ドラマや映画を見ていると、登場人物の失敗や恥ずかしい行動に耐えられなくなり、
思わず目をそらしてしまう…
そんな経験はありませんか?
これは「共感性羞恥」と呼ばれる心理状態のひとつで、人の感情に敏感な人ほど感じやすいと言われています。
本記事では、この共感性羞恥の正体や感じやすい人の特徴、共感性羞恥を克服するためのヒントについて詳しく解説します。
共感性羞恥とは?どういう意味?読み方は?
共感性羞恥(読み方:きょうかんせいしゅうちしん)とは、他の人が恥ずかしい状況にいるのを目にした際、自分のことのように共感してしまい、緊張したり、恥ずかしさを感じたりする心理を指します。
例えば、
ドラマの中で登場人物が告白に失敗したり、空気を読めずに変な行動をして笑われたりしているのを目にした場合に、自分ごとのように感じて恥ずかしくて見ていられない、という心理が共感性羞恥に当たります。
また、バラエティ番組で芸人が笑いを取れなかったり、オーディション番組で挑戦者が緊張してミスしたり、ラジオ番組に電話してきた素人がうまく受け答えできなかったりした状況に対しても、共感性羞恥を感じる人は少なくありません。
ドラマやバラエティを楽しむことができない
という人もいるほどです。
共感性羞恥を感じやすい人の特徴は何?
まずは、共感性羞恥を抱きやすい人の特徴についてみていきましょう。
共感能力が高い
共感性羞恥を感じやすい人は、他の人の感情に対して敏感に反応しがちです。
例えば、友人が俳優をしている舞台を見に行った際、観客である自分まで友人と同じように緊張してしまう人がいます。
こういった人は、共感能力が高いため、共感性羞恥を抱きやすいのです。
想像力が豊かな
共感性羞恥を抱きやすい人は、
もし自分が同じ立場だったらどう思うだろう
と無意識に考える人でもあります。つまり、とても想像力が豊かなのです。
他者を思いやる心がある
共感性羞恥を抱きやすい人は、他者を思いやる心が人より優れていることが多いようです。
そのため、例えば、
周囲にいる人が怒鳴られている場面を目撃してしまったら、怒鳴られている人の心情をつい思いやってしまい、苦しい気持ちになることも多いのです。
過去の失敗を引きずりがち
過去の失敗を引きずっている人は、同じようなシチュエーションに他人が立たされているのを見た時、トラウマが蘇り、羞恥心を抱きがちです。
共感性羞恥の具体例。どんな時に感じる?
次に、人は、どんな時に共感性羞恥を抱くのか、についてみていきましょう。
例:テレビドラマや映画のシーンで共感性羞恥を抱く
最も多いのはドラマや映画などのフィクションに触れた時でしょう。
ドラマや映画は、基本的に、主人公の葛藤や成長、変化などを描くものです。そのため、作り手は主人公がさまざまな苦難を乗り越えたり、失敗したり、窮地に立たされたりする場面を描きがちです。
そういったシーンに出会した際、共感性羞恥が発動して、見ていられなくなる人は少なくありません。
例:オーディション番組、コンテスト、バラエティ番組の失敗で共感性羞恥を抱く
サバイバル番組、オーディション番組、コンテストなど、失敗が許されない場面で失敗している人を見たことで共感性羞恥を抱くこともあります。
バラエティ番組では笑いを追求する場面が多いですが、その中で「滑ってしまった」出演者を見ると、自分が失敗したかのように感じて恥ずかしくなる人もいるのです。
例:私生活。学校や職場など実生活で共感性羞恥を抱く
学校や職場、趣味の集まりなど、実際の生活で共感性羞恥を感じる場面もあります。
例えば、
同僚が失敗して怒られている場面を見てしまったとか、友達が見栄を張るためについていた嘘が明るみになった場面に出くわしてしまった、という場合、自分がそういったミスをしてしまったかのように、苦しい気持ちになることもあるのです。
共感性羞恥を抱いてしまう原因とは?
次に、共感性羞恥を抱いてしまう原因について見ていきましょう。
ミラーニューロンの働き?
