「DV(ドメスティック・バイオレンス)」という言葉を耳にしたことがある人は多いでしょう。
DVは、主に夫婦や同棲カップルの間で起こる家庭内暴力を指します。しかし、近年では結婚していない恋人同士の間でも暴力が発生している「デートDV」が深刻な問題となっています。
恋愛関係にあるからといって、すべての行為が「愛情」だとは限りません。交際中に、暴力的な言葉を浴びせられたり、避妊を拒否されたり、異性の友人との連絡を禁止されたりすることは、すべて「デートDV」に該当します。
デートDVは、最初は「愛情表現の一部」と思い込んでしまうこともありますが、気づかないうちに相手の支配下に置かれ、自由を奪われるケースも少なくありません。
この記事では、デートDVの実態や種類、もし被害に遭ったときの対処法について詳しく解説していきます。
デートDVとは?女性の5人に1人は被害者?

そもそもDVとは?
DV(ドメスティック・バイオレンス)とは、夫婦や恋人同士の間で行われる暴力のことです。
「DVはごく一部の人にしか関係ない」と思うかもしれませんが、実際は決して珍しいものではありません。
平成29年に内閣府が行った調査(※1)によると、女性の約4人に1人が配偶者から暴力を受けた経験があると回答し、さらに7人に1人は繰り返し被害を受けていることが明らかになっています。
また、恋人との関係でも、女性の5人に1人が暴力を受けた経験があるというデータも。

結婚していなくても、交際中のパートナーからの暴力は決して見過ごせない問題なのです。
デートDVとは?簡単に説明すると…

デートDVとは、交際中の恋人同士の間で発生する暴力のことを指します。一般的なDV(ドメスティック・バイオレンス)が同棲・結婚しているパートナー間で起こるのに対し、デートDVは「まだ一緒に暮らしていない恋人関係」において発生する点が特徴です。
デートDVには、身体的暴力、精神的暴力、経済的支配、性的暴力、行動の監視・束縛など、さまざまな形があります。
特に、最初は「愛情表現」と思えるような行動が、次第にエスカレートしていくケースが多く見られます。
たとえば最初は、

心配だから居場所を教えて
と言っていたのが、
「返信しないと怒る」「外出先を細かく報告させる」
といった監視へと変わることもあります。
こうした状況に陥ると、



「これは普通の恋愛の範囲?」「自分が悪いのかも…」
と思い込んでしまい、気づかないうちに支配されてしまうことも。恋人の言動に少しでも「おかしいな」と感じたら、危険サインかもしれません。
カップル間のDV被害の問題点。相談できずに取り返しのつかないことになるケースも


DV被害の大きな問題点は、被害にあっていたとしても被害を訴えにくい、という点です。
被害を報告できないのは、加害者が自分のかつて愛した人(または今も愛情がある人)であり、「いいところもあるから」と、犯罪から目を背けてしまったり、「家庭内のイザコザを公にするのは恥」だと考えてしまったりすることが原因だと考えられます。
また、女性から男性に対するDV被害(男性が被害者)の場合、「女性から暴力をふるわれている情けない男性だと思われるのではないか」という気持ちから、被害を公にできないケースもあります。
心情的に被害を公にしにくいDVですが、「ただの夫婦喧嘩」「恋人同士のちょっとした諍い(いさかい)」と軽視するのは危険です。
実際に、平成24年の調査(※2)では、夫婦間の殺人、障害、暴行事件の総数は4000件(うち96%は女性が被害者)を超え、150人(うち60%は女性が被害者)が命を失っています。
デートDVの5つの種類とは?
DV被害を周囲に訴えられなかった人のなかには、



ふりかえってみるとおかしいと思うけれど、当時はDVを受けているという自覚が薄かった
という人もいます。
「DVとは夫婦間の暴力のこと」という印象を持っている人も多いため、とくに「デートDV」は見逃されてしまいがちです。
DV被害にあわないために、またDV被害にあいそうになったら即座にNOといい、周囲に相談できるようにするために、まずは「デートDV」にはどういった種類があるのかを知っておくべきでしょう。
身体的DV
DVと聞いて真っ先に思い浮かぶのは、殴る蹴るなどの直接的な暴力でしょう。
具体的には、以下のような行為が身体的DVにあたります。
- 足蹴にする
- 髪をつかむ
- 首をしめる
- 物を投げつける など
精神的DV


精神的DV(または心理的DV・モラルハラスメント)は、身体的DVより罪が軽いと思われがちですが、ひどいものになると、「心的外傷後ストレス障害(PTSD)」を発症し、加害者と別れたあとも長期間苦しめられる、罪の重い暴力です。
具体的には、下記のような行為が精神的DVにあたります。
- 威嚇するようにどなる
- 大切にしていたものを意図的に壊す
- 「お前は俺がいないと何もできない馬鹿」などの暴言を吐く
- 人前で馬鹿にする言葉を言う など
性的DV
彼氏彼女の関係だからとって、性的にいいなりになる必要はまったくありません。
付き合っているから、愛しているからということを理由にして、下記のような行為を強制してくるのはDVです。
- 嫌がっているのにキスやセックスをしようとする
- AVや卑猥な写真を無理やり見せてこようとする
- 避妊してほしいと言っているのにしない
- 妊娠が発覚したとき、問答無用で「堕ろせ」と命令する など
経済的DV


