ナンパを断ったら「ブス!」と罵られたり、二回目のデートを断ったら「思わせぶりな態度をするな」とキレられたり…。
男性からの好意や誘いを断った際・振った際に、捨て台詞を吐かれた経験がある女性は多いでしょう。
女性同士の間ではよく「断られた男のダサい捨て台詞」が話題になりがちです。最近では、「筋通しましょうや」で話題になった通称「筋ニキ」が、その典型例として注目を集めました。
なぜ一部の男性は別れ際に嫌味を言ってしまうのでしょうか。
今回は、女性に拒否された男性が捨て台詞を吐いてしまう心理や事例、対処法をご紹介していきます。
「筋ニキ」事件から見える捨て台詞の典型パターン

この男性は気になる女性「ヒナさん」とデートに行った後、相手からの返信がないことに対して、

フェードアウトするなら筋通しましょうや……
というメッセージを送ったことを自身のXアカウントでスクショをつけてポストしました。
このポストは瞬く間にバズり、投稿者はサークル内で「筋ニキ」と呼ばれるようになったと言います。
「筋ニキ」「筋通しましょうや」という独特な言い回しは、その後様々なパロディが生まれるほどのインパクトを与え、「典型的なダサい捨て台詞」として一種のネットミームになり、爆発的に広がったのです。
その後、筋ニキ自身が「このサークルに顔を出すことはもう無かった」と投稿し、ダサい捨て台詞が、時として当人の社会生活に影響を与えることを示唆しています。
ところで、なぜ筋ニキは、「筋通しましょうや」と言ってしまったのでしょうか?
女性から断られた際に「ダサい捨て台詞」を吐く人の心理とは?
女性から断られた男性の心理は大きく分けて5つの面から説明できます。
恋愛経験が足りていないために過剰な期待を抱く
筋ニキのケースで特に顕著なのは、恋愛における過剰な期待感です。
一度や二度の食事やデートに応じたからといって、相手が自分に何らかの義務や責任を負うわけではありません。
しかし恋愛経験が浅い人ほど、以下のような誤解を抱きがちです。
- 笑顔を向けてくれる=自分に好意がある
- デートに応じる=自分に好意がある
- 楽しそうにしていた=自分に好意がある
- 連絡が来ない=説明が必要な状況
これらの思い込みが、現実とのギャップを生み、最終的に捨て台詞につながってしまうのです。
男のプライドが傷ついたので自己正当化したい


男性が女性に断られた際に捨て台詞を吐く最大の要因は、プライドが深く傷ついたためです。
特に筋ニキのケースでは、「自分なりに誠意を示したのに」「デートまでこぎつけたのに」という思いが強く表れています。
筋ニキの「筋を通せ」という発言も、自分の正当性を主張し、相手の非を訴える試みだったと考えられます。
「プライドは守られるべき・女は男をケアするべき」という思い込み
通常、女性が男性をデートに誘い、返信がなかった場合、「私に興味がないのだな」と思うでしょう。残念に思ったとしても、「筋通しましょうや」という逆ギレ対応はしないはずです。
ではなぜ、筋ニキのプライドは深く傷つき、攻撃するようなメッセージを送ってしまったのでしょうか?
それは、日本では社会的に「男性のプライド」は守られるべきだというメッセージが発されているからです。
それゆえ、女性は男性よりも笑顔を求められ、ケア役割を求められます。
こういった価値観を無意識に内面化していると、「女性に断られた」だけであっても、



本来、ニコニコとケアをする役割を担うべき女性がそうしなかった。職務怠慢である!!
という発想になるのです。
相手をコントロールしたい欲求がある


捨て台詞の背景には、相手をコントロールしたいという欲求も潜んでいます。
女性が自分の思い通りにならなかったとき、何らかの形で相手に影響を与えたいと考え、捨て台詞を吐いてしまうのです。
恋愛関係において、相手は自分の所有物でもなければ、自分の期待に応える義務もありません。しかし、悲しいですが、この当たり前のことを理解できていない男性が一定数存在するのが現実です。
男性性の呪縛「トキシック・マスキュリニティ」
男性が捨て台詞を吐く背景には、社会的に期待される「男性らしさ」の影響もあります。
いわゆるトキシック・マスキュリニティ(有害な男性性)の発露の一つの形が、「筋通しましょうや」なのだと言えるでしょう。


よくある男のダサい捨て台詞4タイプ
捨て台詞には様々なパターンがあります。ここではダサい捨て台詞を4つのタイプに分けて紹介していきます。
自分の方が道徳的だと主張する捨て台詞


このタイプは、自分を道徳的に優位な立場に置くことで、相手を攻撃しようとします。
例
- 「筋通しましょうや」(筋ニキ)
- 「人として礼儀がなってない」
- 「社会人としてどうなの?」
- 「最低限のマナーは守ろうよ?」
相手を貶める捨て台詞
これは最もストレートで攻撃的なパターンです。
例
- 「ブスのくせに」
- 「性格悪いよね」
- 「どうせ遊んでるんでしょ」
- 「デブのくせに調子乗んなよ」
被害者ぶる捨て台詞


