誹謗中傷とは?批評や批判、感想とどう違うの?有罪判決が出た事例も

近年、インターネット上の誹謗中傷が問題となり、誹謗中傷によって命を断つ人も現れています。誹謗中傷が簡単に投稿できる時代ですから、誰でも加害者にも被害者にもなり得る時代だと言えるでしょう。

今回は、誹謗中傷の加害者にならないために、「誹謗中傷とは何か」を簡単に解説していきます。誹謗中傷は、批評や感想、批判などと混同されがちですので、その違いについても確認しておきましょう。

目次

誹謗中傷って何?

誹謗中傷とは、「他人の名誉や、人格を傷つけるような言動」を指します。

具体的には、根拠のない悪意ある発言や、間違った情報を広めることなどが含まれます。

「どこから誹謗中傷になるのか」といった問いに対しては、その内容が他人の名誉や信用を傷つけるものか否か、が判断基準となります。

事実無根の悪意ある発言や人格攻撃は、名誉や信用を傷つけた、と判断され誹謗中傷と見做されます。

事実であっても誹謗中傷になるケースもある

「ほんとのことを言っただけ」だと当人が思っていたとしても、内容や伝え方次第では、誹謗中傷になる場合があります。

例えば、ある被差別部落出身の人が、とある会社に就職したとします。人事部にいた人が、新入社員が被差別部落出身であると知り、その情報を故意に社内に広めたとします。そう言った場合、被差別部落出身であることが正しい情報だったとしても、誹謗中傷に当たる可能性が出てきます。

なぜなら、その情報を広めた人は、その情報が広まることで新入社員の立場が悪化する認識を持ちながら、悪意を持って広めている可能性が高いからです。

誹謗中傷で有罪判決が出た事例

次に、誹謗中傷で有罪判決が出た事例について確認しておきましょう。

プロレスラー木村花さんを誹謗中傷。裁判所が男性に129万円の支払いを命令

2020年、プロレスラーであり、リアリティ番組に出演するタレントでもあった木村花さんが、SNS上での誹謗中傷を受け、自殺を遂げました。

木村花さんは、リアリティ番組「テラスハウス」において、ヒール的な役割を担っていたため、SNSで数百件以上の誹謗中傷を受けていたのです。

木村花さんの遺族は、誹謗中傷したSNSユーザーを特定し、法的に追及。結果、誹謗中傷していたある男性は損害賠償として129万円の支払いを裁判所から命令されました。

このケースは、民事訴訟で損害賠償を請求された、という事例ですが、日本では誹謗中傷は名誉毀損罪や侮辱罪に該当することがあります。これにより、加害者は刑事責任を追及される可能性もあるのです。

交通事故死の遺族を誹謗中傷。侮辱罪でアルバイト男性が有罪判決。勾留29日

2023年、交通事故で妻と娘を亡くした松永拓也さんに対し、「金や反響目当てで戦っているようにしか見えません」「天国の莉子ちゃんと真菜さんが喜ぶとでも?」などと投稿を行った24歳のアルバイト男性が侮辱罪に問われ、勾留29日の有罪判決が下されました。

男性が誹謗中傷をした理由は、趣味の投稿をしても反響がなかったが、他人を攻撃する投稿をすると多くの人に拡散されて、反響が嬉しかったからだそうです。それから人を煽ったり、揶揄したりすることがやめられなくなったのだとか。

男性は「承認欲求の誘惑に勝てず、再犯する可能性が高い」と松永さんは指摘。報道によると、男性は公判で「インターネットでの発信はしない」と述べましたが、勾留が解かれた今も、投稿を続けているそうです。

誹謗中傷と批判・批難・批評・感想の違いとは?

次に、誹謗中傷と、批判、非難、批評、感想との違いはなんなのか、について確認しておきましょう。

感想とは?

