昨今、「おじさん」という言葉は、単に中年以降の男性を指すだけではなく、時にネガティブなニュアンスを伴う場合も少なくありません。
無意識に発する一言や、時代遅れの態度が原因となり、周囲から反感を買うことが「おじさんが嫌われる理由」の一つとして挙げられます。しかし、これらが必ずしも本人の悪意によるものではないことも多いのです。
では、具体的におじさんが嫌われる理由とは何でしょうか?
この記事では、おじさんが嫌われる理由や嫌われるおじさんの特徴・共通点を掘り下げつつ、周囲から信頼される素敵なおじさんになるためのヒントもお届けします。
もしかして自分も…
と心当たりがある男性の方も、ぜひチェックしてみてください。
おじさんが嫌われる理由。嫌われるおじさんの特徴・共通点
マンスプレイニング。自分の方が知識豊富だと思い込み、偉そうに説明する
嫌われるおじさんに共通して見られる特徴の一つが、「自分の方が知識や経験が豊富で、教える立場である」という無意識の思い込みです。
そういった思い込みをしている男性は、マンスプレイニング(マンスプ)をしてしまいがちな傾向にあります。
マンスプレイニングとは、男性を意味するマン(man)と、説明を意味するエクスプレイン(explain)を掛け合わせた造語であり、主に男性が女性に対し、相手の知識や経験を軽視して一方的に上から目線で説明する行為を指します。
マンスプレイニングという言葉を世の中に広めた著作家のレベッカ・ソルニットは、パーティーの席で男性から「その件だと、最近読んだ面白い文献があってね」と説明されたと言います。
その文献とは、レベッカ・ソルニット自身が書いたものだったのですが、その男性は、まさか目の前の女性が自分よりも知識があるとは想像もしていなかったのです。
似たようなことを体験したことがある女性は少なくないでしょう。
特に若い女性にとって、「教えてあげる」という上から目線の態度は、おじさんが嫌われる理由の一つになっています。若い年代の女性は、年配の男性から、知識や経験を軽視され、「教えてあげる」と言われることが多いため、マンスプレイニングおじさんに嫌気がさしていることが多いのです。
その結果、若い世代の間では「おじさん嫌い」の女子が増えているのも無理はありません。
マンスプレイニングは若くして行うこともありますが、年を重ねるごとに自分の知識や経験に対する自信が増すため、マンスプレイニングしやすくなる傾向があります。これがさらに「おじさんが嫌われる理由」に拍車をかけているのです。
「おじさん=偉そうに教えようとしてくる人」というネガティブなステレオタイプを解消するためには、特に年配になり、立場が高くなるほど謙虚さを心がけることが大切です。この謙虚な姿勢が、おじさん嫌いのイメージを払拭する一歩になるでしょう。
マンスプレッディング。他者への配慮が欠けた自分勝手な行動
公共の場所、特に電車などで足を大きく広げて座る行動は、中年男性にしばしば見られる行動です。
男性が公共の場所において大股開きで座る行為は、男性を表すマン(man)と、広げることを表すスプレッド(spread)を掛け合わせた造語「マンスプレッディング」と名付けられています。マンスプレッディングは女性が行うことはほぼ皆無であり、大抵は中年以降のいわゆる”オジサン”が行います。
こういった、周囲のことを顧みず、自分勝手に振る舞う行為をする男性が多いことが、おじさんが嫌われる理由のひとつなのでしょう。
おじさん構文。歳の差、権力格差がある若い女性を恋愛対象として見る
一時期流行った絵文字がたくさん散りばめられたメッセージは、「おじさん構文」と呼ばれました。のちに「おばさん構文」という言葉も生まれましたが、この二つの構文には大きな違いがあります。
それは、「おばさん構文」がおばさんたちの間で交わされるコミュニケーションである一方、「おじさん構文」は歳の差のある若い女性に、下心丸出しでデートしようとしている文体である、という点です。
そもそも「おじさん構文」は、いわゆる「おぢ」と呼ばれるおじさんが若い女性と執拗にコミュニケーションを取ろう等する様を、女性が晒したことを発端に生まれました。年齢の離れたおじさんから恋愛対象あるいは性的対象にされる若い女性がたくさんいたことから、この構文は「あるある」として社会で流行したわけです。
