学生時代や若い頃は、毎日のように話をしていたほど仲良かった友達が、大人になってから話が合わなくなった、という人は少なくないでしょう。
特に女性は、結婚、出産などで生活がガラリと変わることも多いので、それに伴って関心領域や話題が変わってしまったり、価値観が変わってしまったりすることは珍しくありません。
あんなに仲良かったのに、最近、友達と話していてもつまらない
なんだか彼女が変わってしまったように感じる。価値観が合わなくて苦手になった…
そんなふうに感じ始めたら、昔仲が良かっただけに、寂しさを感じてしまうでしょう。
今回は、アラサー女性が感じがちな、友達との価値観のズレの原因、およびそのズレにどのように向き合うべきか、を解説していきます。
ライフステージの変化が生む、仲良かった友達との価値観のズレ
現代の日本女性の平均初婚年齢は30歳(男性は31歳)です。また、20代後半から30代にかけては、仕事にも慣れてきて昇進したり、転職をしたりする人も多い時期です。
女性の30代は結婚、出産、転職、昇進、家の購入など、大きなライフイベントが重なりがちな時期ですから、それぞれの生き方や優先順位が変わってくるのは、必然と言えるでしょう。
ライフステージの変化は、友情にも影響を及ぼします。
例えば、独身で仕事に邁進している女性と、子育てを頑張っている女性では、お互い忙しいという共通点はありながらも、日常生活や興味関心の領域は全く違ってきます。お互いの話に興味が持てなくなるケースも珍しくありません。
「価値観が合わない」と感じるのは、相手が悪いのでも、自分が悪いのでもなく、お互いのライフステージが変わった、というだけのことなのです。
仲良かった友達が苦手になった理由
かつて仲が良かった友達が、「苦手になった」「会うと疲れるようになった」という場合、さまざまな原因が考えられます。
お互いの大切なものを大切にできなくなった
例えば、全く出産や子育てに興味が持てない女性が、親友に子供が生まれたからといって、急に子供に興味を抱けるかというと、それは難しい話です。親友は子供を大切にしていると理解しながらも、子供の話を退屈に感じてしまい、一緒にいる時間が苦痛になるケースもあります。
同様に、仕事を辞めて子育てを始めた女性の中には、キャリアを追求している友達の苦労話に興味が持てず、退屈だと感じてしまうかもしれません。
婚活をしている友達の話は、結婚に興味がない女性にとってはどうでもいいことですし、結婚に興味がない女性にとっては「誰か紹介してあげようか」という言葉は押し付けがましく感じることになります。
自分が大切だと思っているものや人に対して、友達が大切だと思っていない、ということは態度で伝わります。
「自分の大切にしているものを、大切にしてくれていない」と感じたら、友達に対して苦手だと感じ始めてしまうのも仕方がないことでしょう。
優先順位が変わった。友達より夫、子供、推しを優先する
優先順位が変わったことも、友達を苦手だと感じる一因になります。
例えば、これまでは夜通し飲んで騒いでいた友達が、家族ができたことをきっかけに、「ランチしよう」「お茶しよう」と言ってくるケースがあります。家族の予定を優先して、友達は後回しにされてしまう場合も多々あるのです。
また、近年ですと、推し活に力を入れすぎて、友達との約束よりも推し活を優先し、それが原因で友情が冷めてしまうケースもあります。推し活をしている人の中には、友達と会っている時でも、推しの話を熱く語ったりする場合がありますが、往々にして友達はその子の推しには興味がないため、つまらない時間を過ごす羽目になります。
当然のように他の人(家族や恋人、アイドルなどの推し)を自分よりも優先にされてしまったら、以前のような好意を友達に抱けなくなるのは仕方がないことでしょう。
経済力の格差が大きくなった
学生時代は収入や社会的地位に差がなかったとしても、アラサー以降は大きな差が出てきます。
例えば旅行に行くにしても、自分はファーストクラスで旅をしたいと思っているのに、友達はお金がなくてエコノミーしか乗れない、となった場合、旅行自体を諦めることになりかねません。出かける場所や、どれだけお金をかけるか、の価値観がズレ始めると、疎遠になってしまうケースも珍しくないのです。
政治的思想が対立する
ライフステージが変わると、価値観も変わります。支持する政党も変わってくるかもしれません。
日本では友達と政治の話をすることはあまりありませんが、それでもなんとなくどういった政治的思想を持っているかは伝わるものです。自分とは相容れないと思っている政策を支持していることがわかって、相手に対して嫌悪感を抱くケースもあるでしょう。
もちろん、正反対の政党を支持しているけれど親友、というケースは多々あります。一方で、「思想が変わってしまったから疎遠になった」というパターンもゼロではありません。
自分の生き方を正当化しようとする
