女性の「ミッドライフ・クライシス(別名、中年の危機)」とは、一般的には30代後半から50代前半にかけての年齢層で発生しがちな「心理的危機」を指します。
キャリア、家庭、健康、人間関係など、様々な面での不安や焦り、ストレスが生じ、危機感を覚えるのがミッドライフクライシスなのです。また、不安に伴って、アイデンティティや価値観を見つめ直し、将来の方向性を模索することもミッドライフクライシスの一部です。
ミッドライフクライシスは全員が経験するというわけではありませんが、全員が経験する可能性のあるものです。
今回は、ミッドライフクライシスに直面した際、適切に対処できるヒントをご紹介します。
ミッドライフクライシスになる理由とは?

まずは、ミッドライフクライシスになる理由について見ていきましょう。
ここでは、ミッドライフクライシスに至る一般的な要因について解説していきます。
ミッドライフクライシスになる理由1 年齢と社会的期待
ミッドライフクライシスは、一般的に30代後半から50代前半にかけて発生する傾向があります。この時期には、個人の人生における様々な社会的期待が高まりがちです。
たとえば、20代のころは気楽なフリーターでもなんの問題もなかったとしても、30代では周囲から、

そろそろ落ち着いたら
と言われるかもしれません。



そんな不安定な仕事では家庭をもてないよ
と言われる可能性もあります。
結婚したほうがいい、家族を築いたほうがいい、子どもを産んだほうがいい、経済的に安定したほうがいい、キャリアを成功させたほうがいい、何者かになったほうがいい……。
そういった様々な期待を、他人からも自分からもかけ続けた結果、プレッシャーが増大し、不安感を引き起こすことがあります。
社会の規範に沿えない自分に対し、自己評価が下がることが、ミッドライフクライシスになる理由のひとつなのです。
ミッドライフクライシスになる理由2 自己の達成感の不足


ミッドライフクライシスに至る理由の一つに、「個人の達成感の不足」が挙げられます。
これまで、人生で目標を達成したり、自己実現を果たせなかったことに対する後悔や失望が、ミッドライフクライシスの引き金となることがあるのです。
若いときは「いつか成功するだろう」という期待を抱くことができます。しかし、30代、40代、50代と年齢が進むにつれて、「自分は望んでいた目標を達成できそうにない」と気が付いてしまうかもしれません。
ミッドライフクライシスになる理由3 身体的変化と健康への懸念
30代後半から50代にかけて、身体的な変化や健康上の懸念が増大することも、ミッドライフクライシスの要因となります。
20代までは徹夜で遊んだり、限界まで働いたりできたのに……という自分の衰えを感じた瞬間、人は不安を抱きがちです。
鏡を見るたびに嫌な気持ちになってしまったら、そのストレスは相当なものになるでしょう。
ミッドライフクライシスになる理由4 人間関係の変化


ミッドライフクライシスは、人間関係の変化によっても引き起こされることがあります。
40代、50代になると、これまで手のかかっていた子どもが独立し、親を必要としなくなるケースもあります。子育てを頑張ってきた人ほど、虚しさを感じがちです。この現象を、空の巣症候群と言います。
また、家族関係や友人関係の変化がストレスや不安を引き起こすことがあります。
ミッドライフクライシスになる理由5 心理的な探求と成長の欲求
ミッドライフクライシスは時に、個人の心理的な探求や成長の欲求から生じることもあります。
生きる意味や目的を問い直し、新たな目標や価値観を見出そうとする欲求こそが、ミッドライフクライシスのきっかけとなることがあります。
女性特有のミッドライフクライシスになる要因とは?
ミッドライフクライシスは女性も男性も経験するものですが、女性特有のミッドライフクライシスに陥る要因もあります。
女性特有のミッドライフクライシスになる要因1 身体的・生理的変化


40代から50代にかけて、女性は更年期を迎えます。身体的な変化やホルモンバランスの乱れが起こることにより心理的な影響を及ぼし、ミッドライフクライシスを引き起こすことがあります。
また、ルックスの変化にまつわる失望も、女性は大きくなりがちです。なぜなら、社会的に女性はルックスが非常に重要だと刷り込まれてきたからです。
いつまでも「かわいく美しい女でなければならない」という社会的プレッシャーを内面化していればいるほど、年をとるのが苦しくなっていきます。




