「妻・彼女の方が収入が多い」と、男性のプライドが傷つく?

自分の方が稼いでいるけれど、彼や夫が気にしている気がする……。

そんな悩みを抱える女性が増えています。

女性の社会進出が進み、彼女や妻の方が収入の多いカップルや夫婦も珍しくなくなった現代。しかし、そこには複雑な感情や関係性の変化が潜んでいることもあります。

この記事では、妻・彼女の方が収入が多い場合、なぜ男性のプライドが傷つくと言われるのか、また、健全なパートナーシップを築くためのヒントについて詳しく解説します。

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今来今

切れ味鋭くリアルを斬るフリーライター。恋愛や仕事、社会のモヤモヤをアラサー女子の先輩目線でズバッと斬り込み、読む人に新しい風を届けます。

目次

そもそもなぜ、「男性の方が収入が多いカップル」が一般的なのか

今の所、日本では、夫婦やカップルでは男性の方が収入が多いカップルがマジョリティです。それには様々な理由があります。

日本の深刻なジェンダーギャップ

世界経済フォーラムが発表する「ジェンダーギャップ指数2025」において、日本は146カ国中118位という低い順位にランクされています。

この数字は、日本における男女格差の深刻さを物語っています。

女性の管理職の割合は、OECDでは平均して3割を超えているにも関わらず、日本では10%代をキープしています。また、男女の賃金格差は約23%でOECD諸国では最大の男女差です。

さらには、正規雇用における女性比率に関しては、3割以下で、女性の多くは非正規雇用で働いているというのが現状なのです。同一労働同一賃金が徹底されていない日本においては、正規雇用と非正規雇用の賃金格差は依然として大きいままで、男女の賃金には大きな開きがあります。

社会から期待される性別分業役割

社会的に、男性は家族を養うこと、女性は家事育児介護などのケア労働を引き受けることがいまだに期待されています。

日本では、男性は長時間労働を前提として昇進システムに乗り、女性は男性が長時間労働に集中できるように無償のケア労働に従事する、という性別役割分業が長らく続いてきました。

日本が経済的に貧しくなり、男性の収入だけでは生活を維持できなくなった後でも、女性が家事育児などのケア労働の責任者となる構図は変わっていません。

これにより、女性は結婚後、パートタイム労働などの低賃金労働プラス無償のケア労働という二つの仕事をこなす、いわゆるダブルシフトを余儀なくされることが増えたのです。

進路選択の段階から始まる格差

女性が男性より低賃金になることは、進路選択の段階から方向づけられています。

「女性向け」とされる仕事はピンクカラーと呼ばれ、低賃金に抑えられがちです。保育士などが典型的で、保育士の多くは兼業主婦によって担われており、一人で生活していくだけの給与が支払われていないことも珍しくありません。

これらの要因により、統計的に男性の方が収入の多いカップルが多数を占めているのが現状です。しかし、個人の能力や努力によって、この傾向に当てはまらないケースも増えています。

妻・彼女の方が収入が多いと離婚率は高くなる?

女性の方が男性よりも収入が多いと離婚率が高くなる、と言われることがあります。それは本当でしょうか?

アメリカの研究では、妻の方が収入が多い夫婦の離婚率について興味深いデータが報告されています。それは妻の年収が夫を上回る場合、離婚率が約50%高くなるという研究結果です。ただし、この傾向は年々減少してきており、若い世代ほど、収入格差を気にしない傾向があるようです。

また、教育水準が高いカップルほど、妻の年収が高くても気にしない傾向があることが報告されています。

日本ではこういった統計はとられていません。そのため、女性の方が男性より収入が高い場合、離婚率が上がるかどうかはわかりません。しかし、一つだけ確かなことがあります。

それは、男性の年収がいくらかに関わらず、女性の年収が高いと、離婚率が高くなる、ということです。女性医師の離婚率が高いことからも、この傾向は明らかでしょう。

女性に経済力があれば離婚率は高まるということは、すなわち、「経済力がないために離婚が頭をよぎっても我慢している女性が多い」ということでしょう。

「男性のプライドが傷つく」のはなぜ?なぜ「女性のプライド」は傷つかない?

女性の方が収入が高いと男性のプライドが傷つく、とも言われます。男性のプライドは守られるべきもの、尊重されるべきものだとされています。

しかしなぜ、女性が男性の上をいくと男性のプライドは傷つき、女性はそれに配慮する必要があるのでしょうか?

男性は大黒柱になるべき、という社会的プレッシャー

日本では長い間、「男性は経済的責任を負う」という役割が期待されてきました。
男性は仕事、女性は家庭、という固定観念は古臭いものだとされながらも、現代も連綿と続いてきています。

家族を養うのは男性の責任、家族を養ってこそ一人前の男、という社会的メッセージを受け取ってきた男性にとって、「本来男性がするべき稼ぐという仕事」を「女性にとって代わられた」ことで屈辱を感じるのです。

女性は男性より稼げないのは当たり前、という価値観

なぜ男性は、「稼げる妻・彼女が誇らしい、ラッキー」と感じず、男性のプライドが傷ついてしまうのでしょうか? 

