SNSを見ていて、心がざわつく。誰かの幸せそうな投稿に、理由もなく落ち込む。
あのとき別の選択をしていたら、と過去に引っ張られる。
アラサーは、仕事や恋愛、将来のことなどで、つい他人と比較し、心が揺らぎやすい時期でもあります。孤独や焦りを感じた夜、どのように自分と向き合えば良いのでしょうか。
今回は、「ひとり会議」を提唱する起業家の山口恵理香さんに、お話を伺いました。
他人軸で疲れているとき、心の中で起きていること
———まず伺いたいのが、他人軸で疲れている状態です。山口さんは、どんな心の動きが起きていると捉えていますか?読者が自分で診断できるサインがあれば教えてください。
山口恵理香さん(以下、山口):分かりやすいのは、タラレバ思考になっているときです。
自分の中で、あのときあの選択肢だったら、私にもあんな人生があったのかな、と思ったときは中心軸からボールが外れている感覚になります。
———タラレバ思考、すごく分かります!中心軸からボールが外れている感覚、つまり自分自身を見失っている状態ですね。なぜそうなるのでしょう。
山口:タラレバ思考が出てくるということは、無意識のうちに他人軸の情報が心の中に入っていて、何かの折に自分の人生と比較することによって出てくる思考だと思っています。
———なるほど。比較している自分を責めるより先に、今は比較のスイッチが入っているだけかもしれない、と気づくことが第一歩ですね。
孤独感が強い夜は、消そうとしなくていい

———孤独感が強いとき、つい悪いものとして消したくなります。山口さんは、孤独をどのように扱うのが良いとお考えですか?
山口恵理香さん:自分は孤独だと認めると、意外と楽になります。次の瞬間には、その孤独は決して自分だけではないと気づきます。周りの人も同じように抱えていて、眠れない夜を過ごしているのかもしれないと。
———孤独を否定しないだけで、少し呼吸がしやすくなる感覚、ありそうです。
山口恵理香さん:孤独だと感じる瞬間はたいていひとりかもしれませんが、つらくてしんどいのは、ひとりじゃないのです。
孤独だけど、ではそこからどのような行動をとったら良いのか、気持ちを変えていくことが大切です。自分らしい世界に辿り続ける日々は、決して中途半端な道のりではなく、精一杯に生きている証。諦めなければ、その孤独を理解してくれる人たちとの出会いが待っています。
———孤独を味方にする、というのは、孤独を消すのではなく、孤独を抱えたままでも自分らしい方へ歩くことなんですね。
比較でざわつく夜に効く、ひとり会議の問い

———次に、他人と比べて心がざわつく夜や、ひとりで落ち込む夜に効く問いを教えてください。仕事、恋愛、人間関係など、シーン別にあるとうれしいです。
山口恵理香さん:たとえば、こんな問いです。
- 仕事:どんな働き方が、一番自分らしい?
- 恋愛:私にとって運命の人って、どういう人?
- 人間関係:どんなことがあってもお互いに支え合っていける人
———問いがシンプルなのに、芯に刺さります。仕事の問いは、特にアラサー世代に響きそうです。
山口恵理香さん:私は起業やフリーランスの世界を知ったのは、大学を出てしばらくしてからでした。20代前半から今の準備ができていたらもっと実現できたことがあったかもしれないと思うと、理想の仕事の働き方に旗印は早い段階で立てる必要があると思っています。
———旗印、いい言葉ですね。恋愛の問いについても、もう少し伺いたいです。
山口恵理香さん:恋愛も、自分にとって運命の人はどんな人なのか。追いかける、追いかけないの基準ではなく、お互いが対等に同じ歩幅で生きていく関係になるためには、どんな人が理想なのかを考えていただきたいです。
人間関係も同様で、量ではなく質だと思います。
———焦るときほど、相手や周りを見る目が強くなります。でも、ひとり会議は自分に戻るための作業。問いを立て直すだけで、選択が変わりそうです。
ひとり会議が反省会になってしまう人へ
———ひとり会議をやろうとすると、反省会や自己否定で終わってしまう人も多いです。私も「だからダメなんだ…」というふうになってしまいます。よくある失敗パターンと回避策を教えてください。
山口さん:たとえばノートに、昨日の私よりも今日の私ができたことなどを書き出すと良いですよ。昨日よりどんなことができただろうと探し始めるだけで構いません。昨日の私よりも今日の私ができたこと、というシートがあります。これが一番わかりやすいと思っていて、最初は、昨日よりどんなことができただろうと探しはじめます。
———できたこと探し、良さそうに見えますが、途中で苦しくなる人もいますよね。
山口さん:確かに、ひとり会議と自分のダメなところを探す工程は似ているので、気づいたら、あれもできていない、これもできていないと、自分の弱い部分がたくさん見えてきます。
———あるあるです。そうなったとき、どう立て直せばいいのでしょう。
山口さん:ふと気づいたとき、心の真ん中が少し苦しかったり、脳に酸素が届いていないように感じたりする場合は、一度、書くことをお休みして小休憩を入れます。
ザワザワがとれたらもう一度ひとり会議をして、今度はできていないことはあるけれど、それでも今日の私はこれだけのことができたよね、と小さな光を探す作業に再び戻ります。
———反省会の沼に入ったら、一旦止まる。そして、小さな光を探してみる。ひとり会議は、自分を追い詰めるためではなく、自分を回収するための時間なんですね。
タラレバ思考の夜に、ひとり会議を
ひとり会議は、きれいに答えを出すための時間ではありません。うまくやる必要はありません。思考をきれいにまとめるためではなく、あなたの本音に近づくための練習です。
- タラレバ思考が出たら、比較のスイッチが入っているサイン
- 孤独は消すより、まず孤独だと認める
- 問いを立てて、自分の軸へ戻る
- 反省会になったら休憩して、小さな光探し
眠れない夜ほど、誰かの答えではなく、自分の本音に触れる時間が必要なのかもしれません。

山口恵理香 文筆家・起業家/株式会社atelier ERICA 代表取締役
1990年東京都生まれ。中学で不登校に。フリースクール、大学を経て、経験ゼロからWebライターに。2019年『不登校だった私が売れっ子Webライターになれた仕事術』(自由国民社刊)出版。直後に父が病に伏せ、逝去。死別うつを乗り越える。2020年「書くことは、生きること」をコンセプトに「おひとりさま会議用紙」など文房具ブランド「Self0」を立ち上げ。2022年『あなたらしく生きるためのひとり会議ノート』(徳間書店刊)を出版。2023年には 株式会社atelier ERICAを設立し、起業家として本格的に活動する。2025年『書くだけで 心がととのう ひとり会議ワークブック』(ディスカヴァー・トゥエンティワン刊)を出版し、現在は7刷・3万部を突破。Wellfyにアラサー女性を応援するコラムを寄稿。

