「タイパ(タイムパフォーマンス)」を意識することは、忙しい現代人にとって必要不可欠になりつつあります。しかし、効率を求めすぎるあまり、思わぬデメリットが生じることもあるでしょう。
デメリットとして、創造力の低下や忍耐力の欠如、人間関係の希薄化などが挙げられます。
今回は、タイパ重視がもたらす影響を考察し、上手に活用するためのポイントを紹介します。
「タイパが良い」って、どういう意味?コスパとの違い

タイパという言葉が流行る前からコスパという言葉が広く浸透していました。
コスパとは、コストパフォーマンスの略で、かけたコストに対して、どれだけのメリットが得られるか、を表した言葉です。
例えば、リーズナブルな値段で買ったバッグが、毎日使うヘビロテバッグになったら「コスパが良い」と言えますし、反対に高価なバッグを一回しか使う場面がなく不満に感じたら「コスパが悪い」となります。
タイパとは、コスパの中でも特に“時間のコスト”に注目した言葉です。
「タイパが良い」とは、時間の使い方が効率的であり、最大限の成果を得られる状態を指します。
例えば、15分の短編映画で感動して泣けたら「タイパがいい」となり、3時間の映画で少しも心を動かされなければ「タイパが悪い」となります。
近年、動画配信サービスなどの充実に伴い、長時間の動画コンテンツは「タイパが悪い」可能性があることから、敬遠されつつあります。逆に、短い時間でサクッと楽しめて泣けたり笑えたりする「タイパの良い」ショート動画を好む人が増え、ニーズが高まっているようです。
若者世代を重心に、タイパが重視されるようになった背景

時代とともに新しい価値観は生まれます。
タイパが求められる背景には、情報量の増加が影響していることは明らかでしょう。SNSでは絶え間なく動画が流れてきますから、効率よく受け取るために取捨選択する必要があり、それゆえに「タイパの良いものを選びたい」と思うのは、自然な流れです。
また、友達付き合いなどにも「タイパが良い・悪い」という概念を使うことができます。
例えば、友達と楽しい時間を過ごしたら、「タイパがいい」となり、友達と遊んだけれど全く楽しくなかった場合、「タイパが悪いからもうあの友達とは遊ぶのをやめよう」と考えることもできるのです。
意外な落とし穴も?タイパを重視するデメリット
現代人は忙しいですから、時間を大切にすることは重要なことでしょう。しかし、過度なタイパ志向には注意が必要です。
効率を優先しすぎると、深い理解や経験を得る機会を損失するリスクなどデメリットがあります。
ここでは、タイパを優先し過ぎることによるデメリットについて見ていきましょう。
最もわかりやすいデメリットは忍耐力の欠如

待つことや辛抱することを避けるようになり、忍耐力が低下する可能性もあります。
例えば、コツコツ学んでスキルを習得することが難しくなったり、困難に直面した際の対処力が弱くなったりするかもしれません。また、長期的な目標を持って努力することが難しくなり、目先の成果を優先する傾向が強まる恐れもあります。
過程を楽しめない・体験の機会を失う
例えば、編み物を始めてみたいと思ったとします。最初は小さなハンカチを完成させるのに一週間かかったけれど、修練を積んだ一年後には、オリジナルのデザインのハンカチを三日で完成させられるまでスキルアップするかもしれません。
ですが、タイパの意識が強過ぎると、一枚のハンカチを完成させる前に投げ出してしまうかもしれません。
諦めずに編み物を続けることで、素敵な作品を生み出せたり、他の趣味仲間とのつながりができたり、または編み物作家として人気になったりする可能性もあるのですが、タイパを意識し過ぎるとそういったあらゆる体験の機会を失ってしまいかねません。
創造性や思考力が低下する

タイパを優先し過ぎると、効率を重視するあまり、自分でゼロから考える力が低下する可能性があります。
例えば、レシピを見ながら料理することに慣れてしまい、食材の組み合わせを自分で考える力が弱くなったり、仕事でテンプレされた資料ばかりを使うことで、自分なりの工夫をする機会が減ったりすることが考えられます。
常に最短ルートを選び、情報を要約ばかり受け取る行動パターンに慣れてしまうと、じっくり考える力や創造力が養われにくくなります。
人間関係が希薄になる

