【マンスプレッディング】電車で足を広げて座る男性心理と対処法

電車で足を広げて座席を占有する迷惑行為は、ネットなどでたびたび話題になります。特に、電車やバスといった公共交通機関で足を広げて座るのは、ほとんどが男性です。

なぜ、一部の男性は他者の迷惑を顧みず、公共の場所で足を広げるのでしょうか?

その背景には、足を広げて座る男性心理が関係しているのかもしれません。

本記事では、電車やバスなどで見られる足を広げて座る男性心理や、マンスプレッディング被害に関するアンケート結果、そしてその対処法・対策について解説していきます。

同じような電車・駅での迷惑行為「ぶつかりおじさん事件」については、以下の記事で解説しています。

目次

「マンスプレッディング」とは?電車で足を広げて座る男性心理

「マンスプレッディング」とは?

電車で足を広げて座る行為は、「マンスプレッディング」と呼ばれています。

「マンスプレッディング」とは

この言葉は、男性を表す「Man」と、広げる行為を表す「Spreading」を掛け合わせた造語で、公共交通機関などで男性が足を広げて座る行為を指します。

マンスプレッディングは、他の乗客のスペースを奪う迷惑行為であり、批判の対象となることが多い行動です。

電車で足を広げて座る男性心理・理由

満員電車が常態化している通勤時間帯などにマンスプレッディングをすることは、他者の迷惑になることは明らかです。それにもかかわらず、こうした行動を取る男性がいなくならないのはなぜでしょうか?

「男性は骨格の構造上、足を広げたほうが楽」と主張する人もいますが、実際、女性であっても足を広げたほうが楽なのは同じです。足を広げて座ったほうが楽だと思いつつ、女性が足を閉じているのは、そこが公共の場所であり、自分だけがやりたい放題にふるまっていいわけではない、という社会性があるからです。公共の場では社会的なルールを守り、足を閉じる配慮をしています。

女性は周囲の環境に応じて足を閉じていられるのに、なぜ一部の男性は頑なに足を広げて座り続けるのでしょうか?

それは、「有害な男らしさ」が関係していると言われています。

電車で足を広げて座る男性心理につながる、有害な男らしさとは?

「有害な男らしさ(Toxic Masculinity)」とは

「有害な男らしさ」(Toxic Masculinity)とは、「伝統的」な男性性を過度に強調しようとするあまり、他者に対して横暴に、支配的にふるまってしまう態度を指します。

近年、「有害な男らしさ」を指摘するための言葉が多数現れています。そのひとつが、「マンスプレイニング」(Mansplaining)です。

「マンスプレイニング」(Mansplaining)とは、男性を表すManと、説明を意味するExplainを掛け合わせた造語です。マンスプレイニングとは、男性が、女性が自分より無知だという前提に立ち、上から目線で「説明してあげる」態度を指します。

この言葉は、作家で歴史家のレベッカ・ソルニットがコラムに書いたことで広く世間に認知されるようになりました。

レベッカ・ソルニットはある集まりで、男性から「この分野に関する重要な文献があるんだけど……」ととうとうと語り始められた経験があったそうです。

実はその文献はレベッカ・ソルニットが書いたものでしたが、男性はそれにきづかず、説明を続けました。

問題は、こういった経験はレベッカ・ソルニットにとって初めてのことではなかった、という点です。専門家のレベッカ・ソルニットに対して、「教えてあげる」態度を崩さない男性の多さを指摘する言葉として、「マンスプレイニング」は最適な言葉だったのです。

「マンスプレッディング」も「マンスプレイニング」と同様に「有害な男性性」の一例とされています。

「マンスプレッディング」をする男性は、幼少期から「男性は強く、大きく、支配的であればあるほどいい」と刷り込まれています。それゆえ、「自分を大きく見せるための威嚇行動」として、電車の中で足を広げているのです。

その威嚇はいまや賞賛されるものではなく、「気持ち悪い」「邪魔」「社会性がない」とみなされているのですが、幼少期からの刷り込みはなかなか簡単にはぬぐえません。

「マンスプレッディング」を「有害な男性性」に端を発するものですが、その「有害さ」は他者だけではなくむしろ、「有害な男性性」を内面化している男性自身にも不利益を与えています。

「男性は強く、大きく、支配的であればあるほどいい」といった価値観を内面化している限り、弱いところを見せることはできません。去勢をはって生き続けなければならないことは、誰にとってもつらいことです。弱音を誰にもはくことができず、アルコールにすがってアルコール中毒になってしまう人もいます。

人間は誰しも老います。支配的な立場についた男性も、いつかは引退しなければならないし、弱くなります。そういったときに、どうにか強さ、大きさを誇示したいと思い、電車で足を広げてみても、周囲からは白い目で見られるばかりなのです。

【アンケート】男性が電車などで大きく脚を開いて座る「マンスプレッディング」被害、受けたことある?