ミラーニューロンにはまだ解明されていない点もありますが、例えば、歌手のAIKOは、喉を痛めた際、医者から、
歌わないだけではなく、音楽を聴くのも避けた方がいい。喉が自然と歌っている状態になることがあるから
と忠告されたと言います。
共感性羞恥を抱くのも、このような身体的反応が起因している可能性も考えられます。
規範意識が強いは共感性羞恥を抱きやすい
幼少期から、
他人に迷惑をかけてはいけない
失敗は恥ずかしいこと
という、
規範意識を刷り込まれてきた人ほど、他人の失敗に対しても過剰に反応してしまいます。
過去の失敗がトラウマ化している
自分自身の過去の失敗がトラウマとなり、他人の似た行動を見たときに自動的に羞恥心が引き起こされるケースもあります。
過去の失敗による傷が癒えていないために、同じようなケースを見るたびに傷をえぐられている気持ちになる人もいるのです。
共感性羞恥を克服するには?
最後に、共感性羞恥を克服するためのヒントをご紹介します。
自己と他者の境界線をはっきりと引く意識を持つ
共感性羞恥は、他者の感情を読み取りやすい「共感力」の高さが一因だと考えられます。
他者に共感し、他者の痛みを理解することは大切なことです。しかし、いきすぎた共感性は、私生活に支障が出てしまうでしょう。
失敗をポジティブに捉える
幼少期から「他人に迷惑をかけるな」「失敗は恥ずかしいこと」という価値観を刷り込まれてきた人ほど、他人の失敗に対しても過剰に反応してしまいます。
失敗は成功のための第一歩
失敗したということはチャレンジしたということ。素晴らしい!
と考えましょう。
トラウマを癒す
自分自身の過去の失敗がトラウマとなり、同じシチュエーションを見ることに耐えられないという場合は、トラウマと向き合い、癒す必要があります。
トラウマを癒す方法はたくさんありますが、一つには、カウンセラーの手を借りる、という方法があります。
感情を言語化し、記録をつけてみる
共感性羞恥を抱いた時に、
「どういう場面で羞恥心を抱いたか」「引き金は何だったのか」
を観察し、ノートに書き出してみましょう。
例えば、「オーディション番組を見ていると気だけ共感性羞恥が発動する」という場合は、オーディション番組を見ないと決めるだけで問題は解決するでしょう。
深呼吸してみる
冷静になることで、
そこまで恥ずかしがる必要はなかった
と気がつけるかもしれません。
瞑想を習慣化する
瞑想を日々の生活に取り入れることで、心が落ちつかせることもできます。
同じ体験をしている人と話をしてみる
共感性羞恥を感じやすい人同士で話し合い、自分の感覚が特別なものではないと知ることで、気持ちが楽になるかもしれません。
勝手に判断せず、物事をあるがままに見る練習をしてみる
共感性羞恥を抱く人は、想像力がたくましく、
この人は恥ずかしいに違いない
と決めつけてしまう傾向があります。
例えば、バラエティ番組で滑っている人を見た時、「この人は恥ずかしいに違いない」と想像して共感性羞恥を抱くケースがあります。
しかし実際のところ、その芸人さんが恥ずかしいかどうかはわかりません。むしろ、目立つことができてラッキーだと考えている可能性もあります。
共感性羞恥を抱く=共感力が高い人は、豊かな人間関係を築くことができる
共感性羞恥は、他人の感情や行動に敏感な人が感じる気持ちです。共感性羞恥を抱くことで、困っている人は、本記事で紹介した対応策を試してみてください。
ただし、共感力が高いという自身の美点を否定する必要はありません。共感力が高いことは、人間関係を豊かにする素晴らしい長所です。
共感性羞恥を持つことを恥ずかしいと感じる必要は全くありません。むしろ、それを自分の強みとして活かす方法を探してみましょう。
その共感力を活かして、人と接する仕事やボランティアで能力を発揮できるかもしれません。そうすれば共感力を活かしながら、豊かな人生を築いていけるでしょう。