もちろん、世の中の年の差カップルに罪はありませんし、未成年相手でない限りにおいて、恋愛は自由でしょう。
しかし、大抵の場合、年上の男性とはるかに年下の女性には、職場や社会における権力格差が存在します。
例えば、先日テレビを見ていたところ、アラフィフのベテラン男性芸人が、20代前半の若いタレントに「お父さんみたい」だと言わないでほしい、と述べている場面がありました。なぜなら、「可能性がないように思えるから」と言う理由からです。
つまり、ベテラン男性芸人は30歳近く年の差のある、そして、業界の後輩であるタレントに、恋愛や性行為がワンチャンありえると考えているわけです。若いタレントは「何の可能性ですか〜!」と笑って誤魔化していたのですが、彼女が内心おじさん嫌い、と思っていても、おじさん嫌いと口にすることはできないでしょう。なぜなら、二人の間には、職場や社会における権力格差があるのですから。
こういった権力格差に無自覚で、若い女性がキッパリと拒絶できないことに気づけない中年男性をたくさん見てきた女性たちが、
「厚かましいおじさんキモい」「オジサン世代は苦手…」
となるのは致し方ないことでしょう。
セルフケアをしない。他人に不快感を与える。女性にケアを求める
もう一つの嫌われるおじさんの特徴としては、セルフケアをしていない、ことが挙げられます。
また、精神的に自分をケアすることができず、他人、特に女性にケアを求める中年男性も少なくありません。キャバクラなどが日本で長らく流行し、ひとつの文化として定着している理由の一つは、「若い女性にケアを求めている」からでしょう。
女性の場合、多くは自分で自分の心と向き合ったり、女同士で愚痴を言ったりしてセルフケアや相互ケアを行います。
しかし、一部の男性は、セルフケアや男性同士のケアの方法がわからず、威張り散らして他人にケアを求めたり、お金を払って女性のケアを買ったりします。お金が発生しているなら仕事として割り切れますが、時には、無償でケアされようとする男性も散見されるので厄介です。
中年男性にケアを求められた女性が、「無料のキャバクラじゃない」などとうんざりするケースもあります。セルフケアや、男性同士のケアができない男性は、誰か他の人にケアを担わせようとする傾向があるため、嫌われやすいのでしょう。
こういった事態を避けるためには、男性は自分で自分をケアすること、友達とケアをしあうことを学ぶ必要がありそうです。
嫌われないためにできること。おじさんが嫌われる理由を知る=有害な男性性を認識する
以上に挙げた「嫌われるおじさん」の特徴は、全て有害な男性性(トキシック・マスキュリニティ、Toxic masculinity)が根本原因にあります。
男性に対して社会に期待される固定観念や行動規範の中で、男性自身や他者に対して有害な男性性のことです。
一例としては、「感情を抑圧する」「支配的かつ攻撃的な態度」「競争意識が過度で力を誇示しようとする」「女性蔑視をする」などが挙げられます。
男性は「男の子なんだから泣いたらダメ」と育てられることも多く、感情を抑圧することを求められがちです。それにより、自分をケアしたり、友達と弱音を吐き合ったりすることができず、自らのケアができなくなることも多いのです。
その結果、他者に有料、または無料でケアを求め、おじさん嫌いの結果につながってしまうことも多いのです。
また、支配的であるべき、勝つべき、という意識が強すぎるため、他人に対してマウンティングを行い、知識をひけらかしてマンスプレイニングしてしまうこともあります。自分の力を誇示しようと横暴に振る舞い、マンスプレッディングしてしまうこともあるでしょう。
「男らしく」女性をリードしようとした結果が、女性の力を軽視した女性蔑視の言動に繋がり、おじさん嫌いのケースもあります。
有害な男性性は、他者を傷つけるだけではなく、「男性から、自分の感情を大切にすることやセルフケアの能力を奪う」という意味で男性自身をより深く傷つけるのです。
おじさんが好かれるために、また自分自身を幸せにするためには、自らの有害な男性性に気がつき、セルフケアに力を注ぐ必要があるでしょう。