文章を正確に読み取り、内容を理解する力「読解力」。いまは、インターネットやSNSなどでさまざま情報が氾濫し、真偽を見極める力や、必要な情報を正しく取捨選択するスキルが求められる時代です。こういう時代だからこそ、読解力はただのスキルではなく、人生を豊かにする「武器」と言えるでしょう。
しかし、便利な情報社会の中では読解力をほっておくと、思考力や判断力が低下してしまうこともあります。情報過多な現代だからこそ鍛えることが大事なのです。
この記事では、「読解力を鍛えるにはどうすれば良い?」と思っている方に向けて、「今すぐ実践できる読解力を鍛える方法」をご紹介します。
そもそも読解力とは?
読解力とは、「文章を読んでその内容を正確に理解し、解釈する力」を指します。ただ文字を追うだけではなく、文章から登場人物の感情や筆者の意図を読み取る能力も含まれます。
「行間を読む」という表現があるように、文章には直接書かれていない情報や筆者の考えが隠されていることがあります。読解力が高い人は、使われた言葉のニュアンスや文脈を手がかりに、書かれていない部分を推測し、より深い理解につなげることができます。
また、読解力は文章に限らず、日常生活や仕事でも重要なスキルです。相手の言葉や状況を的確に把握し、意図を汲み取る力として、円滑なコミュニケーションや正確な意思疎通を助けます。
読解力が低下している原因・理由とは?
昨今、国民全体の読解力が低下している、と言われることがあります。読解力を鍛える前に、読解力が低下している原因について見ていきましょう。
読書など活字メディアを読む習慣の衰退
本や新聞などの活字メディアを読む習慣が減少し、それに伴って深く読み込む力が弱まっていることも原因です。
昨今は、オーディオブックやポッドキャストなどを使って、耳で読書をする人も増えてきており、耳で聞くのは問題なくできるけれど活字を読むのが苦手、という人も出てきています。活字を読むことで得られる深い理解力や集中力が衰え、情報を咀嚼する力が低下しているのかもしれません。
SNSの普及により、長文を読む機会が減っている
現代は、スマホやタブレットなどで手軽にSNSにアクセスできる時代です。そのため、文章を読む機会は増えています。
しかし、その多くは短く手軽に読める文章や、PV狙いの誇張した表現などであり、良質かつ長文に触れる機会は少なくなっています。時間をかけて読む必要のある長文や、美文に触れる機会が減少したことが、読解力低下の一因となっていることは明らかでしょう。
コスパ・タイパ重視社会に現れた「読解力不要のコンテンツ」
じっくりと味わう小説や詩など、じっくり味わう必要がある文章に触れる人が減っている要因の一つに、コスパ(コスト・パフォーマンス)やタイパ(タイム・パフォーマンス)を重視する傾向が関係しています。
TikTok(ティックトック)やショート動画など、短時間で楽しめるコンテンツが増えた今、長時間集中する必要のある娯楽が選ばれにくくなっています。その結果、集中しなくても手軽に楽しめる読解力の必要ないコンテンツが溢れているため、読解力を鍛える機会が減少しているのです。
語彙力の低下が文章を理解する能力の低下に繋がっている
語彙力の低下も読解力の低下に影響を及ぼしています。新しい言葉や複雑な表現に対する理解力が低下すると、文章全体を正確に把握することが難しくなります。語彙の幅が狭いと、文章を読む際のハードルが高くなり、結果的に文章から得られる情報が制限されてしまうのです。
以上の要因が複合的に影響し、読解力の低下を引き起こしていると考えられるでしょう。
読解力がない人の特徴・文章を理解する力が弱いことに伴うデメリット
ところで、読解力がないと、どのようなデメリットがあるのでしょうか?ここでは、読解力がない人の主な特徴と、それに伴うデメリットを詳しく見ていきましょう。
文脈を理解することができず、誤読してしまう
読解力がない人は、文章の前後関係や背景を適切に理解することが難しくなり、著者の意図を正しく捉えられない傾向があります。それゆえ、文章の一部だけに着目して、勘違いしてしまい、誤読してしまうことも多いのです。
たとえば、LINEのメッセージや仕事のメール、報告書などで意図を読み解くことができず、誤った対応を取ってしまうこともあります。
複雑な文章を理解することができず、学力に影響が出る
読解力が低いと、長文や複雑な構造の文章を読み解くことが難しくなります。
たとえば、学術論文などを読むのが難しいだけではなく、現代文の長文読解なども困難な場合があります。その場合、読解力がないばかりに、学校の成績が低くなってしまう可能性があります。
語彙力が乏しく、伝えたいことが伝えられない
読解力がない人は、語彙力も乏しい傾向があります。それゆえ、自分の伝えたいことをピッタリくる言葉で伝えられない人も多いのです。
たとえば、とても感動する映画を観て、それを友人に伝えようとした時、「やばかった」など単調な表現しかできず、フラストレーションを感じることもあるでしょう。
情報を取捨選択できず、フェイクニュースに騙されがち
読解力がない人の多くは、内容の真偽や信憑性を見極める力が弱い傾向があります。その結果、SNSやニュースサイトで流れるフェイクニュースや陰謀論を鵜呑みにしてしまうリスクが高まります。情報過多の現代社会では、読解力の不足が思考力や判断力の低下につながることも大きなデメリットです。
エコーチェンバーに陥り、偏った価値観や情報を「一般的なもの」と誤解する
読解力が低い人は、自分の理解できる範囲の情報に触れることを好みます。それゆえ、さまざまなソースから情報を得ようとしたり、多様な価値観に触れたりすることを好まず、エコーチェンバーに陥りやすいのです。
