国税庁による令和4年の民間給与実態統計調査によると、女性の平均年間給与は314万円であり、男性の平均563万円を大きく下回っています。
日本は先進国のなかでは飛びぬけて男女の賃金格差が大きく、女性が高収入を得にくい構造の国です。そのため、シングルマザーの貧困率もOECDでは突出して高く、実に半数以上のシングルマザーが貧困ライン以下の収入しか得られていません。
また、日本全体では、ここ30年で平均年収が横這い状態であるにも関わらず、物価高や社会保険料、消費税の負担増加などの要因によって、実質給与は下がっている現状があります。さらには、非正規雇用が増えたことにより、低賃金、不安定な雇用も増加しています。
こういった過酷な現実を生き抜くために、私たちがとれる対策のひとつが貯金です。
「給与が低いので貯金なんてできない」と考えるのは早計です。給与が低くても、貯金することは可能ですし、貯金がある程度溜まれば、投資を行い、資産を増やすこともできるのです。
20代という若い時期から貯金や投資を意識しておくことで、きたるべき30代、40代に金銭的、精神的余裕をもって迎えることができるのです。
今回は、20代から意識しておきたい貯金のコツをご紹介します。
ステップ1:貯金のメリットを確認する。貯金は幸福度を上げる
まずは貯金をするメリットを確認しておきましょう。
「20代の体力のあるうちは、貯金なんてせずに海外旅行を楽しみたい」という人もいるでしょう。
それはそれでひとつの考え方ではあります。ですが、貯金には、万人が得られる大きなメリットがあるのです。
貯金をすることの最大のメリット、それは、「自分の人生をコントロールする感覚が得られること」です。
アメリカの心理学者アンガス・キャンベルは、人間が幸福を感じる条件はなにかを調査しました。
調査の結果導き出されたのは、「人間に幸福感をもたらす最大の要因は、人生を自分でコントロールしているという感覚」だったと言います。
貯金は、この自分が人生をコントロールしているという感覚を与えてくれるのです。
世の中は不条理であり、全てが思うようにいくわけではありません。失恋や愛する人との死別、天災は、避けようと思って避けることはできません。ですが、貯金は自分の意思でできます。
勤めている会社から意に沿わない移動を命じられたとき、貯金があれば、退職という道を選ぶことができます。ですが、お金がなければ毎日不満を抱きながら働き続けなければならないでしょう。
貯金があれば、人生の大切なタイミングで、自分の思うような道を選ぶことができるのです。
つまり、貯金があることで、人生に満足感や幸福感を得られる可能性が高いということです。
ステップ2:お金意外の方法で幸せになる方法を見つける
貯金をする、と決めたなら、ふたつの方法を考える必要があります。
ひとつは収入を増やす、もうひとつは支出を減らすことです。
まずは支出を減らすことから考えてみましょう。
できる限りお金を使わずに生活すれば、貯金は可能になります。お金をあまり使わずに幸せになれる方法を見つけましょう。
近年、サウナブームが訪れたのは、平均賃金が実質的に低下していくなかで、あまりお金をかけない遊びを老若男女が求めた結果でしょう。
お金をかけなくても楽しめる趣味はたくさんあります。お金をなるべくかけずに楽しもうと工夫することで、よりクリエイティブな遊びが見つかる可能性もあるのです。
いくら高収入でも、クラッシックカーの改造や、高級時計の収集を趣味にしている人は、貯金が難しいのが現実です。(高級時計を投機目的で買い、収入を増やすことは可能ですが。)
まずは、浪費する以外の方法で幸せになる方法を見つけてみましょう。
ステップ3:先取り貯金を行う
毎月貯金する金額を決めましょう。
余裕がない場合は5千円からでもいいので、無理のない範囲で初めてみてください。「余ったお金を貯金しよう」と考えていては、いつまでたっても貯金はできません。
給与が入ったらまずは貯金分を別の銀行口座に移すとか、逆に使うぶんだけ引き出して一カ月は引き出した分だけで生活するのが合理的です。
ステップ4:お金を持っていることをアピールしない。エゴを手放せばお金は貯まる
昇進や転職で収入がアップしたら、お金を使いたくなるのが人情です。自分へのご褒美にブランド物のバッグを買ったり、車や時計を買ったりしたくなるかもしれません。
ですが、ブランド品などを買いたくなったら、一度立ち止まって考えてみてください。
あなたが本当に欲しいものはなんなのでしょうか?
