ヤングケアラーが抱える問題とは?実態と支援対策としてできること

ヤングケアラーとは、18歳未満の子どもが、家族の世話を担う状況にあることを指します。まだ若く、本来なら、親の庇護を受けられるはずが、逆に家族を養ったり世話したりしなければならない状況に追い込まれているという社会問題が、ヤングケアラー問題なのです。

ヤングケアラーが親族をケアしなければならない理由は様々です。多いのは、病気や障害、精神的な問題を抱える親や兄弟姉妹、祖父母などのケアです。日本国内では、文部科学省や厚生労働省の調査によると、推定で約20万人以上のヤングケアラーがいるとされています。

しかし、多くのヤングケアラーはその存在が見過ごされがちであるため、この数は実際にはもっと多い可能性があります。家庭内の問題は、外から見ても判明にしにく、また家族やヤングケアラー自身が恥ずかしく感じて隠したりするケースもあるため、支援が届きにくい点も問題となっています。

目次

ヤングケアラーの実態。ヤングケアラーが直面する問題とは

親や兄弟姉妹の面倒を見ている子どもは、「家族思いの子」「しっかりもの」などと美化されやすい傾向にあります。また、女性の場合は、幼いながらに家事を全般引き受けている状況でも、「女の子らしい」として労働としての家事という意識が抜け落ちてしまうケースもあるのです。

美化されたり透明化されたりするヤングケアラー問題ですが、実際のヤングケアラーは数々の困難に直面しています。

ヤングケアラーが直面する問題1 勉強や遊びの時間がない

放課後や休日は家族の世話をしなければならないため、自分の時間がほとんどとれないヤングケアラーも珍しくありません。友だちと遊ぶ時間がとれないために、友だちとの絆が薄くなって、学校で孤立してしまったり、勉強できずに進級できなくなってしまったりするケースもあります。

ヤングケアラーの問題は、若いときだけにとどまりません。家族の世話をしなければならず進学できなかった場合、将来的に不安定雇用や低賃金に甘んじなければならない可能性もあるのです。

ヤングケアラーが直面する問題2 ストレス・孤立感

家族の健康に対する責任感から、ストレスや不安を抱えることが多く、精神的に疲弊してしまうケースもあります。また、家族の問題を他人に言ってはならないという意識から、問題を抱えていることを教師や友だちにも打ち明けることができず、孤立感を深めてしまうケースもあります。

ヤングケアラーが直面する問題3 貧困および貧困に起因する将来への悲観

病気などが原因で親が働けない場合、経済的に苦しい状況に追い込まれることもあります。経済的な負担を考えて進学をあきらめたり、勉強すべき時間も削ってバイトをしなければならなかったりする場合も珍しくありません。周囲の友人たちが進学の準備をしているのに、自分には進学する未来がないかもしれない、という不安に襲われるケースもあります。金銭的な貧しさによって、将来を悲観せざるを得なくなった場合、心に余裕がなくなっていきます。

ヤングケアラーが助けを求めるためにできることとは?

ヤングケアラーが助けを求めるためには、以下のステップを踏むことが有効です。

ヤングケアラーが助けを求めるためにできること1 信頼できる大人に相談する

どこに相談すればいいのかわからない、という場合は、学校の先生やスクールカウンセラー、親しい親族に状況を打ち明け、サポートを求めましょう。

ヤングケアラーが助けを求めるためにできること2 専門機関に連絡する

地域の福祉事務所や児童相談所、NPO団体など、ヤングケアラーを支援する専門機関に連絡し、相談してみましょう。たとえば、こども家庭庁のホームページにアクセスすれば、適切な専門機関を紹介してくれます。

対面は難しいという場合、電話やSNSでも相談に乗ってくれるので、気軽に問い合わせてみましょう。

★こども家庭庁 相談窓口検索
https://kodomoshien.cfa.go.jp/young-carer/consultation/

ヤングケアラーが助けを求めるためにできること3 情報を集める

インターネットや図書館で、ヤングケアラーに関する情報や支援策を調べてみましょう。同じ状況にある人の手記を読んで参考にしたり、必要な支援策にたどり着いたりできる可能性があります。

ヤングケアラーが助けを求めるためにできること4 交流会に参加する

ヤングケアラーは孤立してしまいがちですから、同じような状況にいるヤングケアラーと交流することで、心強さを感じられる場合があります。多くの地域で、ヤングケアラーのためのサポートグループや交流会が開催されていますから、調べてみましょう。

前述の「こども家庭庁」のホームページからも交流会を検索することができます。対面だけではなくオンラインの交流会もありますから、気になった方は調べてみてください。

ヤングケアラー支援の事例

近年、日本国内では、ヤングケアラーを支援するための様々な取り組みが行われています。以下に、一例を紹介していきます。

ヤングケアラー支援の事例1 行政の支援プログラム

一部の自治体では、ヤングケアラーを支援するための専用窓口を設け、相談やケアサポートを提供しています。

たとえば、ヤングケアラーに対するサポートを行っている「子ども・若者支援センター」は様々な都道府県に設置されています。お住まいの地域に利用できるセンターがあるかどうかは、こども家庭庁のホームページにてご確認ください。

★子ども・若者支援地域協議会、子ども・若者総合相談センターの設置状況
https://www.cfa.go.jp/policies/youth/kyougikai-soudancenter

ヤングケアラー支援の事例2 学校でのサポート

近年、学校でもヤングケアラーをサポートしていこうという改革が行われています。ヤングケアラーを特定し、学業面や心理面でのサポートを提供するための体制を整えている学校も増えてきているようです。支援を受けるためには、まずは信頼できる教師やスクールカウンセラーなどに、家庭の状況を打ち明ける必要があります。

ヤングケアラー支援の事例3 NPOの取り組み

複数のNPO団体が、ヤングケアラーに対する支援を行っています。NPO法人は、ヤングケアラーに対するカウンセリングを行うほか、ヤングケアラー同士の交流会などを通じ、社会的孤立を回避する手伝いをしています。お住まいの地域にNPO法人があるかどうかを知りたい方は、前述のこども家庭庁に問い合わせしてみましょう。

ヤングケアラー支援の事例4 オンラインの情報やコミュニティ

ヤングケアラー向けのオンラインコミュニティや情報サイトも増加しています。オンラインのコミュニティは、インターネットを通じて手軽に情報や支援を得ることができるという魅力があります。しかし、ネット上には真偽が不明な情報も溢れていますし、孤立しているヤングケアラーを狙った悪い大人も存在しているので、情報のソースや運営団体を必ず確かめましょう。

さいごに

ヤングケアラーは、家族のケアを担うことで大きな責任と負担を感じることがあります。また、「家族の世話をするのは当然だ」と考えて、自分ひとりで問題を背負いこんでしまうケースもあります。

しかし、子どもは本来、親や社会から守られるべき存在であり、その逆ではありません。適切な支援を受けることができれば、ヤングケアラーたちの生活や学業、経済状況は改善され、より良い未来を築くことができます。

大人としては、ヤングケアラーの存在を理解し、支援の手を差し伸べること、社会に支援を広げることを要請することが大切でしょう。子どもたちが健やかに成長できる環境を整えるために、私たち一人ひとりができることを考えていく必要があります。

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