公共の場で他人の脚が広がりすぎて不快に感じる「マンスプレッディング」。実際にどれほどの人がこの問題に直面しているのかを把握するため、約22,000人を対象にアンケートを実施してみましたところ、意外な事実が浮かび上がりました。

Q.あなたは「マンスプレッディング」の被害を受けたことがありますか?

女性男性回答しない全体
ある1000
(19%)
2748
(17%)
154
(18%)
3902
(18%)
ない2439
(45%)
7273
(46%)
285
(34%)
9997
(45%)
わからない1961
(36%)
5922
(37%)
405
(48%)
8288
(37%)
総計5400
(100%)
15943
(100%)
844
(100%)
22187
(100%)

「ある」と回答した割合は、女性が約19%、男性が17%と、男女でほぼ同じ割合で「マンスプレッディングの被害経験あり」が約2割。になっています。一方で、「ない」と答えた人は全体の約45%を占めています。

マンスプレッディングは性別を問わず多くの人が不快に感じる行動である一方、約4割の人が「分からない」としており、被害の認識にばらつきがあることがわかります。

男性も女性も同じ程度の被害を報告していることは興味深い点ですが、被害を受けても認識していない人が多い背景には、公共の場でのマナーへの意識や許容範囲の違いが影響している可能性があります。

Q.「マンスプレッディング」の被害を受けた時どのように対処しましたか?

 女性男性回答しない全体
特になにもせず我慢した633
(63%)
1413
(51%)
75
(49%)
2121
(54%)
席を立った233
(23%)
545
(20%)
29
(19%)
807
(21%)
負けじと脚を開いた61
(6%)
481
(18%)
18
(12%)
560
(14%)
脚を閉じてもらうよう声を掛けた32
(3%)
176
(6%)
11
(7%)
219
(6%)
その他41
(4%)
133
(5%)
21
(14%)
195
(5%)
総計1000
(100%)
2748
(100%)
154
(100%)
3902
(100%)

続いては、どのように対処したかを質問しました。

アンケート結果によると、女性の約63%が「特になにもせず我慢した」と回答しており、この割合は男性の約51%よりも高く、女性の方が被害に対して消極的な対応をとる傾向があることがわかります。「席を立った」女性は約23%、「脚を閉じてもらうよう声を掛けた」女性はわずか約3%に留まり、直接的に行動を起こす女性は少数派で、不快さを感じつつも黙って耐えるケースが多いことを示しています。

一方で注目すべきは、約18%の男性が「負けじと脚を開いた」と回答している点です。この割合は女性の6%を上回り、男性のほうが積極的な反応を示す傾向があることが伺えます。

この結果は、「マンスプレッディング」被害に対する男女の受け止め方や行動の違いを示しており、女性が公共の場で男性を相手に不快感を表明することへのハードルの高さや、より大きなトラブルを避けたいという心理が影響している可能性があると言えるでしょう。

【アンケートの調査概要】
調査名:マンスプレッディングに関するアンケート
調査期間:2024年11月27日 00:00~23:59
調査方法:QR/バーコードリーダー「アイコニット」ユーザーへのインターネット調査

足を広げて座る男性への対処法!マンスプレッディング対策【個人】

多くの人がマンスプレッディングに対して不快感を抱いていることは明らかです。満員電車や公共の場で隣の人が脚を大きく広げて座る「マンスプレッディング」に不快な思いをした経験がある女性も多いのではないでしょうか。また、高齢者や身体的に障害がある人にとって、座席を奪われることは死活問題にもなり得ます。