感想とは、個人的な印象や感情に基づいた意見を指します。主観的な視点が強く具体的な根拠を必要としません。

例えば、友人と映画を観た後に、「この映画、めちゃくちゃ面白かった!感動した!」「面白くなさすぎて、途中で寝た。ハズレだった」という発言が感想に該当します。感想はあくまで主観に基づいているので、同じ映画を見ても、全く異なる感想になる場合も珍しくありません。

批判とは?

批判とは、特定の行為や意見に対して否定的な評価を下すことを意味します。感想とは異なり、論理的な根拠に基づいていることが重要です。

例えば、ある企業が環境破壊の原因となる製品を製造している場合、「この企業の製品は環境への影響を考慮しておらず、持続可能な社会を目指すためには、相応しくない」「環境破壊をしないために、開発し直すべき」というコメントが批判に該当します。

批判は、特定の行為や意見に対する否定的な評価を指すだけではなく、問題点を指摘し、改善を促す行為でもあるのです。

批難とは?

非難とは、道徳的な観点から他者の言動を強く非難することを指します。感情的な要素が強く、厳しい言葉を伴うことが多いです。

例えば、とある政治家が不正行為を行った場合、「あの人は国民の信頼を裏切った卑劣な政治家だ」「税金泥棒だ」という強い言葉で非難する行為が批難に該当します。

批難は、「道徳的・倫理的観点」から他者の行動を強く非難する点がポイントです。

批評とは?

批評とは、文学や映画、アニメなど、あらゆる芸術作品に対する評価や分析を意味します。肯定的な意見も否定的な意見も含まれます。

例えば、映画のレビューにおいて、「この映画は映像が美しく、プロットも巧みで心を揺さぶられる。しかし、キャラクターの作り方が凡庸で古臭い。いまだにフェアリーテイル・ゲイ(注1)が出てくるのは、既視感が満載で退屈だった」と分析する行為が批評になります。

批評は、「なんだか好きじゃなかった」「好みじゃなかった」など、主観を重視する「感想」と違い、なぜそう思ったのか、を具体的な事例をもとに評価、分析する点がポイントです。

注1 フェアリーテイル・ゲイとは
映画批評で用いられる概念。主人公の友人ポジションのゲイで、主人公や物語に都合のいいだけの“妖精のようで、まるで現実味のない”ゲイキャラクターのこと。頻繁に登場するため、クリシェ(目新しさがない)として批判的に見られることが多い。

誹謗中傷とは?

誹謗中傷とは、他人の名誉や人格を傷つける意図を持った行為であり、事実無根の悪意ある発言や誤った情報を広めることが含まれます。誹謗中傷は感想や批評と違い、法律的にも問題となる行為です。

例えば、SNSで「〇〇さんは嘘つき。過去にこんなひどいことをした」というような事実無根の情報を広め、相手の名誉や信頼を傷つける行為が誹謗中傷に該当します。

誹謗中傷のリスクは計り知れない。どうしても言いたいことは日記に書こう!

誹謗中傷とは、他人の名誉や人格を傷つける行為であり、法律的にも重大な問題となります。

例え、匿名で行った言動であっても、責任を追及される可能性は十分にあるのです。ですから、例え裏アカと呼ばれるアカウントであっても、迂闊な発言はしないように気をつけましょう。有名人に対する誹謗中傷の場合、「どうせ本人は見ていないだろう」「自分以外にも同じ発言をしている人はいるし」と認識が甘くなりがちです。

また、どうしても過激な投稿はインプレッションを集めやすいため、一度反響があると、やめられなくなるほどの中毒性があるようです。

簡単に発信できる今、誹謗中傷に加担してしまう可能性が誰でもあるからこそ、気軽な気持ちで投稿した誹謗中傷が、相手の尊厳を傷つけ、死に至らしめることもある、と認識しておくべきでしょう。一度でも誹謗中傷をしてしまったら、罰金や有罪判決、誰かを自殺に追い詰める、という様々なリスクがあるのです。

どうしても誹謗中傷に当たることを言いたい、書きたい、という場合は、誰にも見られない日記(オンラインNG。どれだけ非公開にしていても、オンライン上のデータは公開されるリスクがある)に書くのがいいでしょう。

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