現代の女性はさまざまな生き方を選ぶことができます。昭和初期には、女性は必ず結婚し、出産しなければなりませんでした。そうでなければ、いき遅れや石女(うまずめ)と言われて揶揄されたのです。現代でも、結婚しろ、出産しろ、という社会からの圧力は存在しますが、その頃よりは随分マシになりました。
現代は、建前上は、仕事に邁進してもいいし、仕事はそこそこで推し活に励んでもいいし、出産して専業主婦になってもいいし、子供を産まない選択をしてもいいことになっています。
さまざまな生き方が選べる現代は、女性の生き方に対する正解がありません。今の時代、女性の幸せは結婚や出産だと、口に出して言う人はいません。
それゆえ、女性の中には、自分の生き方が正しいのか、不安になる人も少なくないのです。
不安になった女性は、自分の生き方こそが正しいのだと、無意識に主張します。
子供を産むのが正しいのだと主張したい女性は、仕事ばかりしている女性にマウントし、キャリアを積むことこそが正しいと主張したい女性は、専業主婦にマウントする、という地獄のような構図が発生するケースもあります。
こういった地獄のマウンティング合戦は、「自分の生き方こそが正しく、幸せなのだ」と思い込みたいがために発生しています。
アラサーは、大人とみなされる年齢ですが、それでもまだまだ若く、自信を持てない人がほとんどでしょう。友達と進む道が違ってきて、不安を感じやすい時期だからこそ、自分の生き方を正当化したくなり、ギスギスしてしまいやすい時期なのです。
価値観がズレてしまった友達とは距離を置くのは良い?適切な距離とは?
価値観がズレてしまった友達と関係を続けるべきか否か、迷うこともあるでしょう。
どうしても耐えられない相手なら関係を切るのもアリですが、多くの場合、アラサー、アラフォー以降の価値観のズレは、歳を重ねるごとにどうでも良くなってきますから、バッサリと関係を断ち切るのは勿体無いと言えるでしょう。
まずは、適切な距離感を探ってみましょう。
苦手になったら少し距離を置いてみよう。会いたくなるまで放置!
無理に価値観が合わない友達と関係を続けるのはストレスになります。相手との会話に疲れや苛立ちを感じるなら、一時的に距離を置くことを検討してみてください。
半年ほど連絡しないでいると、相手のことが気になって、自分から連絡したくなるかもしれません。
コミュニケーションの方法を見直す。深い話はしなくてOK
あなたが相手に対して苦手だと感じるようになったということは、相手もあなたに対して苦手だと感じている可能性が高いでしょう。
そういった関係を改善するために大切なことは、相手を否定しないことです。相手の価値観は自分とは違うものかもしれませんが、見下さず、否定せず、そういう人もいる、と捉えましょう。
共感できる部分が少なくなってきた場合には、無理に深い話をしようとする必要はありません。芸能人のゴシップや最近読んだ本の話、共通の友人の話、長い付き合いの中で増えていった思い出話に興じるだけでも、十分楽しい時間を過ごせるはずです。
相手を変えようとしない。「相手のためを思ったアドバイス」=余計なお世話
相手を否定しないことに加えて、相手を変えようとしないことも大切です。
例えば、友達がいい歳をして推し活にお金を注ぎ込み、彼氏を見つけようと努力もしないため、友達の将来が不安だ、と思ったとします。それは、余計なお世話です。彼氏がいる方がいないより幸せだとか、将来のために貯蓄すべきだとか、◯歳なら◯歳らしくすべきだ、といったことは真実ではなく、ひとつの偏った価値観にすぎません。
同様に、あなたが友達のためを思ってアドバイスしたいと思ったことは、あなたの偏った価値観の押し付けでしかないのです。
大切なのは、お互い全く違う生き方をしていて、相手の生き方に共感したり賛同したりできなくても、「自分が全部正しいわけではない」と謙虚な姿勢でいることです。
いうまでもない事ですが、DVを受けている女性に、別れた方がいい、と勧めたり、支援先を紹介したりすることは価値観の押し付けには該当しません。ただし、実害が出ている場合は、友達として支援をするのは当たり前のことです。
いくら仲良かった友達でも価値観が一生同じなんてない。ゆるい繋がりを大切に
成長に伴って、価値観がズレてしまったり、相手の言動にイライラするようになったりすることは珍しくありません。というより、価値観が一生変わらず、ずっと仲良しでいられる友達は存在しません。
人は変わりますし、変化に伴って友情の濃淡も変わります。一時的に疎遠になったとしても、何らかのきっかけで深い関係に戻ることもあるでしょう。
大切なのは、変わりゆく友情関係を否定せず、完全に遮断することなく、ゆるくつながり続けることです。
結婚や出産、キャリアによってライフステージや価値観が変わるといっても、結局最後は、皆老人になります。子供が手を離れて、キャリアもひと段落すれば、再び濃い交流が復活し、茶飲み友達になれるかもしれません。