ここでは、実際に被害に遭った場合の対処法を紹介します。

座席を移動する

もっとも早い方法は、座席を移動することです。移動できる余裕があれば、無理をせず他の席に移動するのが良いでしょう。そうすることで、相手との距離を確保し、ストレスから解放されます。

体の向きを変える・カバンや小物で自分のスペースを守る

満席や満員電車で移動が難しい場合、自分の体の向きを変えてスペースを確保する方法があります。具体的には、少し斜めを向くように座り直すことで隣の座席との距離を感じさせ、心理的な圧迫感を軽減できます。正面から直接押し返すような対処ではなく、自然な動きで空間を作ることがポイントです。

ただし、大きく動きすぎると周囲の人に不快感を与える可能性があるため、控えめな動きで調整することが大切です。

さらに、自分の膝や脚の上にカバンや小物を置くことで、物理的に自分のスペースを守るのも効果的です。この方法は目立たず、相手に「これ以上スペースを侵害しないでほしい」という無言のシグナルを送る手段にもなります。

はっきりと意思を伝える勇気を持つ

もし余裕がある場合は、「すみません、もう少し詰めていただけますか?」と声を掛けるのも一つの方法。

ただし、男性の中にはアグレッシブな反応を示す人も一定数います。そのため、相手の態度や状況に応じて慎重に判断することが大切です。

特に満員電車などで相手が苛立っている可能性がある場合は、過剰なトラブルを避けるために直接声を掛けないほうが良いこともあります。

自分の安全を最優先にしつつ、適切なタイミングと伝え方で意思表示をすることが重要です。

マンスプレッディングをなくすために!社会全体で取り組むべき対策【公共】

続いては、マンスプレッディングをなくすために、みんなで取り組みたい対策について紹介します。

マンスプレッディングという言葉を広める

マンスプレッディングという言葉や、それをしてしまう人の心理に対する認知度を高める、という方法があります。

男性が足を広げて座ってしまうのは、「強さ、優位性の誇示」であり、「有害な男性性」によるもので、その「有害な男性性」は、周囲の人を不快にするだけではなく、本人にとって大きな不利益がある、ということが周知できれば、誰も幸せにならないマンスプレッディングをする人は減るはずです。

マンスプレッディングという言葉を検索すると、「きもい」「おっさん」「席ガチャはずれ」などの言葉が関連語としてでてきます。

ですが、ある意味、マンスプレッディングをしてしまう「おっさん」は、「有害な男性性」に捕らわれた被害者でもあると言えるのです。彼ら自身がなぜ自分は足を広げて座りたいと思ってしまうのか、という心理に気がつくことができれば、彼らもまた、より生きやすくなるはずです。

公共交通機関での啓発キャンペーン

公共交通機関が「足を広げて座りすぎないようにしましょう」と打ち出した啓発キャンペーンをするなどで、マンスプレッディングを減らすことができます。

アメリカのメトロポリタン・トランスポーテーション・オーソリティ(MTA)では「脚を開かないでくれよ(Dude, stop the spread please! )」というスローガンを打ち出し、地下鉄の乗客にマナーを守るよう訴えかけるキャンペーンを行いました。

また、スペインやドイツでも同様のキャンペーンが行われています。一部の都市では、マンスプレッディングを禁止する規制を設けるほか、違反者には罰金を課すこともあるのです。

日本ではこういったキャンペーンはまだ行われていませんが、もし行われたら、マンスプレッディングを減らすことができるでしょう。

物理的な障壁を設置する

一部の公共交通機関では、座席の間に物理的な壁を設けることで、マンスプレッディングを防止しています。一つひとつ座席が区切られていれば、マンスプレッディングをすることは物理的に不可能になるでしょう。

ただし、こちらの対策にはお金も時間もかかるため、一朝一夕には実現しないでしょう。

足を広げて座る男性心理は”男性にとっても有害”な「有害な男性性」が原因

マンスプレッディングは、公共の場での他者への配慮を欠いた自分勝手な行動であり、多くの人に不快感を与えています。

その背後には「有害な男性性」という社会的問題があるため、マンスプレッディングをなくすためには、「有害な男性性」についての理解度を深めていく必要があるでしょう。

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この記事を書いた人

編集者を経て現在フリーライター。複数メディアにて、執筆・連載中。視界が開けるような記事を発信していきたいです。

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