ブランド品を身に着けることで、友人や周囲の人から、成功者だとうらやましがられたり、尊敬されたりしたいのでしょうか? もしあなたが尊敬や尊重、憧れのまなざしを得たいのなら、覚えておかなければならいことがあります。
それは、高級ブランドを買っているという理由であなたを尊敬する人は「高級ブランドを変えるというだけで他人を尊敬する人」しかいないのです。
お金を持っていることをアピールしても、満たされるのはエゴだけ。そんなもののために、貯金という「自由のための切符」を売り渡してしまっていいのでしょうか?
他人の目を気にしなければ、買い物への欲望を抑えることができ、欲望を抑えることができれば、自由が手に入るのです。
ステップ5:自分に投資する。「語学の勉強だけ」はハイリスク
20代は、まだ若く、未来に様々な可能性が待ち受けています。いまは収入が低くても、将来的に高収入が得られる可能性があるのです。挑戦してみたい分野があるのなら、学校に入りなおすなどして学びなおしをするのもよいでしょう。
ただし、語学の学習については注意するべきです。私の知人の日本人に、夫の関係でアメリカに移住し、収入が3倍になった人がいます。平均収入が高い国に移住すれば、英語が話せることでそういった恩恵もあるでしょう。
ですが、「英語ができたら高収入な仕事が手に入る」というのは端的に間違いです。
英語がペラペラでも非正規で、収入が低い人はたくさんいます。「語学ができる=高収入」という思い込みに囚われ、語学の勉強に時間やお金を投資しすぎると、リターンの少なさにがっかりする可能性もあります。
20代のうちに何を学ぶのかによって、生涯年収は変わってきます。
もちろん、語学を学ぶことで世界は広がりますから、無駄だということではまったくありません。自分への投資が「語学を学ぶことのみ」は危険だと言う話です。
ステップ6:長期的な分散投資を行う
投資にはリスクがつきものです。ですから、投資先はなるべく分散しておくことをおすすめします。また、長期的な投資を行うことも大切です。
「投資における最大の武器は、時間である」という言葉もあります。
つまり、20代の若いうちに複数の企業の株を買うなどして分散して投資を行い、長期間保持することで投資がプラスになる可能性が高いということです。
「何に投資すればいいのかわからない」という場合は、好きな企業の株から少額で初めてみるとよいでしょう。「好きな企業だからといって株を購入するのはあまりのも感情的であり、合理的ではない」と考えるかもしれませんが、「好きな企業の株を買う」ことで投資が成功する確立が上がる理由は存在します。
それは、人には好きな企業を応援したいという気持ちがあるため、少し株価が下がったところですぐに売りたいとは思わないからです。結果的に長期的に株を保持することになり、それゆえに、リターンを得られる確率がアップするのです。
さいごに。20代で知っておきたい「貯蓄ができ、幸せに生きるコツ」
お金を稼ぐことは楽しいことですし、貯金が目に見えて増えていくもの充実感があるでしょう。
ですが、忘れてはいけないことは、お金は手段であり目的ではないということです。
いくら高収入を得られていても、「もっと上がいる」「あの車を買いたいのに買えない」などと強欲になってしまえば、いつまでも満たされません。
満たされた幸せな生活を送りたいなら、自分のエゴを自覚する必要があります。「人から幸せそうだと思われたい」「人に勝ちたい」……そういったエゴは、貯金と幸福度を減らす原因になると20代のうちから理解することができれば、貯金をすることは難しくないはずです。