推しに対して、ただの「ファン」を超えた強い恋愛感情を抱く「ガチ恋」。
近年、アイドルや配信者、インフルエンサーに対してガチ恋の感情を抱く人が増えており、社会現象としても注目されています。
最近も、配信者がファンに襲撃される事件が発生し、その背景にはガチ恋の心理が関係しているのではないかと指摘されています。
推しを本気で好きになる気持ちは、決して特別なものではありません。しかし、その思いが強くなりすぎると、自分自身を苦しめたり、時に周囲との間に歪みを生むこともあります。
本記事では、「ガチ恋」とは何か、その特徴や心理、似た言葉である「リアコ」との違い、さらには「気持ち悪い」と言われてしまう理由についても詳しく解説します。
ガチ恋とは?どこからが「ガチ」なのか

「ガチ恋」とは、「ガチで恋している」の略で、一般的にアイドルや配信者など、手の届かない存在に対して抱く本気(ガチ)の恋愛感情のことを指します。
女性アイドルのことが好きな男性ファンの間で生まれた言葉とされています。ガチ恋の対象は以下のような職業の人々です。
ガチ恋の対象になる職業

- アイドル(地下アイドル含む)
- VTuberやYouTuber、TikTokerなどのライバー、配信者
- 俳優や声優
- 歌手、画家などのアーティスト
- 作家、漫画家、演出家などのクリエイター
- 評論家、学者などの文化人
- マンガやゲームのキャラなど架空の人物
- キャバ嬢やホストなど疑似恋愛を売りにする接客業の人
ガチ恋の主な対象者は、「表舞台で表現活動をしている人」です。
例えばアイドルのファンの場合、アイドルが提供する歌や演技を楽しみ、「かっこいい・かわいい」とときめく人が多いでしょう。
ガチ恋勢の気持ちは?抱きがちな感情
ガチ恋をする人の感情は個々人によって異なりますが、以下のような感情を抱くことが多いようです。
- 実現可能かどうかはさておき、推しと本気で付き合いたいと思っている
- 推し(漫画のキャラ)が現実に存在しないことが本気で悲しく、つらい
- 推しとの恋愛を妄想する
- 現実の恋愛よりも、推しの方が大切だと思う
- 推しに熱愛報道が出るのは許せない。もし出たらファンをやめるかもしれない
- 推しが恋愛をするのはアイドル失格であり、ファンへの裏切り行為だと思う
- 推しが提供してくれるコンテンツだけではなく、プライベートも知りたい
ガチ恋をしている人は、推しに恋愛感情を抱いているため、推し(特にアイドル)が恋愛することに動揺し、傷つき、憤りを感じがちです。
嫉妬や執着の感情を抱き、粘着してしまうケースもあります。
ガチ恋とリアコの違い

ところで近年、ガチ恋という言葉と同じくらい「リアコ」という言葉が広まりつつあります。
リアコとは「リアルに恋している」の略で、ガチ恋と同様、推しに対する本気の恋愛感情、あるいはその恋愛感情を持つ人物を指す言葉です。
ガチ恋と同じ意味ですが、使われる場面に若干の違いがあります。
そのため、リアコという言葉はスタートエンターテイメント(旧ジャニーズ)所属の男性アイドルや、2.5次元俳優やアイドルを推している女性を表現するときに使われがちです。
ただし、ガチ恋とリアコには明確な定義が定められているわけではないので、同じ意味で使っている人も少なくありません。
ガチ恋やリアコが増えている4つの理由
近年、アイドルや配信者、VTuber、ホストなどに本気で恋をしてしまう「ガチ恋」や「リアコ」層が増えていると言われています。
SNSやYouTubeのコメント欄では「推しにガチ恋してしまった」「リアコつらい」といった投稿が増えると同時に、未成年を含む多数の人が投げ銭やグッズ購入で多額のお金をつぎ込むことが社会問題になっています。
ここでは、なぜガチ恋やリアコが増えているのか、その社会的背景を確認していきましょう。
SNSとライブ配信文化の発展で推しとの距離が近くなった

