供部屋おじさんが気持ち悪いと言われる理由3 男は働いて家族を養うべきなのに、していない

大人になっても子供部屋に住んでいる大人は、男性だけではありません。女性だって、大人になってからも子供部屋に住み続ける人はいます。とくに、日本は男女の賃金差が激しい国ですから、経済的な理由から同居を与儀なくされる女性は少なくないのです。それにも関わらず、子供部屋おばさんという名称より先に、子供部屋おじさんという名称が生み出された理由は、「男のくせに」という価値観が起因しています

現代社会では、「男のくせに」「女のくせに」という枕詞を付けてステレオタイプを押し付けるのは、ジェンダーハラスメントと言われ、好ましくないとされています。たとえば、「男のくせにお菓子作りがすきなのかよ!」「女のくせに、態度がでかい」といった言葉は、差別的であることは、みな理解しているでしょう。

性別によるステレオタイプを押し付けてはいけない、という人権意識が広がりつつある現代ですが内心では、多くの人が未だに性別役割規範に囚われています。子供部屋おじさんが、子供部屋おばさんよりも非難の対象になりがちなのは、「男性なら、結婚して家族のために稼ぐべき」という価値観が、未だに強く残っているからなのです。
昭和の時代には、「男性は結婚して一人前」と当然のように言われていました。結婚が、出世のために必要だった会社も少なくありません。男性は結婚したら、妻子を養わなければならないから、という名目で賃金が上がりました。逆に、女性は、結婚したら男に養ってもらえるのだから、と賃金が下がったのです。こういった時代の残り香が漂う令和のいま、「男性は結婚して家族のために働くのが正しい姿」ゆえに、「男のくせに」大人になっても、家族に甘えているなんて! と非難される、というわけです。

子供部屋おじさんが気持ち悪いと言われる理由 まとめ

子供部屋おじさんが気持ち悪いと揶揄される原因は、「大人になったら、家族と離れて暮らすべき」「結婚するべき」「家族のために働いて一人前」という社会規範に背いた存在だからです。人間は社会的存在ですから、社会の和を乱す存在を差別し、笑い、社会規範に押し込めようとする傾向があります。「子供部屋おじさん」を嘲笑する人は、「大人になったら、家族と離れて暮らすべき」「結婚するべき」「家族のために働いて一人前」という規範を信じ、維持しようとしている人たちなのだと言えるでしょう。

子供部屋おじさんは気持ち悪い?勝ち組?レッテルを貼るのは危険

ところで、本当に子供部屋おじさんは気持ち悪い存在なのでしょうか? それとも、大人になっても家賃を払わなくてもいいラッキーな勝ち組なのでしょうか? 個別の事例を見ていきましょう。

子供部屋おじさんケース1 資格試験のために子供部屋に住む

Aさんは、もと証券会社に勤めていた証券マンでした。しかし、昔からの夢だった弁護士になるために会社を退職。実家の子供部屋に住んで法科大学院に通い始めました。Aさんは司法試験に4回挑戦し、すべて不合格。ラストチャンスの5回目でやっと合格を勝ち取りました。Aさんは法律事務所に就職する42歳までの間、子供部屋おじさんでした。弁護士になってから数年後、仕事が軌道にのったAさんはシングルマザーの母親に、毎月10万の仕送りをしています。

子供部屋おじさんケース2 家を出る理由がないため子供部屋に住む

Bさんは、埼玉に実家があり、東京都内の会社に片道1時間かけて通勤をしています。都内は家賃も高いし、ぎりぎり通勤範囲なので、合理的に考えて、一人暮らしより実家のほうがいいと考えています。仕事は忙しいので、実家の母が掃除や洗濯、料理などをしています。毎月3万円の家賃を母に渡しているだけなので、同期よりも貯金は多いほうです。両親との関係も良好で、母親は息子がずっと家にいてくれることを嬉しく感じています。

いかがでしょうか? 上記のふたつのケースを見た際、「子供部屋おじさんキモい」と思うでしょうか? もしかしたら、Bさんのケースでは、「いい年をして母親にすべてをしてもらってるのがキツい」と思われる方もいるかもしれません。大切なのは、「子供部屋おじさんは一枚岩ではない」と理解することです。

大人になっても子供部屋に住み続ける理由は、人によって異なります。また、一人暮らしをしていた人でも、なにかのきっかけで、子供部屋おじさん・おばさんになる可能性はあるのです。

たとえば、激務で体調を壊して一人暮らしの家を引き払うことになるかもしれませんし、離婚に際し一時的に実家に戻ることもあるかもしれません。だれにだって、子供部屋おじさん・おばさんになる可能性はありますから、「子供部屋おじさん・おばさん」=「自立してない」「甘えている」とレッテルを貼ると、将来の自分を苦しめることになるでしょう。

「子供部屋に住んでいること」は、その人の属性のひとつにすぎず、その内実は多種多様である、と認識しておく必要がありそうです。

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