ミュージシャンのmisonoさんや、ブロガーのはあちゅうさんなど、最近、芸能人や有名人が結婚するさいに、あえて事実婚を選択する事例が増えています。なぜ、彼ら・彼女らは事実婚を選んだのでしょうか?
また、事実婚と法律婚や同棲にはどのような違いがあるのでしょうか?
今回は 事実婚について 検討してみたいと思います。
事実婚って何?法律婚や同棲と何が違うの?
事実婚とは、入籍を伴わない結婚のことです。「それって同棲とどう違うの?」と混乱される方は多いでしょう。ここで、それぞれの定義をおさらいしておきましょう。
事実婚・法律婚・同棲の違いは?
- 法律婚…入籍を伴う結婚
- 同棲…同居しているが、結婚しているという認識はなし
- 事実婚…入籍していないが、お互いが夫婦だという認識を持って同居している
となります。
事実婚にはどういった権利が認められている?
事実婚では、同棲では認められていない権利が多数認められています。
一例を挙げると
・同居・扶助義務
・貞操義務
・婚姻費用分担義務
・離婚時の財産分与
・不当破棄の慰謝料
・養育費を支払う義務・請求する権利
などです。
こういった権利は同棲しているだけでは認められるものではありません。そのため、何かトラブルがあった際に、「同棲しているだけだった」「いや、事実婚をしていた」とお互い主張が食い違うというケースもあります。
そういった際に、争われるのは、「双方に婚姻の意思があったか」「共同生活の実体があり、生計を同じくしていたか」という点です。事実婚を認められやすくしておくためには、結婚式を挙げる・結婚指輪をつける、など「結婚の意思がある」ことを明確にしておく、住民票に未届の妻(夫)と登録しておく、などの措置が有効です。
事実婚のメリット・デメリットってなに?
事実婚には、法律婚と同様に貞操義務(不倫をしたら慰謝料が発生する)や財産分与(離婚時に婚姻期間に築いた財産を等分に分配する)といった法律が適用されます。さらに、苗字変更に伴う面倒な手続きなどは発生しません。ただし、いいことだらけ、というわけではなく、場合によっては、不都合が生じるケースもあります。
ここでは、事実婚を選択するメリットとデメリットについて確認しておきましょう。
事実婚を選択する3つのメリット
・事実婚を選択するメリット1 苗字を変更する必要がない
事実婚を選択する大きなメリットのひとつが、苗字を変更する必要がない、という点です。
現在の日本では、結婚の際に、女性が男性側の苗字に変えることが当たり前だという風潮があります。これは、結婚とは、女性が男性側の家に入ることである、という認識があったからです。こういった風潮に違和感があったり、自分の慣れ親しんできた苗字を変えたくないと感じていたり、苗字変更に伴う手続きが面倒だと感じたりした場合、事実婚を検討する大きなモチベーションになります。
漫画家の水谷さるころさんは、著書『結婚さえできればいいと思っていたけど』(幻冬舎)の中で、一度離婚を経験し、その際生じた苗字変更関連の手続きがとても面倒だったことが、2回目の結婚で事実婚を選択した大きな理由のひとつであることを明らかにしています。
・事実婚を選択するメリット2 別れても戸籍に履歴が残らない
法律婚をした場合、離婚するとなった際に戸籍に履歴が残ることになります。戸籍がどうなろうと気にしない、という人にとってはどうでもいい話ですが、離婚のことを思い出したくもない、何も痕跡を残したくない、他人に離婚したことを知られたくない、という人にとっては、戸籍に何も形跡が残らないことをメリットだと感じるでしょう。
・事実婚を選択するメリット3 面倒な親戚づきあいを避けられる可能性が高い
事実婚は、保証人などは必要ないため、ふたりの意思ですることができます。そのため、親戚づきあいの面倒さなども避けられる可能性が高くなります。
事実婚であっても法律婚と同じように親戚づきあいをするという夫婦もいますが、親戚づきあいを面倒に感じるためにあえて事実婚を選択するという夫婦も少なくないのです。
事実婚を選択する5つのデメリット
・事実婚のデメリット1 配偶者控除が受けられない
事実婚の大きなデメリットのひとつとして、税金関係の優遇措置が受けられないということが挙げられます。法律婚であれば、配偶者控除などの税金の控除を受けることができますが、事実婚では適用されません。
・事実婚のデメリット2 住宅ローンを共有名義にできない
事実婚では、基本的に住宅ローンなどを共有名義にすることができないため、どちらかの単独名義で住宅を購入する必要があります。
・事実婚のデメリット3 子どもが非嫡出子になる
事実婚で子どもが生まれた場合、父親に認知届を出してもらう必要があります。ただし、認知をしても、法律上は非嫡出子という扱いになります。
また、子どもは自動的に母親の苗字になります。子どもに父親の苗字を名乗らせたいという場合や、親権者を父親にしたいという場合には、それぞれ入籍届・親権届を出す必要があります。
こういった手続きを面倒に感じて、事実婚をしていた夫婦であっても、出産を機会に入籍をするというケースもあります。
・事実婚のデメリット4 法定相続人になるためには手続きが必要
法律婚であれば、法定相続人(法律で定められた相続人)は自動的に配偶者になります。しかし、事実婚の場合はそうはなっていません。事実婚のパートナーに財産を相続してほしいと思うならば、公式な遺言書を作成しておく必要があります。
また、「妻(夫)が全財産を相続する」という旨の遺言書が残されている場合であったとしても、配偶者の親族から遺留分(民法で定められた最低限度の財産)を請求される可能性があります。
事実婚のデメリット5 周囲からの理解が得られない・偏見を持たれる
事実婚の夫婦が増えてきているとはいえ、まだまだ保守的な考えを持っている人は存在しています。お互いが納得して選んでいるにも関わらず、「結婚してもらえないの?かわいそう」という目で見られたり、「ちゃんとした結婚をしていない」と言われたりする可能性もあります。
ただ、この点に関しては、今後、変わっていく可能性は多いにあります。
事実婚を選ぶ芸能人や有名人は多い。なぜ事実婚を選んだの?
事実婚を選んだ芸能人・有名人たちは少なくありません。
一例を挙げると、
・萬田久子さん
・misonoさん
・後藤久美子さん
・はあちゅうさん
などです。
事実婚を選んだ理由は様々です。レーシングドライバーのジャン・アレジさんと結婚した後藤久美子さんの場合は、そもそも事実婚の多いヨーロッパでの結婚だった、という点が大きいでしょう。フランスでは法律婚と同じくらいPACS(パックス)という苗字変更を伴わない契約が人気なため、「結婚といえば法律婚」と考える日本とは違い、結婚するときに、どういった結婚の形にするのか、という多様な選択肢が頭に浮かびやすいのでしょう。
また、はあちゅうさんは、「私には法律婚はデメリットの方が多い」として、事実婚を選択しています。はあちゅうさんはフリーランスとして働いているため、取引先が多く、振込先の変更などに多大な時間やお金が必要になってくるというのです。また、はあちゅうさん自身に収入があるため、夫の扶養に入る必要性も感じず、法律婚から得られるメリットが少ないと感じたようです。
結局、事実婚ってアリなの?
結婚の形は時代とともに変化していきます。また、文化によっても「結婚とは何か」に対する価値観は大きく違っています。当たり前のことですが、「これが正しい結婚の形」という普遍的な答えはありません。
周囲の意見に流されず、「自分はこういう風に生きたい」という意思で選んだ結婚なら、どんな形でも、正解にしていけるのではないかと思います。