「お母さんヒス構文」とは?ヒス構文の5つの特徴

「お母さんヒス構文」とは、お笑い芸人ラランドのサーヤさんが初めに使い出した言葉で、母親がヒステリックなトーンで表現するメッセージや行動パターンを指すネットスラングです。

ラジオやYouTubeから火がつき、さまざまな人が自分の母親が使ったヒステリックな言動を「お母さんヒス構文」としてネットに晒すなどして、ブームを巻き起こしました。

お母さんに不合理でヒステリックな言葉をかけられた人は少なくないため、「お母さんヒス構文」は、ネット上で共感やユーモアを交えて共有されるケースが増えてきているのです。

今回は、「お母さんヒス構文」の特徴と、なぜ「お母さんヒス構文」が生まれるのか、その背景について簡単に解説していきます。

目次

お母さんヒス構文の5つの特徴


「お母さんヒス構文」には5つの特徴があります。

「お母さんヒス構文」の特徴1 突然、感情が爆発したように見える

「お母さんヒス構文」の最大の特徴は、感情的でヒステリックであることです。

長い間我慢してきた不満や怒りが一気に爆発したため、周囲の人は「いきなりキレて怖い」と思うわけですが、「お母さんヒス構文」を発している当人は、我慢の末のことなのでしょう。これまで押さえ込んできた怒りや悲しみ、フラストレーションが爆発し、子どもや家族にぶつけてしまうのが「お母さんヒス構文」なのです。

「お母さんヒス構文」が使われる家庭の多くは、母親が家事や育児、子供の教育の責任を一手に引き受けています。母親は感情的になることで、家族が行動を改めることや、自分の働きに感謝することを期待しているのです。

「お母さんヒス構文」の特徴2 自己犠牲をアピール。なんで私だけが!

「お母さんヒス構文」では、母親が自分の時間や楽しみを犠牲にし、家族のために尽くしていることを強調する表現がよく見られます。

母親が自分の努力が家族に無視・当然視・軽視されていると感じることから「お母さんヒス構文」は生まれるのです。

実際、日本では男女の家事育児時間、つまり無償労働時間が極端に母親に偏っているという統計があります。家事や育児、介護などの無償労働に対して、「母親だからするのが当たり前」だとされる風潮もまだ残っています。そういった状況に対し、自分だけが割を食っていると感じる母親も多いのでしょう。

不公平だという感情が爆発すると、「こんなに頑張ってるのに、誰も感謝してくれない」「毎日家事が大変なのに、誰も手伝ってくれない」といった内容を感情的に訴えることになります。

受け取り側の子どもや夫は、母親が家事や育児をすることに対する大変さや、そのために何を犠牲にしてきたのかが実感として湧かないため、「ヒステリックに何か言っている」と軽視し、母親がさらに怒って・・・という悪循環が生まれることも珍しくありません。

「お母さんヒス構文」の特徴3 同じことを繰り返し言う。何度言わせるの!

母親が何度も同じ言葉を繰り返すのも、「お母さんヒス構文」の典型的なパターンの一つです。

子どもや夫が何かをし忘れたり、母親の要望を無視したりすることで、母親が繰り返し何かを言わなければならない状況が生まれます。何度も同じ言葉を繰り返すうちに、母親のストレスは高まっていき、より強い口調で要求を伝えるようになるのです。

「早く部屋を片付けなさいって言ったよね。何回言わせるの!そんなに掃除したくないんなら、ゴミの山に埋もれて死ねば?」「宿題やったの!?もう知らない。宿題しないんなら学校辞めろ!」などが、「お母さんヒス構文」に当たります。

何度も同じことを言わなければならない状況に対し、母親は自分の言葉が無視されていると感じ、余計に感情的になってしまうのでしょう。

「お母さんヒス構文」の特徴4 極端で大袈裟な表現。私がいなくなればいいんでしょ

「お母さんヒス構文」では、感情が高まりすぎた結果、極端な表現を用いることが多々あります。

「誰も私の言うことを聞かない。お母さんなんていなくなればいいと思ってるんでしょ?」といった表現が典型的です。こうした誇張は、母親が抱えている精神的あるいは肉体的な疲労やストレスの現れです。この「お母さんヒス構文」の意味するところは、自分を尊重してほしい、という切なる願いに他なりません。