経済的に搾取したり、経済的に追い詰めたりすることで支配しようとしてくる男性もいます。
具体的には、下記のような行為が経済的DVに該当します。
- 自分のために仕事をやめてほしいと頼み、やめたあと生活費を渡さない
- 同棲しているのに生活費を一切入れない
- お金をせびって、返金を要求したら逆ギレする など
行動の監視・束縛
恋人の行動を細かく監視したり、自由を制限したりすることで支配しようとする男性もいます。一見、愛情の裏返しのように見えることもありますが、行き過ぎた監視や束縛は立派なデートDVです。
具体的には、以下のような行為が該当します。
- 「浮気していないか確認したい」などと言いスマホを勝手に見る
- 「信頼関係のため」と言い、SNSやLINEのパスワードを教えるよう強要する
- 「俺以外の男と話す必要はない」などと言い、異性の友人との交流を断たせる


デートDVチェックリスト


デートDVの多くは、最初は「愛されている証拠」と勘違いしやすいものです。
しかし、これらの行為は相手の自由を奪い、コントロールしようとする支配的な行動の表れ。気づかないうちにエスカレートし、最終的には交友関係を制限されたり、常に行動を監視されるようになってしまうこともあります。



私のことを思って言ってくれているのかも…?
と感じるかもしれませんが、恋愛において一方的な強要や束縛、監視、暴力行為は決して健全とはいえません。
まずは、チェックリストを使って二人の関係を振り返ってみましょう。
以下のサイトでは、デートDVに関する自己診断ができます。少しでも気になることがあれば、一度チェックしてみてください。
デートDVチェックリストが掲載されているサイト
NPO法人 ハーティ仙台
京都市 デートDV~若年層の恋人同士の間で起こる暴力~
with YOU 高校生のデートDV予防サポート
恋人からのDV被害防止のために。こんな男性には要注意!


デートDVにはどういった種類のものがあるのかを知ると同時に、被害にあわないための予防策として、
デートDVをするような男性を選ばない
という事も大切です。
『デートDV 愛か暴力か、見抜く力があなたを救う』(遠藤智子著・ベストセラーズ)によると、DV加害者には3つの特徴があるといいます。その特徴とは以下の3つです。
DV加害者の3つの性格上の特徴
- 異常に嫉妬深い
- 支配欲が強く、他者をコントロールしたがる
- 男尊女卑の考えを持っている
デートしている男性に上記の3つの特徴の片鱗が見え始めた場合、速やかに距離を置いた方がよいでしょう。彼女を所有物のように考える男性との付き合いは危険です。深入りしないように気をつけましょう。
ただし、DV男は外面がよく、「付き合ってみるまでこんな人だと気がつかなかった」という場合も多いので、被害にあってしまってから、「私のみる目がなかった」と自分を攻める必要はありません。
デートDVに関する法律
デートDVは深刻な事件に発展する可能性があるため、法律で被害者を守る仕組みが整えられています。
DV防止法(配偶者暴力防止法)は、身体的・精神的・性的暴力の防止や被害者の保護を目的とした法律で、令和6年4月1日にも改正が施行されました。この法律には「保護命令」も含まれ、暴力や脅迫を受けた被害者が裁判所に申し立てることで、加害者の接近を禁止できます。
また、デートDVにはストーカー規制法が適用される可能性もあります。つきまといやストーカー行為を規制し、被害者を保護するための法律です。
さいごに。デートDV被害にあってしまったら相談を
今回は、DV被害を未然に防ぐ&最小限で抑えるために、デートDVの種類やDVをしがちな男性の性格の特徴などについてご紹介してきました。
ただし、気をつけていても被害にあってしまう可能性はゼロとは言えません。
被害にあってしまったら、信頼できる人に助けを求めましょう。また、誰に相談していいか分からない、と言う場合は、デートDVの相談窓口や、各都道府県に設置されている女性センターで相談してみましょう。
相談窓口
デートDV110番 0120-51-4477
男女共同参画センター
「この人にもいいところはある」「いつか変わってくれる」と信じて手を打たないでいると、取り返しのつかないことになってしまいます。
あなたは大切な存在です。被害にあってしまったら、すぐに第三者に助けを求めましょう。
※1 内閣府 男女共同参画局 男女間における暴力に関する調査
http://www.gender.go.jp/policy/no_violence/e-vaw/chousa/h11_top.html
※2 内閣府 男女共同参画局 配偶者間(内縁を含む)における犯罪(殺人,傷害,暴行)の被害者(検挙件数の割合)(平成24年)
http://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/h25/zentai/html/zuhyo/zuhyo01-05-03.html