近年、スピリチュアルブームの影響もあり、「引き寄せの法則」という言葉が一般的に使われるようになっています。書店には関連本が並び、SNSやYouTube、ブログでは引き寄せの法則について解説するインフルエンサーの姿も見られます。
引き寄せの法則は、「自分の思考が現実を作る、引き寄せる」ことを信じるものですが、果たして、それは真実なのでしょうか?
今回は、引き寄せの法則のメカニズムと科学的根拠、引き寄せを信じるメリットとデメリットをご紹介します。
引き寄せに興味はあるけれど、なんとなく胡散臭さも感じているという方は、本記事をぜひ参考にしてみてください。
引き寄せの法則とは?ポジティブシンキングと何が違う?

引き寄せの法則(英語:The law of attraction)とは、わかりやすく簡単に言えば、「自分が強く望むものが、現実になる」という考え方です。
「自分の考えていることが現実になる」と聞くと、ナポレオン・ヒルの著作『思考は現実化する』(Think and Grow Rich)を連想する人も少なくないでしょう。
『思考は現実化する』で書かれているのは、引き寄せの法則と同じことですがこの頃はまだ引き寄せという言葉は使われていませんでした。
引き寄せの法則という言葉が広がったのは、2006年、『ザ・シークレット』がベストセラーになってからのことです。
『思考は現実化する』も『ザ・シークレット』も源流は同じであり、19世紀末から存在する「ニューソート」という思想に根ざしています。
ニューソートとは、キリスト教の異端思想で、ポジティブ・シンキングの源流と言われている思想です。ニューソートにおいては、人間は宇宙(ユニバース)と繋がっており、一つのもの(ワンネス)であり、人は無限の可能性を秘めているとされています。人間は宇宙と繋がっている存在であり、神とも繋がっているのだから、人間が思考することは、必ず実現化する、というわけです。
引き寄せの法則はニューソートに根ざした考えであるため、引き寄せの法則を信じている人は、「ワンネス」「ユニバース」という言葉を使いがちです。
「引き寄せの法則=願えば叶う」というよくある誤解

引き寄せの法則を理解する上で気をつけなければならないのは、「ただ願えば叶う」という意味ではない、という点です。
例えば、受験や資格試験に受かりたいと願えば、勉強しなくても簡単に叶う、というわけではありません。
大学受験や資格試験の例で言うならば、
試験に受かりたいな→諦めていたけれど考えが変わった。きっと勉強すれば受かるだろう→そのために勉強を頑張る→合格
となります。
願望が出た時点で、「受かるはずないから勉強なんてしても無駄」とマイナス思考になるのではなく、「受かると決めれば受かる。合格を引き寄せられる」と信じて、「実際に行動すること」、そして結果を出すことが引き寄せの法則なのです。
引き寄せの法則を信じているスピリチュアルな人は、何かを引き寄せたいと望むときに「宇宙にオーダーする」といった神秘的な表現を使いがちです。
引き寄せの法則は嘘?科学的根拠はある?