かつての推しはテレビや雑誌を通してしか知ることができない遠い存在でしたが、現代ではSNSやライブ配信を通じて、ファンと直接交流する人も珍しくありません。
配信者やアイドルがファンのコメントを読んだり、リアクションを返したりすることも仕事の一環になっているため、ファンは「自分の存在を認識してもらえた」と感じやすいのです。
日常生活の様子をSNSで日々目にしたり、生配信で名前を呼んでもらったりしていると、遠い存在のはずの推しが、とても身近な存在に感じられます。
人間関係の変化による孤独感を癒やしてもらっているうちに…
リモートワークやオンライン授業の増加などによってリアルな人間関係がオンラインにとって変わり、孤独感を抱きやすい人が増えているというのも一因でしょう。
対面でのコミュニケーションが減っていく中で、画面越しのアイドルや配信者はコミュニケーションの温かさを感じさせてくれる稀有な存在になりがちです。
エンタメ業界・夜職のマーケティング戦略

アイドルやホスト、配信者のビジネスモデル自体が「ガチ恋」を生みやすい仕組みになっています。
エンタメを供給する側が多かれ少なかれ意図的にファンにガチ恋させ、お金を落とさせようとしているのは確かでしょう。
例えば「会いに行けるアイドル」などは、ファンと推しとの距離感をとても近いものだと錯覚させることで、ガチ恋を促進するガチ恋ビジネスの典型例です。
また、ホストクラブでは「色恋営業(恋愛感情があるフリをする営業)」「本命営業(本命の彼女である風を装う営業)」「店グル(店全体で疑似恋愛を作り出す営業)」などがあり、ガチ恋させることで大金を使わせるシステムを構築しています。
ファンを本気で恋させることによってお金を落とさせるビジネスモデルは、アイドルやホストクラブだけではなく、さまざまな業界に存在しています。
価値観の変化と恋愛の多様化
近年、「恋愛」の定義や価値観が多様化しています。
かつては二次元やバーチャルなキャラクターに夢中になるのは「オタク」だと蔑まれてきましたが、現在はそうではありません。アニメキャラやVTuberへのガチ恋が一般的に語られるようになったのです。
また、恋愛至上主義が薄まってきたことによって、「恋愛よりも、推しを愛でている方が幸せ」という価値観も広く受け入れられるようになってきました。
推しを彼女・彼氏にしたい…ガチで恋をする心理とは?
推しにガチ恋する心理は人それぞれです。ここではよく見られる心理を解説していきます。
承認欲求が満たされる
推しからのファンサや反応によってアドレナリンが出る人は少なくありません。大勢のファンがいる推しから自分だけが選ばれたという事実により、承認欲求が満たされるのです。
孤独感が癒やされる

現実の人間関係がうまくいかない時でも、推しを見ると精神的な繋がりやときめきを感じられ、孤独感が癒やされる人もいます。
現実を忘れられる
現実のさまざまな問題を忘れて、推しの美しさや可愛さに没頭できる時間を楽しむ人も少なくありません。
ときめきが補充される

推しがときめきを与えてくれたおかげで、毎日が楽しくなり、日々を前向きに過ごせる人もいます。
自分も頑張ろうと思える
推しが頑張っている姿に感化され、自分も頑張ろうと思える人もいます。
また、ファンミーティングなど推しと会える日のために、美容を頑張ってより綺麗な自分になろうとする人も多いのです。
ガチ恋は「イタイ」と思われがちですが、推しにガチで恋をすることで、日々に張り合いが出てきたり、自分も頑張ろうとモチベーションがアップしたりと、ポジティブな影響があることも否定できません。
「ガチ恋おじさん」とは?なぜ嫌われる?