それは、女性を男性よりも稼げないはずの存在、経済的に劣位な存在だと見做しているからです。

有害な男性性

妻に収入を上回られたことで「負けた」気持ちになる男性もいます。妻の収入が多ければ世帯の収入は増えるため、喜ばしいことでしょう。しかし、妻に対して競争意識を向け、負けたと感じてプライドが傷つく人もいるのです。

これは、過度に競争意識を抱き、優越することに重きをおく有害な男らしさ(トキシック・マスキュリニティ)」の問題でしょう。

男性のプライドが女性のプライドよりも優先される社会

この社会において「男性のプライド」という言葉はよく耳にしますが、「女性のプライド」という言葉はあまり聞かれません。「男性はプライドの高い生き物だから」と言われる時、男性のプライドは傷つけられないよう、慎重に扱われます。

「男性はプライドの高い生き物」だとしたら、「女性はプライドの低い生き物」なのでしょうか?

そうではありません。男性優位の社会において、男性のプライドは「尊重すべきもの」、女性のプライドは「わがまま、気が強い」とみなされがちだっただけです。

同じことをしても、男性と女性では捉えられ方が異なる「ダブルスタンダード」が平然とまかり通っており、それゆえ、「男性のプライドを傷つけるのは大問題」とみなされます。

「男性のプライドを傷つけてはいけない」という言説が囁かれる時、多くは、「だから女性が気をつけるべき」という言葉とセットで語られます。

「男性のプライド」を傷つけないために、女性は接待すべき無知なふりをすべき可愛くいるべき……という言説の根本にあるのは、「女性より男性が上であるべき」という価値観なのです。

自分の方が収入が多い時に、男性と健全な関係を築くためのヒント

最後に、女性の方が収入の多いカップルが健全な関係を築くためのヒントをご紹介します。

自分自身の価値観を明確にする

パートナー選びの前に、自分自身が「収入格差のある関係」についてどう考えているかを明確にしておくことも重要です。

無意識に「申し訳ない」と感じてしまっているなら、その気持ちと向き合い、自分の成功を堂々と誇れるマインドセットを育てましょう。

最も大切なのは人選

彼女や妻の方が収入が多いことで、「男性のプライド」が傷つく人もいます。しかし、傷つかない人もいます。

健全な関係を築くために最も大切なことは、彼女や妻の方が収入が多いことに、「男性のプライドが傷ついたからケアしてくれ」というような「女の上に立たなければ安心していられない小心者の男性を選ばないことです。

成熟した男性は、パートナーの成功を喜んだり、尊敬したりしてくれます。彼女や妻の活躍を喜べる男性を選べば、収入格差は問題にならないでしょう。

コミュニケーションをしっかりとる

収入格差がある場合こそ、率直なコミュニケーションが重要です。

家計管理の方法役割分担についてなど、率直に語り合いましょう。相手に収入が少ない場合、デートの場所なども工夫する必要がありそうです。

相手のプライドを尊重する

パートナーとして相手の強みや努力を認め、言葉にして伝えることは大切です。ただし、これは「男性だから」ではなく、「パートナーだから」という理由で行うものです。

お互いの価値を収入以外の面でも認め合える関係を心がけましょう。

将来設計を一緒に考える

現在の収入格差が一時的なものなのか、長期的に続くものなのかを含め、将来のキャリアプラン人生設計について率直に話し合いましょう。

お互いの夢や目標を支え合える関係であれば、一時的な収入格差は問題になりません。

第三者の意見に惑わされない

周囲から「男性が稼ぐべき」といった古い価値観を押し付けられることがあるかもしれませんが、二人の関係は二人で決めるものです。

外部の声に左右されず、お互いが幸せを感じられる形を見つけることが最優先です。

真のパートナーシップを目指して

自分の方が収入が多いことで悩んでいる女性の皆さん、あなたの成功は誇るべきものです。現状、男女の賃金格差が大きい日本において、平均以上の収入を得るためには、相当の努力をされたことでしょう。

まずは自分の努力を認めて、褒めてあげてください。

ただし、あなたの価値は収入の多さだけで決まるものではありません。同様に、パートナーの価値も収入だけで測れるものではありません。お互いを一人の人間として尊重し、支え合える関係こそが、真に豊かなパートナーシップなのです。

もし現在のパートナーがあなたの経済力を素直に喜べないなら、それは相手の成熟度の問題です。あなたが気を遣いすぎる必要はありません。

あなたらしく輝いて生きることが、結果的により良いパートナーシップを築くことにつながるはずです。

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