女性特有のミッドライフクライシスになる要因2 子どもや親との関係の変化
子供が成人し、親としての役割が変化することや、親の介護が必要になることなど、人間関係の変化もミッドライフクライシスを招く要因になります。
男性も育児をする時代だとはいえ、まだまだ育児の負担は女性に偏っています。
そのため、母親と子どもの関係はとても密なものになりがちです。子育てのためにキャリアを中断せざるをえないケースも女性に偏っています。
自分の意志で子育てに注力していたとしても、子どもはいつかひとり立ちします。その際、「自分には何も残らなかった」と虚しさを感じてしまうケースもあるのです。
ですが、子どもが実家に見向きもしなかったり、子育てを誰にもねぎらわれなかったりした挙句、再び働き始めようとしたら「子育て期間は無職期間」と切り捨てられる……といった現状があり、そういった現状に絶望してしまう人も少なくないのです。
ミッドライフクライシスが発生する一因として、子どもが巣立つと同時に、親の介護もスタートする時期だということです。自分の親の介護だけではなく、義両親の介護もしなければならない場合、責任と労力は二倍になります。
日本は男女の賃金格差が大きい国ですから、必然的に、男性が会社で働いて女性は家事、育児、介護と言ったケア労働を任されがちです。ケア労働には対価が支払われません。
女性特有のミッドライフクライシスになる要因3 経済的不安。老後4割が貧困


厚生労働省の調査によると、65歳以上の単身女性の4割は相対的貧困に陥っています。
具体的な数字は把握していなくても、「夫の収入や年金がなければ貧しくなる」と感じている女性は少なくないでしょう。そうなれば、どれだけ気の合わない夫でも離婚が難しくなります。不本意ながらモラハラ、DVに耐える人も出てくるでしょう。
経済的不安から、意に沿わない立場に甘んじ、人としての尊厳を傷つけられ続けてしまったことが、ミッドライフクライシスの要因になることもあるのです。


ミッドライフクライシスの乗り越え方は?


ミッドライフクライシスを完全に避けることは難しいかもしれませんが、以下の点に留意することで、その影響を軽減するでしょう。
ミッドライフクライシスの乗り越え方1 目標を設定し、成長を実感する
ミッドライフクライシスの一因として「達成感の不足」が挙げられます。
そのため、定期的な目標設定をし、自分の成長を促し、小さくてもいいので達成感を味わえる環境を整えておくことが有効です。


ミッドライフクライシスの乗り越え方2 健康的なライフスタイルの維持


適度な運動やバランスの取れた食事、十分な睡眠を確保することで、健康を維持しましょう。


ミッドライフクライシスの乗り越え方3 心理的なサポートの活用
心理カウンセリングや、同じ苦しみを抱えている仲間のいるサポートグループへの参加など、心理的な健康を保つためのサポートを受けることが有益です。
ミッドライフクライシスの乗り越え方4 人間関係を充実させる


子どもが巣だっていくと、必然的にいままで子どもに使っていた時間がぽっかりと開くことになります。
その際、家族や友人とのコミュニケーションを大切にし、信頼できる人々との関係を築いておけば、子どもが巣だったことに必要以上に虚しさを感じることがなくなるでしょう。
「自立とは依存先を増やすこと」という言葉もあるように、さまざまな人に頼れる環境を作っておくことで、誰かひとりが立ち去ってしまっても、他の人に頼ることができるのです。
さいごに。ミッドライフクライシスは成長のチャンスにもなる!
女性のミッドライフクライシスは、人生の中で訪れる可能性の高い試練の一つです。
ミッドライフクライシスは「これまでの私の人生はなんだったのか」と疑問を抱きやすいじきです。ですが、だからこそ、これまでの人生を総括し、新しい一歩を踏み出せる成長のチャンスでもあるのです。
適切なサポートを活用しながらも、ミッドライフクライシスを乗り越えることができれば、人として一回り大きく成長することができるでしょう。