このタイプは、自分が被害者であることを強調し、相手に罪悪感を植え付けようとします。
例
- 「もう女は信じられない」
- 「時間とお金を無駄にした」
- 「期待させておいて」
- 「裏切られた」
タチの悪い預言者の捨て台詞
これは相手の将来を否定的に予言することで、心理的なダメージを与えようとするパターンです。
例
- 「そんなんじゃ幸せになれない」
- 「きっと後悔する」
- 「いつか分かる時が来る」
- 「そんなことしてると地獄に落ちると思う」


男性の攻撃的な捨て台詞が女性に与える影響


多くの「ダサい捨て台詞」は女子会のネタになる程度です。しかし時には、深刻な影響を与えることもあります。
男性からの捨て台詞を受けた女性の多くが感じるのは、身の安全への不安です。「この人は逆恨みして何かしてこないだろうか」「ストーカー行為に発展しないだろうか」といった恐怖は、女性の日常生活に大きな影響を与えます。
また「被害者ぶるタイプ」の捨て台詞は、女性に「自分が悪いことをしたのではないか」という錯覚を与えます。これは女性の自己肯定感を著しく損なう可能性があります。
男性に捨て台詞を言われた際の対処法
次に、捨て台詞を言われた際の女性側の対処法を見ていきましょう。
毅然とした態度をとる・無視する
捨て台詞を言われても、相手の感情的な言葉に巻き込まれないことが重要です。



あなたの言葉は受け入れられない
とはっきり伝え、それ以上の議論は避けましょう。
議論に参加してしまうと泥沼になってしまう可能性があります。無視をすることがあなたの心の健康を守ることにつながります。罪悪感を感じる必要は全くありません。
証拠を確保する


スクリーンショットやメッセージの保存など、証拠を残しておくことが大切です。
相手男性との境界線を引く
建設的でない会話は早めに打ち切り、SNSなどでブロックすることも躊躇しないでください。
「話し合えば分かり合える」という考えは、このような相手には通用しません。
一人で抱え込まない


一人で抱え込まず、信頼できる友人や家族に相談しましょう。
安全を確保する
相手が同じ学校や職場にいる場合は、必要に応じて第三者に状況を説明し、安全を確保してください。
一人で行動せず、人目のある場所を選ぶことも重要です。
男性がダサい捨て台詞を吐いてしまわないために気をつけるべきこと
次に、ダサい捨て台詞を吐いてしまわないために気をつけることについても確認しましょう。
冷静になる時間を作る


断られた時の怒りや悲しみは自然な感情ですが、それを相手にぶつけるのは適切ではありません。
別れ際に嫌味を言いたくなっても、一度冷静になる時間を作りましょう。
相手の意思を尊重する
断る権利は誰にでもあり、その理由を詳しく説明する義務は相手にはありません。
「なぜダメなのか」を聞きたい気持ちは理解できますが、それは相手の義務ではないことを理解しましょう。
現実的な期待値を設定する
「デート=交際の約束」ではありません。
相手も様々な人と会って判断している可能性があり、その結果自分が選ばれないこともあるという現実を受け入れましょう。
男性にも同じような捨て台詞を吐くか考える


あなたが男性で、女性に断られた際に怒りや恥ずかしさを感じたら、同じ感覚を男性に対しても抱くのか、同じ言葉を男性に対して投げつけるのか、を考えてみてください。
男友達に「もう一回遊ぼう」とLINEした後、返事がなかったからと言って「筋通しましょうや」と言うでしょうか。
「筋ニキ」のような男性を増やさないために、社会全体でできること
筋ニキ事件は、現代の恋愛における男女間のコミュニケーションの課題を浮き彫りにしました。この問題の根本的な解決のためには、以下の点を社会全体で考える必要があります。
健全な人間関係を結ぶための教育を充実させる
恋愛や人間関係について、より現実的で健全な教育が必要です。特に以下の点について、学校教育や家庭教育で取り組むべきでしょう。
- 相手の自由意志を尊重することの大切さ
- 健全な関係性の築き方
- 拒絶された時の適切な対応
- ジェンダーに関する正しい理解
メディアリテラシーを向上させる


SNSの普及により、このような問題が可視化されやすくなった一方で、炎上や個人攻撃につながるリスクも高まっています。
筋ニキは幸いネット上で身バレはしていませんが、身バレをすることでデジタル・タトゥーができてしまう人もいるでしょう。ネットリテラシーの向上は急務です。
男性像を再定義する
有害な「男性らしさ」の概念を見直し、知性や相手への思いやりを重視する新しい男性像を社会全体で育てていく必要もあるでしょう。
筋ニキ事件から得られる「男のダサい捨て台詞」に関する教訓
「断られた男のダサい捨て台詞」は、表面的には個人の資質の問題に見えますが、多くの女性が経験していることであり、社会問題だとも言えるでしょう。
筋ニキの「筋通しましょうや」は、一時的なネットミームとして消費されがちですが、その背景にある問題は決して軽視できません。
女性にケアを求める性別役割や、「拒絶されても黙って引き下がるのは男らしくない」という有害な男性性が失われない限り、今後もダサい捨て台詞はそこかしこで聞かれるはずです。
この事件からの得られる教訓は「恋愛や性別役割に対する間違った思い込みは一刻も早く捨てるべき」だと言えるでしょう。

