推し活とは、自分が応援する対象のアイドルや芸能人、スポーツ選手などの有名人や、作品のキャラクターなど、特定の人や物に熱中し応援する活動のことを指します。対象の情報を収集し、ファンアートを作成したり、イベントに参加したりするなど、さまざまな形で応援や支援を行うことが特徴です。受け身のファンではなく、積極的に応援する姿勢から「推し」という言葉が使われるようになったのです。
今回は、推し活にハマる人の心理や、推し活をするメリット・デメリットについて解説していきます。
推し活が広まった理由とは? 「推し」とファンの距離が近くなった
近年、ソーシャルメディアの普及やオンラインコミュニティの発展により、一般人であるファンが簡単に情報を共有し、「推し」や「推し活仲間」と交流することが可能になりました。
これまで、一方的に「推し」が提供するコンテンツを楽しむだけだったファンたちが、「自分たちが応援していることを伝えられる」環境を手に入れられたのです。「ファンの人気度」で「推し」の立ち位置が変わったり、握手券などの収益のバックが「推し」に直接入ったりなど、「推し」に直接影響を与えられる状況がそろった為、推し活は活発化しているのです。
また、推し活をしている人同士がつながりやすくなったために、推し活でできたコミュニティが盛り上がり、さらに推し活が盛り上がる、という循環もできあがっているようです。
推し活にハマる人の心理とは?
推し活にハマる人々の心理は多岐にわたりますが、一因として以下のような要素が挙げられます。
推し活にハマる人の心理1 感情の共有と絆の形成。フラットな関係が築ける
推し活は、共通の「推し」について情熱を共有できるコミュニティに所属することで、人との絆を深めることができるという点で魅力的です。「推し」について熱く語り合える推し活仲間に出会ったら、ときめきや感動などの感情を言語化し、共有することができます。大切な感情を共有することで、得難い絆が形成されることもあります。学校や部活、職場などでは、学年や社会的地位によって上下関係が発生しがちですが、推し活の現場では、普段の社会的ステイタスは関係なく、フラットな関係を築ける点も魅力です。
推し活にハマる人の心理2 自己アイデンティティの構築。私らしい個性の確立
推し活を通じて、自分の趣味や好みを表現し、アイデンティティを構築することができる点も魅力です。
たとえば、いままでとくに好きなものがなく、なんとなく生きていたAさんがいたとします。Aさんはある日突然、ビジュアル系バンドにハマり、推し活を始めます。そうすると、ビジュアル系っぽいファッションを始めたり、ビジュアル系のバンドに詳しくなってライブに通ったりするようになり、それが「自分らしさ」になっていきます。いままでは何の特徴もなかった自分が、ビジュアル系が好きな自分、として個性が確立されるのです。さらに推し活が活発になれば、推しの応援グッズを作って推し活仲間と共有する、といったこともあるかもしれません。推し活は、アイデンティティの確立や個性の表現手段として機能することもあるのです。
推し活にハマる人の心理3 ストレス解消と癒し。明日への活力を得る
推し活は、日常のストレスや孤独感から解放されるためにも役立ちます。
例えば、2.5次元俳優の推し活をしているBさんという人がいたとします。2.5次元の舞台は、現実ではありえない美しい男性たちが、現実ではありえないキラキラした世界を演じてくれます。Bさんは舞台を観ているときだけは、仕事のストレスを感じずに済むでしょう。舞台を観ることで現実逃避をして癒され、明日を生きる活力を得て、また現実に戻るのです。
推しがいる人の特徴とは?