読解力がない人は、多様なソースに触れ、理解する能力が低いため、「自分の触れている世界が偏っている可能性」に思い至れない可能性も高いのです。
読解力を鍛えることで得られるメリット
次に、読解力が高まることで得られるメリットについて確認しておきましょう。
人とのコミュニケーションがスムーズにいく
相手の意図を正確に理解する力がつくことで、メールやLINEなどの文章で誤解が生じにくくなります。
読解力が低いと相手の言葉を勘違いし、トラブルの原因になることもありますが、読解力が高い人は誤解することが少なくなるため、そういったトラブルを最小限に抑えられるのです。
結果として、信頼関係を築きやすくなり、コミュニケーションが円滑に進むでしょう。
間違った情報に踊らされない
昨今、インターネットの広がりにより、毎日簡単に情報にアクセスできる環境が整っています。一説では、現代人が一日に受け取る情報量は、江戸時代の人々が一年間で得ていた情報量に匹敵すると言われています。
しかし当然、私たちが日々触れている情報は玉石混交で、正確なものだけでなく、誤った情報や悪意を含むものも多く含まれています。そのため、情報を批判的に見て、取捨選択する能力をつけなければ、間違った情報に踊らされてしまうことになります。
読解力を鍛えることで、情報の真偽を見抜く能力が養われ、間違った情報に振り回されるリスクを軽減し、悪意をもってゆがめられた情報を見抜けるようになります。
読解力を鍛えると楽しめるコンテンツが増える
世の中にはたくさんの面白い本や文章が溢れていますが、読解力が低く、文章を読み解くことができなければ、そういった面白いコンテンツを楽しむことができません。
読解力を鍛えれば、まるで第二言語を習得したかのように、触れられる情報の幅がぐっと広がります。
これまでは難解で理解できなかった本も、面白いと感じながら読めるようになる可能性もあるでしょう。
読解力を鍛える方法!文章理解力が武器になる
次に、読解力を鍛えるための具体的な方法についてみていきましょう。
文章を読んで要約するトレーニングで鍛える
本や文章を読んで要約することは、読解力を鍛えるために効果的な方法です。
要約は文章力、語彙力を高めるのにも役立ちます。理解できているつもりでも、要約することで、「わかっていなかった」と感じ、再読する必要がでてくるかもしれません。要約前提で本を読む場合、要約のポイントとなる部分に付箋をつけて読むとスムーズに進めることができます。この本で大切な点はどこか、を常に意識しながら読むことになるので、自然と読解力を鍛えることができます。
要約したあとは、声に出して文章を読んでみましょう。声に出して読むことで、自分の文章のなめらかでない点に気が付くはずです。ひっかかったポイントを書き直し、読みやすい文章に整える工夫してみてください。このように、読み手だけではなく、書き手になることで、読解力はぐんとアップします。
情報のソースを確認することで鍛える
情報が溢れている現代だからこそ、情報のソースを確認することが大切です。とくに、医療情報など、命に係わる情報は、必ずソースを確認し、鵜呑みにしないようにしましょう。二次的な情報ではなく、必ず原典に当たるようにしてください。
情報を発信している人が誰で、どういった立場の人かも確認しましょう。また、自分が得ている情報のソースが偏っているという自覚がある方は、幅広い情報ソースに触れるように意識することが大切です。
同じ情報でも、発信元によって表現や切り取り方は大きく異なります。ひとつの事件が発生した際に、それぞれの媒体でどのように発信されているのか、を比較してみると、発信者の意図や立ち位置が見えてきます。
誤読する可能性を念頭に置くことで鍛える
生まれてから死ぬまでに一度も文章を誤読しなかった人は存在しません。誰しもが自分のフィルターを通して文章を読みますから、誤読は頻繁に起こることなのです。大切なことは、人は誤読する生き物だと認識しておくことです。
「自分はこう理解した。しかし、それは誤読かもしれない。著者の意図は別にあるかもしれない」。
批判的に読む習慣をつけることで鍛える
批判的に読む練習をしましょう。読解力とは、著者が差し出した文章を単に受け入れる能力のことではありません。先ほど、情報のソースを確認する必要性について述べましたが、だからといって、「このサイトにのっているから」「この人が書いているから」と妄信するのは危険です。「この業界の権威がこう書いているから正しい」と思い込むのは、単なる権威主義でしょう。
読解力とは、文章を批判的に読む力でもあります。「この人はこう書いているけれど、私はそうは思わない。なぜなら……」と考えることで、思考力は深まります。
読解力に欠かせない語彙力を鍛える
読解力に欠かせないのは語彙力です。様々な文章に触れ、語彙力を鍛えましょう。
★語彙力を鍛える方法については、以下の記事で解説しています。ぜひ、チェックしてみてくださいね。
さいごに。読解力を鍛えると世界が広がる
読解力が高まると、アクセスできるコンテンツの幅がぐっと広がり、それに伴って世界が広がります。
まずは、書籍に親しむことから始めてみましょう。ただし、単に本を読み、鵜呑みにするだけでは、いくら量を増やしたところで、読解力は高まりません。同じようなジャンルの本を読み続けることで思考が偏り、かえって世界が狭くなってしまう可能性もあるでしょう。
大切なのは、批判的な読み方をすることです。批判的な読書体験は、著者から与えられた情報を受け取るだけではなく、自らが頭を使って「参加する読書」になります。受動的な読書から能動的な読書に変わることで、読書体験それ自体も、よりエキサイティングなものになるはずです。