(アイキャッチ画像出典:https://eigameetskabuki.filmarchives.jp/)
国立映画アーカイブ(映画の保存・研究・公開を通して映画文化の振興をはかる日本で唯一の国立映画専門機関)が所蔵している貴重な日本の初期の劇映画や資料がweb公開されました。
今回は、手軽に日本映画の黎明期に触れられるこちらのサイトをご紹介します。
「はじまりの日本劇映画 映画meets歌舞伎」
(画像出典:https://eigameetskabuki.filmarchives.jp/)
劇映画とは「フィクション」の作品を指すのが一般的です。
対になるのが「ドキュメンタリー」の作品を指す記録映画です。
“はじまりの日本劇映画”という名前が示す通り、映画が130年前に日本にやってきた際、映画は当時の日本のエンタメである歌舞伎と出合い、発展していきます。
国立映画アーカイブが国立情報学研究所と共同で開設したwebサイトは、3つのセクションで構成されています。
【映画 meets 歌舞伎とは】
サイトのイントロダクション的な存在で、映画と歌舞伎が地続きの関係だった日本映画の黎明期について案内されています。
多くが失われてしまっていることに加え、今までこの時代の日本映画は原始形態とみなされていたそうですが、近年映画史観が変わってきていることなどを知ることができます。
【映画をみる】
明治から大正にかけて製作された、白黒のサイレント映画4作品がデジタルデータ化されています。
中でも1915年(大正4年)の『五郎正宗孝子伝』は、当時の上映を再現した声色掛け合い・和洋合奏の音声付きで、72 分のデジタル復元版が全篇公開されています。
サイレント映画に馴染みがない方は、まずこちらをご覧になることを筆者的にはおすすめします。
(画像:『豪傑児雷也』1921(大正 10)年)
1921(大正 10)年の『豪傑児雷也』は、当時歌舞伎や講談の人気キャラクターともいえる児雷也(架空の盗賊)の話で、今のアニメの実写化や2.5次元舞台化の元祖なのかもしれません。
妖しい忍術を使う様子が当時のトリック撮影の技術で、ちゃんと変身していて驚きました。
他には現在も歌舞伎で人気の2作品、1908(明治 41)年の『旧劇 太功記十段目 尼ヶ崎の塲』と1915(大正 4)年の『先代萩 御殿の場 義太夫出語』を観ることができます。
【資料をみる】
当時の映画界の2大スター、尾上松之助(おのえまつのすけ)と澤村四郎五郎(さわむらしろごろう)についての充実した資料を見ることができます。
ポスターなど目で楽しめるものから、語録、関連する講演記録など多彩ですが、公開日順に一覧になっているフィルモグラフィーは圧巻です。
まるで現代を生きる俳優の公式サイトのような満足感のある内容で、二人を初めて知る筆者にも新鮮で100年前にタイムスリップしたようでした。
“目玉の松ちゃん”という愛称で親しまれていた日本最古の映画スター、尾上松之助はこちら。
(画像出典:国立映画アーカイブ 尾上松之助ポートレート)
中央が大正時代の旧劇※映画の大スター澤村四郎五郎。
(画像出典:国立映画アーカイブ 「澤村四郎五郎ポートレート(作品名は不詳)」)
普段は最新エンタメのおすすめを紹介していますが、昭和レトロを通り越した明治・大正期のエンタメを本日はご紹介しました。
日本映画の草創期に興味を持たれた方には、やはり国立映画アーカイブが国立情報学研究所と共同で開設している「映像でみる明治の日本」というwebサイトもおすすめです。
デジタル復元された、現存している最も古い日本映画『紅葉狩』(重要文化財)や『小林富次郎葬儀』(重要文化財)など明治時代に撮影された6本の日本映画がストリーミング再生で見ることができます。
※無声映画の時代は、日本映画が“新派劇(現代劇)”と“旧劇(時代劇)”の二種類に分かれていた。
はじまりの日本劇映画 映画 meets 歌舞伎
https://eigameetskabuki.filmarchives.jp/
国立映画アーカイブ 公式サイト
https://www.nfaj.go.jp
国立情報学研究所 公式サイト
https://www.nii.ac.jp/
映像でみる明治の日本
https://meiji.filmarchives.jp/