次に、推し活をしている人によくみられる特徴について見ていきましょう。
推し活をしている人の特徴1 情熱的なサポーター。サポートするのが好き
推し活に熱中する人々は、その対象に強い愛情を示します。彼女たちは、SNSで「推し」の情報を発信するなど、熱心に「推し」をサポートします。自分が「推し」のコンテンツを楽しんで満足するだけではなく、なんとかして「推し」の魅力を広めたいと望みがちです。推し活をしている人は、「応援したい」という気持ちが強い、サポーター能力の高い人なのです。
推し活をしている人の特徴2 共感性とコミュニケーション能力が高い
推し活をしている人のなかには、ひとりで推している人もいますが、多くは、共通の興味や価値観を持つ仲間との交流を楽しんでいます。彼女らは、コミュニティ内でのコミュニケーションや情報共有を通じて、絆を深めるのです。「推しのここがよかったよね」と共感しあうことで、幸せを感じる彼女たちは、共感力とコミュニケーション能力が非常に高いと言えるでしょう。
推し活をしている人の特徴3 創造力と表現力が優れている
推し活をしている人たちは、自分の感情や思いを表現するために、ファンアートやファンフィクションなどの創作活動に熱心に取り組みがちです。彼らは、自己表現や創造性を発揮する場として、推し活を楽しんでいるのです。
推し活をしている人のクリエイティブ能力は、「推しグッズを作る」以外のところでも発揮されます。たとえば、ドキュメンタリー映画『成功したオタク』は、監督(当時学生だった韓国人女性)が推していたアイドルが性犯罪に加担したことをきっかけに作成された作品です。本作品では、推し活をしていた時期の幸せな時期が描かれると同時に、「推し」が犯罪に加担した場合、ファンはどうあるべきなのかをファン同士で語り合う様子が収められています。推し活というと、「推し」のことを無条件に全部受け入れて肯定する活動だとイメージされがちですが、実際の推し活はそうではありません。推しているからこそ、ダメなところはダメだと表明すべきだ、と考える人も存在しているのです。
推し活のメリットとは?
推し活には様々なメリットがあります。
推し活のメリット1 ストレス解消。癒しを得ることができる
推し活は、日常のストレスや孤独感から解放され、心の安定や癒しを求める人々にとって、重要な役割を果たしています。
推し活のメリット2 共感できるコミュニティに所属できる
共通の対象について情熱を抱き、共感できるコミュニティに属することができます。フラットな立場で語り合えることも魅力です。
推し活のメリット3 創造性を発揮できる
推し活は、自分の感情や思いを表現するための場として機能します。たとえば「推し」のイラストを描いたり、ライブレポートを投稿したりすることで、想像力を発揮し、コミュニティの仲間から賞賛を得られる可能性もあるのです。
推し活のメリット4 自分磨きができる。外見も内面も美しさUP
「推し」との接触イベントが発生したら、「推し」に見られても恥ずかしくない自分でいたいと思うようになります。そのため、おしゃれや美容をがんばり、美しくなることができるのです。また、「推し」は内面にも影響を及ぼします。たとえば、これまではポイ捨てなどをしていた人でも、この姿を「推し」に見られたら恥ずかしい、と感じ考えを改める可能性があります。「推し」にふさわしい自分になりたいという気持ちは、自分磨きのモチベーションを飛躍的に高めてくれるのです。
推し活のデメリットとは?
次に押し活のデメリットについてみていきましょう。
推し活のデメリット1 過剰な依存をしてしまい、精神的・金銭的にダメージを負う
推し活に熱中しすぎることで、社会生活に支障を生じる可能性があります。仕事や勉強を後回しにして推し活にお金を使いすぎると、留年したり、借金したり、といった現実的な悪影響が発生するケースもあるのです。近年問題になっているのは、ホストやコンセプト・カフェで「推し」ができた結果、高額なボトルを入れるように促され、仕事をやめて体を売るように誘導される、というケースです。
また、「推し」にガチ恋をしていた場合、熱愛報道が出た際などに、精神的なダメージを負うことになります。過剰な依存をしてしまうと、現実の社会生活に悪影響が出る可能性があるので注意しましょう。
推し活のデメリット2 情報過多により、ストレスやプレッシャーを感じる
推し活は、情報の収集や交流が活発な場であるゆえに、情報過多やコミュニケーションのストレスを引き起こすことがあります。「推し」に関連する情報をすべて追いたいとか、「推し」の出ている全公演に参加したいと考え始めるようになれば、生活のすべてが「推し」を中心に回ることになってしまいます。
さいごに。推し活は楽しい。でも、依存しすぎはハイリスク!
推し活にはストレス解消や癒し、絆の形成など、様々なメリットがあります。「推し」が生きがいになっているという人もいらっしゃるでしょう。推し活をすることで、生きる気力がチャージされて前向きになれたり、創造性を発揮できたりすることは、とてもいいことです。
しかし、依存してしまったら、経済的負担や情報過多によるストレスなどのデメリットも発生します。推しのサイン入りチェキやグッズを買うために散財してしまって、本来行きたかった海外留学の資金がなくなってしまった……と気づいても、後の祭りですから、推し活を楽しむ際は、依存しすぎないように意識しておくことが大切でしょう。