「お母さんヒス構文」の特徴5 罪悪感を与える。あんたのせいで人生めちゃくちゃ

家族に罪悪感を与える表現も「お母さんヒス構文」でよく見られる例です。

自らの犠牲に対し、家族がそれに対して感謝していないと母親が感じる時、「お母さんヒス構文」で家族に罪悪感を植え付けようとすることがあるのです。

「あんたのせいで私の人生めちゃくちゃ!」などの言葉で罪悪感を植え付ける例が典型的です。家族が実際に母親の献身に全く報いておらず、その事実を突きつけられるために、罪悪感を抱くケースもあります。

「お母さんヒス構文」の背景にあるのは、母親への負担の偏り

ところでなぜ「お母さんヒス構文」は流行したのでしょうか? そして、なぜ「お父さんヒス構文」は流行しないのでしょうか?

背景にあるのは、育児における母親への負担の偏りです。統計上、共働き家庭であっても、子供の教育の責任者は女性である場合が多く、女性は、家事・育児・仕事の3つに追われるケースが珍しくありません。

父親が育児を頑張ればイクメンともてはやされる一方、母親が子育てをするのは「やって当然」とみなされます。

多くの母親は、家事、育児、仕事などさまざまな責任を引き受けますが、それが給与に反映されることはありません。それどころか、一度出産してしまったらキャリアの中断期間が発生し、産休後職場復帰しても時短勤務で閑職に回されたり、出世コースから外されたりすることは珍しくないのです。いわゆるマミートラックにのり、同期の男性が出世していくなか、賃金は上がらず、そのくせ育児や子供の教育で早朝から夜まで働く母親は少なくないでしょう。

そこまでしても、誰からも褒められることはありません。家族でさえ、そんな母親の献身を当たり前のものだと受け取りがちです。母親が負担に耐えきれなくなったとき、感情の爆発が起こり、「お母さんヒス構文」が発生するわけです。

つまり、「お母さんヒス構文」は、家庭内の性別役割分業および、コミュニケーション不足によって生じる母親の心の叫びだ、と見ることもできるのです。

「お母さんヒス構文」は面白い。母のあるあるが詰まっている。でも・・・

そういった切実な背景がありながらも、「お母さんヒス構文」はしばしばユーモアの対象として取り上げられます。

ネット上で母親の送るヒステリックなメッセージが晒され、共感やネタとしてシェアされています。一部の不合理に感情的な母親(いわゆる毒親)を持つ子供からすれば、そうやって笑いとして扱ってもらったり、共感されたりすることで、息抜きができるのでしょう。

ただし、これらのユーモアの背後には、母親ばかりが家事・育児という無償労働をすることが当然視されており、「子供への愛があれば母親が自分を犠牲にするのが当たり前」という女性を苦しめる「母性神話」が息づいていることも無視してはいけません。

さいごに。「お母さんヒス構文」は男女の育児・家事分担の不平等がなくなるまで続く

ところでヒステリーの語源をご存知でしょうか?ヒステリーはギリシア語で子宮を表すヒステリアが元になった言葉です。この言葉は男性の医学者が、女性を「感情的」であり、その原因は「子宮だ」と結論づけたことから生まれました。もちろんこの学説は現在ではトンデモだとされています。つまり、ヒステリーは男性からの女性蔑視が元になって生まれた言葉なのです。

「お母さんヒス構文」を母親あるあるとして消費し、笑ったり共感したりすることに罪はないでしょう。しかし、お母さんって感情的だよね、と言い切るのは、はるか昔に、女性は感情的で男性は知的だとして女性を蔑視していた医学者となんら変わりはありません。

近年、父親の育児休暇が推奨されるようになり、取得率も右肩上がりになりつつあります。父親と母親の二人で育児の分担ができるようになった暁には、「お母さんヒス構文」は過去の遺物になっているかもしれません。

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