タイパを意識し過ぎると「自分にとってメリットがある人間」とだけ付き合うことになりがちです。効率的な人付き合いを重視しすぎると、深い人間関係を築く機会を失うこともあるでしょう。
また、時間を無駄にしないために短いやり取りばかりを求めると、相手との信頼関係が築きにくくなる可能性があります。
本当に大切なことを見失う本末転倒
タイパを追求しすぎると、本来の目的が曖昧になってしまいがちです。
「効率的に情報収集しよう」とするあまり、深く考える時間を削減し、結果として理解が浅くなる可能性もあるのです。
逆に精神的に疲労してしまう
「時間を無駄にしてはいけない」というプレッシャーを感じ、常に効率を意識し続けることで疲労が蓄積しやすくなります。
深みや豊かさが失われ、文化の衰退を招く恐れも

タイパを意識し、ネタバレ動画、倍速視聴、要約サイトなどを利用すると、作品を作る側のクリエイターにも影響が及びます。
例えば、映画やドラマの要約が簡単に視聴できることで、細かい演出や脚本の妙が見過ごされやすくなるでしょう。クリエイターがニーズに対応しようと、倍速視聴に適した映像作品を作るようになれば、映像作品の質が低下してしまうでしょう。
また、短時間で消費されるコンテンツばかりが求められることで、映画など長尺のコンテンツが作られにくくなり、文化の多様性が失われる恐れもあります。
本の要約サービスが普及した結果、原作の持つ深みや文体の魅力を味わう機会が減ることも考えられるでしょう。
視聴者や消費者が、「タイパが良いものを!」と求めることで、結果的に提供される作品は短時間で刺激を得られる手軽なものばかりになり、コンテンツ全体の多様性がなくなり、質が低下していく恐れもあるのです。
デメリットばかりではない!タイパを意識するメリット
ここまでタイパを重視するデメリットについて述べてきましたが、もちろん、タイパを適度に意識することで得られるメリットもたくさんあります。
- 自分にとって優先順位が高いものに時間をかけられる
- 決断力が磨かれる
- すぐに満足感を得られる
- ストレス軽減(待つ時間が減る、自分の時間を確保できる)
- 仕事や家事の効率が上がる
- 学習やスキル習得において、効果的な方法を選べる
大切なのは、タイパを無視することではなく、タイパを取り入れるべきところとそうでないところの取捨選択をすることなのです。
デメリットになってない?タイパ疲れ度チェック
タイパを重視しすぎて、逆に疲れていませんか?
最後に、あなたが「タイパを意識し過ぎているか否か」を確認するチェックリストをご用意しました。以下の項目でいくつ当てはまるか、チェックしてみましょう。
- 視聴したコンテンツがつまらなかった時、必要以上に後悔する
- 「時間を無駄にした」とイライラしやすい
- 食事中もショート動画や要約サイトを見ている
- 友人との約束を、移動時間を理由に断ることが増えた
- タイパを重視しているのに満足感を得られていない
- 気がつくと、本来やるべきことが後回しになっている
- 休む時間が減り、常に何かをしていないと不安を感じる
3つ以上当てはまっているなら、「タイパ疲れ度」はある程度高いと言えます。4個以上当てはまる人は要注意です。
タイパに支配され過ぎているという自覚をもち、タイパから自由になる方法を考えてみましょう。
メリット・デメリットを吟味し、心地よい時間との付き合い方を探ろう
タイパを意識することは、時間を有効活用するうえで理にかなった考え方です。しかし、タイパ重視が行き過ぎると、逆に損をしてしまうこともあるでしょう。
大切なのは、タイパを意識するべき時間と、そうでない時間の取捨選択をすることです。
たまには時間を忘れて、何かに没入する時間を作ることも大切でしょう。効率だけにとらわれず、ゆっくりと過ごすことで、新たな発見が生まれるかもしれません。
人によって最適な時間の使い方は異なります。試行錯誤しながら、「自分にとって心地よい時間との付き合い方」を探っていきましょう。