引き寄せの法則について語る人たちは、脳科学や量子力学的に根拠があると言いますが、引き寄せの法則には科学的根拠があるのでしょうか?
引き寄せの法則は魔法ではありませんが、科学的、論理的に説明できる箇所はあります。
プラセボ効果(プラシーボ効果)
医師から効果があると言われた薬を飲み、それが実際にはただの砂糖の塊であったにもかかわらず、身体的な変化がみられたという実験結果があります。これをプラセボ効果と言います。
個々人の期待や信念が、薬と同じくらい個々人の体に変化をもたらすことは科学的に証明されているのですから、引き寄せの法則を信じた人が、より良いパフォーマンスをし、より良い結果を出すことも十分考えられるでしょう。
自己実現予言・自己成就的予言
心理学では、自己実現予言あるいは自己成就的予言という言葉があります。
例えば、「今日は最悪なことが起こりそうだ」と思っている人は、日常生活の中で最悪なことにフォーカスし、「やっぱり最悪なことが起こった」と考えます。
人は、自分の予言通りの日常を送りやすい、という心理があるのなら、引き寄せを信じている人が引き寄せを実現させることもあり得ることでしょう。
確証バイアス
自己実現予言が起こる一因に、確証バイアスが考えられます。
確証バイアスとは、自分の持っている信念を補強するような情報ばかりを集めてしまい、それ以外の情報を無視してしまう心理のことです。
例えば、「関西人はおしゃべりで陽気」という考えを持っている人は、陰気で無口な関西人の存在を視界に入れず、「あの人は例外でそれ以外の関西人は皆陽気でおしゃべりなのだ」と思い込むかもしれません。
あるいは、自分の好きなアイドルが不祥事を起こした場合、不祥事を起こしたという証拠はたくさんあるにも関わらず、その証拠を無視して、「彼は無実だ」という情報ばかりを集めてしまうこともあります。
ただ、もし引き寄せの法則を信じることによって未来に希望を持ち、ポジティブに努力できるのだとしたら、それでいいとも言えるでしょう。
科学で説明できない部分もある
上記で見てきたように、引き寄せの法則は科学的に説明できる部分も多々あります。しかし、逆に説明できない部分もあります。
引き寄せの法則の源流であるニューソートで言われている、
- 人と宇宙は繋がっている。ワンネス
- 宇宙(ユニバース)にオーダーすれば願いは叶う
- 私たちは自分の世界を作っている神のような存在
これらの点については、科学的根拠があるとは言えないでしょう。
科学で説明できない神という存在を信じたいという人間心理は、人類が生まれた時から現代まで脈々と続いているものです。
引き寄せの法則を学ぶための本や信頼できる発信者

現在、引き寄せの法則を発信している人は無数に存在しています。
高額なセミナーに誘導しようと目論む人もいますから、一人の人に傾倒するのは危険でしょう。
引き寄せの法則を学びたいなら、スピリチュアル要素の強いものから実践的心理学に近いものまで、様々な視点から学び、自分なりに咀嚼する必要がありそうです。
初心者にお勧めなのは、
スピリチュアルが好きな人は、
引き寄せの法則を発信しているインフルエンサーは国外・国内ともにたくさんいますが、誰の言葉に耳を傾けるかは慎重に選んでください。
特に「お金を払えば願いが叶う」「私には龍の声が聞こえる。(つまり、私は選ばれた存在)」といったお金をむしりとる気満々のインフルエンサーの言葉には、耳を貸さないでおきましょう。
引き寄せの法則が気持ち悪いと言われる原因は?
引き寄せの法則はしばしば「気持ち悪い」「胡散臭い」と否定的な評価をされがちです。ここでは、気持ち悪いと言われる原因について掘り下げておきましょう。
怠け者の戯言に見える

引き寄せの法則は、「願うだけで何もしなくても願望が叶う」法則だと誤解されがちです。そのため、怠け者の戯言だと思われてしまうのでしょう。
思考を放棄しているように見える
人生にはさまざまな問題があり、ただ単に考え方を変えるだけで解決する問題ではない。
それなのに、考え方を変えれば願いが叶うというのは、複雑な思考を放棄しているに過ぎない、と考える人もいるでしょう。
「占いは統計学」に通じる胡散臭さ。本当に科学なのか?

「占いは統計学」だと言いますが、じゃあ『誰が、いつ、どれくらい』の統計を取ったのか、そこに科学的根拠はありません。
引き寄せの法則も同様で、科学的に説明できる部分があるとはいえ、科学的に説明できない部分もあるにも関わらず、「法則」と銘打って、いかにも科学的です、という風を装っているところが、ペテンに思える人もいるのでしょう。
占いや引き寄せの法則を信じている人が、「科学的根拠があるんです!」といったところで、そこには科学的には説明できない要素が必ずあるため、「何か誤魔化している。気持ち悪い」と思われてしまうのです。
自己責任論の強化
あらゆる自己啓発書は、自己責任論の強化につながります。なぜなら、自分を変えれば結果が変わる、という信念に基づいて書かれているからです。
さらには、国や会社に問題がある場合でも、責任追及はできなくなるでしょう。

私が悪いんだ。私の思考を変えれば、願望が引き寄せられるんだ
……引き寄せの法則は、そう思い込んで現実の社会問題や健康問題から目を背けさせる一因になりかねないリスクがあるのです。
引き寄せの法則からそういったリスクを嗅ぎ取った人たちが、「引き寄せの法則ってなんか気持ち悪いかも」と思うケースもあります。
引き寄せの法則が成り立たないことを証明することは不可能