ガチ恋にはプラスの面もあるのですが、「ガチ恋おじさん」は揶揄の対象にされがちです。
「ガチ恋おじさん」とは、若いアイドルや配信者、キャバ嬢などに本気で恋をしてしまい、過剰な言動をとる主に中年以降の男性たちを指すインターネットスラングです。
ガチ恋おじさんの特徴
- 大量のスパチャ(投げ銭)をする
- 握手会やイベントに頻繁に通う
- 推しのSNSに執拗にコメントする
- 推しに(上から目線の)アドバイスをする
- 推しの彼氏疑惑に異常に反応する
- 「俺だけは推しのことを理解している」と思い込む
- 推しに見返りを求める(付き合いたい、感謝されたい)
ガチ恋おじさんが嫌われる原因は、厚かましさ
ガチ恋をしている人は老若男女問わず存在しているのに、なぜ「ガチ恋おじさん」が揶揄の対象になるのでしょうか?
それは、「若いアイドルに上から目線でアドバイスをする」「年齢を考えずに若い子と対等に付き合えると思っている」という厚かましさが、他の属性のファンより顕著に目立つからでしょう。
なぜガチ恋は気持ち悪いと思われるのか?
おじさんに限らず、ガチ恋は気持ち悪いと言われることがあります。なぜ、ガチ恋のイメージは悪いのでしょうか?
ここでは、ガチ恋が気持ち悪いと言われてしまう要因を列挙していきます。
「一方的な思い込み」が強すぎる
基本的に推しとファンは、パラソーシャルな関係になりがちです。
アイドルやアーティストはファンに対して「あなたがいるから今の自分がある」「愛してるよ」等と言いますが、実際にファン一人ひとりを認知し、ファンと同じくらいの愛情を抱いているわけではありません。
また、出役の人が見せている個性は、本当のその人のものではない場合も多いのですが、ガチ恋の人は「あの人のことはわかっている」と思い込みがちです。そのため、推しが不祥事を起こした際、「そんなことを推しがするわけない!」と何も知らないにも関わらず擁護できてしまうのです。
実際には一方通行な想いなのにも関わらず、「推しのことを理解している。だから好きになった」という思い込みが、「現実を認識できていなくて気持ち悪い」と思われてしまう一因なのでしょう。
一線を越えやすい

ガチ恋ファンは、思いが強すぎるあまり、過激な行動をしがちです。
例えば、推しのプライベートを追いかけたり、推しが誰かと対決した際は、対決相手に誹謗中傷をしたりするケースもあります。
独占欲・嫉妬心が強い
ガチ恋ファンは、推しに異性の影がちらつくと攻撃的になり、誹謗中傷をすることもあります。
未成熟に見える
現実の恋愛や人間関係を築けず、架空の関係にのめり込んでいる姿が幼稚だと思う人もいます。
金銭的搾取の対象になりやすい

ホストやアイドル業界では、ガチ恋を利用して高額な投げ銭や課金をさせるビジネスモデルが確立しています。
まとめ。ガチ恋やリアコには良いところも!でも浪費はほどほどに
ガチ恋やリアコの気持ち自体は、決して悪いものではありません。時には、日々の生活に彩りを与え、前向きに生きるための活力になることもあるでしょう。
ただし、恋愛感情を抱かせることによって金銭を落とさせようとするマーケティング戦略が存在することも頭においておく必要があります。あなたの未来のために使えるお金が、マーケティング戦略に踊らされ、吸い取られてしまったら、後悔することにもなりかねません。
大切なはずの将来のためのお金や時間が、戦略に踊らされて消えてしまっては、本末転倒です。
過度な推し活は、あなたの人生の選択肢を狭める一因になります。推しへの想いがどれだけ本気であっても、自分の生活を大切にすることはもっと重要です。
ガチ恋したとしても、推し活は、無理のない範囲の“余剰資金”と“余剰時間”で楽しむくらいがちょうどいいでしょう。それが、自分自身を守りながら、大好きな推しと長く向き合っていくための、ひとつの目安になるはずです。

