【羨ましい】専業主婦は贅沢?「勝ち組」論を統計データで検証

近年、日本は貧しい国になったというニュースが散見されます。

実際、賃金はあがらず税負担は増し、先の見えない苦しい生活を余儀なくされている家庭も少なくありません。

贅沢できない」「節約をしないと」と不安を感じている方も多いのではないでしょうか。

一人では家族を養えない家庭も増えており、専業主婦家庭よりも共働き家庭の方が一般的になっています。それゆえ、専業主婦を養える家庭は、「勝ち組」「贅沢」だとイメージされがちです。

しかし本当に、専業主婦は「勝ち組」で「贅沢」なのでしょうか? 

今回は、そんな専業主婦の実態に、実際の統計データを参考にしつつ、迫りたいと思います。

この記事を書いた人

今来今

編集者を経て現在フリーライター。複数メディアにて、執筆・連載中。視界が開けるような記事を発信していきたいです。

目次

専業主婦はどれくらいいる?減ってきている?

まずは、専業主婦がどれくらいいるのか、について見ていきましょう。

共働き家庭が専業主婦家庭の数を上回ったのは、1990年頃のこと。それ以降、専業主婦家庭の数は減り続けています

2024年の統計によると、25~34歳の専業主婦の割合は23.4%で過去最少となりました。2003年の59.2%、2014年の46.2%から大幅に減少し、10年で半減したことが明らかになっています。

労働政策研究・研修機構の2023年の統計では、共働き世帯数が1,278万世帯に対し、専業主婦世帯数は517万世帯となっており、専業主婦世帯は共働き世帯の半分以下の規模まで縮小しています。

内閣府男女共同参画白書によると、妻が64歳以下の世帯では、専業主婦世帯は「夫婦のいる世帯全体」の23.1%(令和3年)にとどまり、現在の日本では専業主婦はマジョリティではないことが分かります。

この数字を多いと見るか、少ないと見るかは人によるでしょう。「少なくなった」「贅沢だ」と言われている専業主婦家庭が、世帯全体の23.1%、つまり4分の1もいるのです。

日本の家庭の4分の1が高所得家庭というわけではないことを鑑みると、専業主婦家庭イコール高所得者家庭だという図式は成立しないと言えそうです。

時代とともに変化する価値観。夫は外で働き、妻は家庭を守るべき?

男女共同参画白書によると、「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきである」という考え方に反対する者の割合は、男女ともに上昇傾向にあり、平成28年以降、反対する者の割合が賛成する者の割合を上回っています

これらの統計から明らかなのは、専業主婦世帯は確実に減少傾向にあり、社会の価値観も変化していることです。

かつての当たり前は、もう当たり前ではないのです。

それに伴い、夫婦ともに外で働く世帯も増えてきています。近年、男女ともに高学歴で高収入を得るカップルが結婚し、パワーカップルになるケースも目立ちます。

こういった“同類婚”により、世帯間の収入格差が拡大している現実がある、と言えるでしょう。

なぜ「専業主婦=勝ち組・贅沢」と言われるのか?

次に、なぜ「専業主婦=勝ち組」と言われるのか、について見ていきましょう。

経済的安定に対する憧れ

「専業主婦が勝ち組」「贅沢」と言われる主な理由として、

  • 頑張って仕事をしなくても生活が送れている
  • 趣味や習い事、旅行など、自分の好きなことができる
  • 専業主婦の時点で旦那さんの稼ぎが良いと分かる

という点が挙げられています。

現在は一人の収入で家族を養うハードルが上がっているため、それを可能にしている夫の経済力への羨望が「勝ち組」イメージを生み出しているのでしょう。

しかし、前述したように全世帯の4分の1が専業主婦家庭であることを鑑みると、専業主婦世帯だからといって必ずしも高収入ではないというのが実態のようです。

時間的自由に対する憧れ

専業主婦が勝ち組と言える理由として、「時間」の自由が挙げられます。

激務の仕事や、仕事と家事育児のいわゆるダブルシフトに追われている人からすると、専業主婦は家事や育児だけしていればいい暇な人に見えるため、憧れの対象となるのでしょう。

「専業主婦がうらやましい・贅沢だ」と感じる瞬間

次に、専業主婦がうらやましいと感じている人の声を確認していきましょう。

育児も仕事も中途半端になる

30代女性・営業職

「母親となり子育てしながら職場復帰しました。時短勤務なので、給料も減りましたし、やりたい仕事を任せてもらえません。同期は出世していく中で、足踏みしている状態です。時短勤務なのに仕事量は多くて給料が減るとか、何の罰ゲームかと思います。こんな状態になるんだったら、専業主婦の方がよっぽど心穏やかになれると思います」

生活の不安があり、やりたいことに集中できない・贅沢できない

20代女性・俳優

「私は、俳優として生活していきたいと考えていますが、生活のためにバイトをせざるを得ません。本当はもっと演技のレッスンなどに時間を使いたいです。俳優仲間に専業主婦の子がいるんですけど、生活の心配をせずに、レッスンやオーディションを受けて結果を出しているのを見ると、いいなあ、と思います」

働きたくない

30代男性・会社員

「働きたくないので専業主婦が羨ましいです」


専業主婦は、「働かなくてもいい」「生活の不安がなさそう」「余裕のある生活ができる」というイメージがあり、それゆえに、憧れの対象となっているようです。

また、やりたくても時間的に金銭的にできないことを、専業主婦は叶ているように見え、「うやらましい・贅沢だ」という感情に繋がっています。

専業主婦って本当に「楽すぎ」「贅沢」なの?