引き寄せの法則が成り立たないことを証明することは不可能です。
また、引き寄せの法則を実践して成功し、発信している人は、単に生存者バイアスが働いているだけかもしれません。
生存者バイアスとは、勝ち残った人の事例のみにフォーカスし、失敗した事例を無視してしまう事例のことです。
引き寄せの法則が真実かどうかは、証明不可能だというのが現実です。そのため、証明できないことをさも心理かのように発信するなんて気持ち悪い、と言う人もいるのです。
引き寄せの法則の簡単なやり方【具体例あり】
引き寄せの法則が真実かどうかは、証明不可能です。引き寄せの法則を実践してうまくいった人もいれば、うまくいかなかった人もいます。
ここでは、引き寄せの法則を実践する簡単な方法をご紹介します。
明確な目標を設定する
「幸せになりたい」など曖昧な目標ではなく、具体的な目標を作りましょう。
具体的な行動をする。ベイビーステップを踏む


引き寄せの法則を実行するということは、願うだけではなく行動するということです。
例えば、「まずは週に3日間、動画を見ながら10分間ヨガをする」それが難しければ、「週に3日間、ヨガマットをひく」から始めてもいいでしょう。ヨガマットをひいてしまえば、自然とヨガがしたくなるものです。
願望が叶った状態を詳細にイメージする
アスリートとなどが優勝した後の状態をイメージして、受賞スピーチなどを考えることで、パフォーマンスを向上させるメンタルトレーニングも存在します。
「どうすればできるか」を考えるクセをつける


「どうせできない」と思考停止するのをやめて、「どうすればできるだろう」という考えにシフトしましょう。
小さな幸せに感謝する
小さな幸せにも感謝しましょう。そうすることで、ポジティブな気持ちが湧き、前向きに未来に向けて頑張ることができます。
引き寄せの法則は恋愛に効果がある?
引き寄せの法則はあらゆることに活用でき、恋愛にも効果があると言われています。
ただし、「特定の人を引き寄せる」という使い方ではなく、「自分のとって理想の関係性を引き寄せる」という考え方が健全でしょう。
すごい?引き寄せの法則を信じた結果
最後に、引き寄せの法則を信じたことで得られる結果について見ていきましょう。
ポジティブな結果
目標達成できる
引き寄せの法則を信じて前向きに努力した結果、目標達成できる人もいます。
チャレンジ精神が旺盛になる


引き寄せの法則を信じることで、最初からダメだと否定したり諦めたりせずに、あらゆることにチャレンジしやすくなります。
前向きに人生を生きられる
引き寄せの法則を信じるということは、「未来にはいいことが待っている」と信じることでもあります。引き寄せの法則を信じる生き方は、未来が楽しみになる生き方だと言えるでしょう。
ネガティブな結果
現実逃避してしまう
引き寄せの法則を曲解し、行動しなくても願うだけで引き寄せられると思ってしまうケースもあります。このようなケースは、現実逃避のために引き寄せの法則を言い訳に使っていると言えるでしょう。
過剰な自己責任論にとらわれる
望んだ結果が得られないとき、たとえ自分に非がなくとも、「引き寄せられなかった私が悪い」と自己嫌悪に苛まれる可能性があります。
お金を失う


悪徳インフルエンサーにハマってしまった場合、高額なセミナーや教材、怪しいビジネスに投資した結果、何も得るものはなかった、という結果になってしまうかもしれません。
適切な医療につながれない
引き寄せの法則を盲信し、「病気も気持ちの持ちようで寛解できる」と考えて医療を拒否する極端なケースもあります。その場合、命を危険に晒してしまう場合もあるでしょう。


さいごに。引き寄せの法則は便利なツールであり、万能薬ではない
引き寄せの法則は、単なる「願えばなんでも叶う」魔法ではありませんし、完全な嘘でもありません。
スピリチュアルな側面が注目されがちですが、実際には「思考と行動の連動性」に目を向けることで、現実にもポジティブな変化をもたらすきっかけになり得ます。
例えば仕事の場面では、「うまくいく自分」をイメージすることがモチベーションや集中力の向上につながり、結果的に成果が引き寄せられることもあるかもしれません。
ただし、引き寄せの法則は万能薬ではありませんから、引き寄せの法則を信じることで生じるリスクや落とし穴についても意識しておく必要がありそうです。





