(アイキャッチ画像出典:西倉ミトさんX https://twitter.com/n_mito0813)
(画像出典:©2024Maki,NAGAI)
飲み終わったペットボトルのフタってどうしていますか?
エコキャップ運動(※1)でリサイクルに出したり、自治体の資源回収に出したりという人もいるかもしれませんが、ポイッと捨ててしまっている人のほうが多いのでは?
ペットボトルのフタを発射して遊ぶ「ボトルマン(※2)」というおもちゃもありますが、多くの人が捨ててしまうペットボトルのフタを素敵なアート作品に転生させているのが西倉ミトさん。
既に255(4月取材時)以上の作品をSNSで発表しているので、どこかで目にしたことがあるのでは?
今回、西倉ミトさんにボトルキャップアート誕生の裏側やバズったことでの意外な変化など制作秘話を伺いました。
2022年6月にボトルキャップアートが誕生
ハガキサイズの小さな紙にイラストを描いていた西倉さんに転機が訪れたのは、2022年5月末のアートイベント。細密なタッチの作品を見た知り合いからの「もっと小さなものに描いたら面白いのでは?」という言葉がきっかけとのこと。記念すべき第1作はこちら。
(画像出典:西倉ミトさん Instagram https://www.instagram.com/mito0813/)
―ペットボトルのフタ以外の小さなキャンバス候補はあったのでしょうか?
最初に思いついたのは“米粒”でした。写経が描かれたものを見たことがあるからかもしれません。ですが、米粒に何が描けるかを考えたら動物一匹くらいかなと。
私は風景を描くのが好きだったので風景を描くのは難しいと思い、もう少し大きいものを探しました。
―ペットボトルのフタにたどり着くまでは結構時間がかかったのでしょうか?
それが、わりとすぐに見つかりまして(笑)。
イベントの1~2週間後でしょうか、地元のショッピングモールで小学生が作ったペットボトルのキャップで作られたモザイクアートを見かけました。
小さいもの、小さいもの……と常に頭にあったからか、直感的に目に留まり、このサイズならいけるかも!とひらめきました。
―ペットボトルのキャップと運命的な出会いを遂げた後、最初の作品はどれくらいで完成したのですか?
1時間~1時間半くらいで出来上がりました。キャップに描くのは思いつきだったので、まずは何か描いてみようと空想の風景を描きました。昔から海外の街が好きでキャップに描きたいと思ったんです。それまで何度も資料を見ながら描いてきたことがあったからか、自然に思いついたものを鉛筆で下書きして、一気に仕上げました。
―作品をいくつ作ったあたりでボトルキャップアートを続けていけると確信したのでしょうか?
1作目なんです。
完成した1作目を見た瞬間、自分でも「かわいい!」「なんだこれは!?」と衝撃を受けたんです。
今までこんなにちっちゃいフタに細かい風景が描かれているのを見たことがなかったので、これは続けていける!と。
5万弱の“いいね”でバズった後の意外な変化
(画像出典:西倉ミトさんX https://twitter.com/n_mito0813)
2022年8月にキリンの“生茶”のキャップに描いた風景画が、5万近い“いいね”を獲得し、大バスりをしました。他の方からの「何に描かれているかがわからなければ作品の秀逸さが伝わらないから、beforeとafterを並べて見せては」というSNSでの見せ方のアドバイスを反映させた結果だそうです。トレンドになっていたハッシュタグ「# 多分私しかやっていない」をつけたこともバズる手助けとなりました。
―バズったことで何か変化はありましたか?
個人の方からのキャップアートのオーダー制作の依頼が出てきました。
大手企業からのコラボやテレビ出演などで、知名度がちょっとずつ上がってきたことで、キャップ以外の普通のイラストの依頼が増えつつあります。
それと、ペットボトル飲料を購入する際、飲みたいものではなくキャップの色で選ぶようになりました。
今までペットボトルのキャップは集めたりしていなかったので、描くようになってからいろいろな種類が必要になってきまして。
ボトルキャップに絵を描きすぎて……
それまでお水か炭酸水しか飲んでいなかった西倉さん、様々な種類のペットボトル飲料を購入し、ご家族や友人にもお願いし、精力的にボトルキャップアートを作り過ぎた結果……
(画像出典:西倉ミトさんX https://twitter.com/n_mito0813)
―昨年末に首・肩・腕を痛めてしまい整形外科のリハビリに通っていたことをXで告白されていましたが、作品を作り続けていく上でその後工夫されていることはありますか?
意識の持ち方しかないんですが(笑)つい熱中しちゃうんで、ラジオ体操を一日最低でも二回はするようにしています。
作業環境も変えました。それまでは、キャップを机に直置きして見下ろして描いていたのですが、首に負担がかからないように本を積み重ねたりして高さを出して作業台のようなものを作りました。自分の目と作品の距離を近付けて首の角度が傾きすぎないようにしています。
目指すはボトルキャップアート作品の個展
―今後の展望を教えてください。
個展を開いて実物を見ていただきたいです。
実物じゃないと(全部は)伝わらないんです。実物を見た人から「写真と全然違う!本当のすごさが伝わってこない!こんなに細かかったんだ!」と驚かれることが多いんです。
展示をするなら、お客さんが飽きない工夫をしなければと思っています。
風景画を描くにしても、昼間の青空だけではなく朝、夕方、夜と時間帯を変えてみて色味に変化を持たせるとか、季節を変えるとかの四季のうつろいや自然の美しさを表現したいです。
―明治“プロビオヨーグルト”とのコラボ作品がまさにそうですよね。緻密な風景や景色に感動しますが、チョコレートやロールケーキといった食べ物がとにかくかわいい印象です。
(画像出典:西倉ミトさんX https://twitter.com/n_mito0813)
わかりやすいからでしょうか、食べ物系は反応がいいですね。複数個でシリーズ作品にするのもいいですね。例えば食堂シリーズとか。
(画像出典:西倉ミトさん X https://twitter.com/n_mito0813/)
現在はオーダー制作に追われる日々とのことですが、キャップの厚みも生かして薄いものを使って積み重ねる作品など積極的に新たな作品を生み出している西倉さん。
実在の風景を描く際には、資料収集や構図などの構想時間も含めて5~10時間かかるそうです。
SNSで直径3cmに広がる緻密な職人技の世界を堪能すればするほど、早く個展が開催されて実物を間近で鑑賞したいと思う筆者でした。
※1 NPO法人 エコキャップ推進委員会
https://ecocap.or.jp/
※2 ボトルマン(タカラトミー)
https://www.takaratomy.co.jp/products/bottleman/
西倉ミト(ボトルキャップアーティスト)
1995年生まれ。
京都嵯峨芸術大学短期大学部イラストレーション領域卒業後、タオルデザイナーなどを経て作家活動を始める。2022年にペットボトルキャップに絵を描き始める。
公式サイト
https://mito0813.tumblr.com/
X(旧Twitter)
https://twitter.com/n_mito0813
Instagram
https://www.instagram.com/mito0813/