中年以降の女性で、職場で長く勤めている場合、後輩から「お局」と揶揄されてしまうケースがあります。「お局」は、褒め言葉ではありませんから、言われた時は、ショックを受けるでしょう。
今回は、「お局」と言われてしまった時に、どのように対処するのがいいのか、心の整理の方法などについて簡単に解説していきます。
「お局(おつぼね)」とは何か?昔は地位が高い人に使う言葉だった
宮中に使える女性官職になれるのは、上流階級の選ばれた能力のある女性だけ。つまり「局」は、選ばれた高貴で知的かつ権力のある女性だけに使われる言葉だったわけです。
しかし、現代では「お局」の意味合いは全く異なってきています。
現代社会では、職場に長い間在籍し、強い影響力や大きな存在感を発揮する年長の女性に対して、揶揄する意味合いで使われています。
今現在、「お局」と言われる人たちは、
- 長い間同じ会社に継続しており、ある程度の知識と影響力がある女性
- 指導的な立場にある女性
- 自分の意見をはっきり伝える女性
- 後輩や部下に頼られている面もあるが、圧力を与える存在でもある女性
という特徴が見られることが多いようです。
ところで、日本社会には、指導的地位についていて圧力を与える存在の男性や、同じ会社に継続して勤めており影響力がある男性はたくさんいます。しかし、彼らは「お局(笑)」と揶揄されることはありません。なぜでしょうか?
「お局」という言葉の背景を理解する。「お局」は女性蔑視の言葉
「お局」という言葉が使われる背景には、職場で長年働き、知識や経験を積んできた女性に対する偏見が含まれています。
男性が同じ職場で長い間働き、知識や経験を蓄えて、部下を持ち、指導にあたることは「当たり前」だとされています。できない部下を怒鳴っても「ヒステリー」とか「感情的」だと言われることもなく、ただ「厳しい上司」だと言われるだけです。
一方、かつては女性が長く同じ職場で働き続けることは稀でした。寿退社という言葉が一般的であり、結婚したら仕事を辞めるのが自然な流れだと思われていた時代もあったのです。そういった時代において、30代以降も「職場に居座る」女性は珍しく、揶揄の対象、疎ましい存在とみなされたのです。
「女のくせに」中年代以降も働き、「女のくせに」でかい顔をしている人を揶揄する言葉が「お局」です。
「お局」と呼ばれる女性は、実際には、長年の経験があるからこそ職場に貢献している場合が多く、むしろ職場の支えとなっていることも多いのですが、「お局」という言葉は、その人の貢献度よりもむしろ、年齢や女性であることに着目し、嘲笑うために利用されます。
つまり、年齢差別と女性蔑視の融合が生み出した言葉が「お局」だと言えるでしょう。
職場で感じた「お局」的な扱いに対する気持ちの整理と対応法
「お局」という言葉は女性蔑視の言葉ですが、女性も男性も口にすることがあります。女性蔑視やこの社会に深く埋め込まれているため、よほど気をつけていなければ女性自身も気づかずに女性を貶めてしまうのです。
「お局」と呼ばれて傷ついたなら、まずはこの構造に気がつく必要があります。
他人から直接「お局」という言葉を投げつけられたら、その表現が不適切であることを指摘するもの一つの手です。その場で指摘することが難しい場合は、せめて「真顔」を心がけましょう。失礼なことを言われている時に、作り笑顔をしないことは、失礼な言動を助長させないために大切なことです。
「お局」と揶揄される原因を作っている可能性もゼロではない
「お局」と言う言葉は、女性だけに使われる侮蔑語であり、女性蔑視の思想に基づいた言葉です。いずれ、消えてなくなることが望ましいでしょう。
どんな女性でも、職場に長くいると言うだけで嘲笑の対象にしてしまう言葉、それが「お局」です。ですから、「お局」と揶揄される本人には、何の問題もなく、言っている方が偏見を抱いているだけ、というケースも多々あります。特に、上司や先輩から「お局」と言われる場合は、単なる悪口だと考えて良いでしょう。
一方、後輩や部下から憎まれて、悪口として「お局」と言われるケースもあります。
例えば、地位や権力を振りかざして高圧的な態度を取ったり、後輩の仕事のやり方に厳しく口出ししたり、過去の武勇伝をなん度も語って聞かせたり、若手社員につらくあたる反面、権力者にはペコペコしたり・・・そういった後輩に嫌われる行動をとっていた場合、自らを戒める必要があるでしょう。
★いじわるやハラスメントをしてしまう「お局様」については、こちらの記事でも解説しています。
さいごに。「お局」という女性蔑視の言葉は、徐々に消えつつある
「お局」は褒め言葉ではありませんから、言われて傷つくのは当然のことです。
しかし、「お局」と言われたからといって自らの行動を反省し、「もっと大人しくしていよう」と考える必要はありません。
「お局」という言葉の社会的背景や性別役割、偏見などに目を向けてみると、問題なのはあなたではなく、社会構造だ、という結論に至るかもしれません。
「お局」という言葉は徐々に廃れてきています。なぜなら、日本経済が低迷した結果、共働きが当たり前になり、女性も会社で長い間働くことは珍しくなくなってきているからです。経済的事情により、「中年以降も会社で働く女性」=「お局」だと馬鹿にすることはできなくなったのです。
近いうちに、「お局」という言葉は、「石女(うまずめ):子供をうめない女性に対する蔑視の言葉」「いき遅れ:結婚適齢期を過ぎても結婚しない女性を蔑視する言葉」と同様、消え去るでしょう。
昔は“お局”なんていう女性蔑視の言葉が普通に使われていたんだって、そんな時代に生まれなくてよかった
と未来の女の子たちは思うかもしれません。