豊かで余裕があるイメージの専業主婦ですが、実際、専業主婦は楽で贅沢なのでしょうか?

「無償労働」という楽ではない現実もある

専業主婦は「働いていない」と思われがちです。実際、一部の富裕層の専業主婦は、家事や育児を外注し、労働とは無縁の生活を送っています。

しかし、富裕層ではない専業主婦は、家事や育児、介護という労働をしなければなりません。この労働は、無償です。自分のペースでできる労働ではありますが、やって当たり前だとか、働いていないとみなされる、厳しい労働でもあります。

実際の専業主婦からは、

自分の予定以外に家族の予定に合わせて動くので、自分の時間がほとんど持てない

朝からずっと家事をしていて、一段落したと思ったら子どもが学校から帰ってきて、夜は残業の夫の食事を用意。自分の時間が全く取れない

という声を聞くこともあります。

アンペイドワーク(無償労働)に忙殺されて、自分の時間が取れないケースもあるようです。

「専業主婦=豊かな家庭・贅沢」ではない

実際、大手企業に勤めるエリート男性の妻は専業主婦であるケースが多々あります。しかし、専業主婦家庭だからといって必ずしも豊かな家庭であるとは限りません。

世帯年収に注目してみましょう。

総務省による2021年3月の家計調査によると、夫婦共働き世帯の勤め先収入は約57万円、専業主婦の世帯では約43万円で、年収換算すると共働き世帯は約684万円専業主婦世帯は約516万円と、約168万円の差があります。

つまり、平均的には、専業主婦世帯の方が共働き世帯よりも世帯年収は低いのです。

それゆえ、専業主婦の平均的なお小遣いは月に数万円以下になりがちで、ちょっとした洋服代だけで消えてしまうことも珍しくないのです。
専業主婦だから働かなくても優雅な生活をしている、と考えるのは現実に即していないと言えるでしょう。

イメージだけで、専業主婦は旅行や習い事を楽しんでいる、「贅沢だ」と決めつけるのは危険です。

共働きと専業主婦、どちらの方が合理的かは家庭の状況によって異なるのです。

専業主婦のメリット・デメリット

次に、専業主婦のメリット・デメリットについて確認しましょう。

メリット:余裕を持って家事・育児に取り組めるし、働かなくていい

  • 家事や育児にしっかり時間をかけられる
  • 通勤する必要がない
  • 会社で働かなくてもいい
  • 家事・育児さえ行えばあとは自由に時間を使える
  • 子供の成長を近くで見守ることができる
  • 子供の急な病気などに即座に対応できる
  • 配偶者控除が受けられる

デメリット:さまざまな面でリスクがある

  • 夫に何かあった時に経済的に困る可能性がある
  • 離婚によって貧困化する可能性がある
  • 離婚を恐れてモラハラなどに耐えなければならない可能性がある
  • 自由に使えるお金が限られる可能性がある
  • 人との繋がりが減り、孤独になる可能性がある
  • 専業主婦の期間が長引くと、再就職が難しい
  • 自分で稼ぐ生涯賃金が減る

専業主婦にはさまざまなメリットがありますが、同時にデメリットもあります。もっとも懸念すべきは、夫の経済力に頼って生活しているという側面でしょう。

現在は離婚が珍しくなく、シングルマザーの二人に一人は貧困ライン以下の収入しか得られていないという現実があります。会社を辞めて専業主婦になる際は、その辺りのリスクをしっかり考える必要があるでしょう。

一概に贅沢とは言い切れない|「勝ち組」論を越えて

専業主婦になりたいか」というアンケートでは、「専業主婦になりたい」と答えた人は29%で約3割の女性が専業主婦を志望していることがわかりました。若年層ほど「専業主婦になりたい」という割合が高く、20代では33%が専業主婦希望という結果も出ています。

この数値は、親世代が家事と会社での労働のダブルシフトによって、オーバーワークを行っているのを見ているために現れた数値でしょう。

家事や育児に加え、会社での仕事もこなすのは大変ですから、専業主婦に憧れるのは、ごく当たり前のことです。

ただし、むやみに専業主婦を理想化し、「勝ち組」とラベリングしたり「贅沢」と発言したりするのは、好ましくないだけではなく、現実に即していないでしょう。

重要なのは、「勝ち組」「負け組」という二元論ではなく、それぞれの選択にはメリットとデメリットの両方があることを認識することです。

現代では、経済情勢や価値観の変化により、専業主婦は確実に少数派となっています。多様な生き方を選択できる時代だからこそ、それぞれの立場を尊重することが求められるでしょう。

専業主婦は勝ち組でも負け組でもなく、単なる「女性の生き方の選択肢のひとつ」なのです。

参考
専業主婦世帯と共働き世帯
https://www.jil.go.jp/kokunai/statistics/timeseries/html/g0212.html

人口減少をグラフで読み解く
https://jinkougenshou.com/entry/2025/02/15/140242

専業主婦の割合は3割
https://fpbank.co.jp/column/kakei-percentage-of-full-time-housewives#2-4

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