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鍼灸のキホン第1回_鍼灸のうれしい効果・効能

Date
2023/11/03
Writer
佐藤 優子
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少し前に美容法の一つとして「美容鍼」が注目されたことや、有名なスポーツ選手、チームに所属する専属の鍼灸師の存在で、多くの方に認知されるようになった「鍼灸治療」

皆さんは、この鍼灸治療にどのような効果・効能が期待できるかご存じでしょうか?

肩こりや腰痛の治療で受けたことがある…という方も少なくないと思いますが、鍼灸治療では、不眠や高血圧、婦人科疾患などなど、一般的に知られている運動器系のお悩みの他にも、治療で効果を期待できるものが多くあります。

また、最近の医療の目標にもなっている「未病」、いわゆる病気になる前の症状の治療にも効果が期待できると言われることから、医療業界でも鍼灸治療の効果効能に注目が集まっています。

そこで今回は、「鍼灸治療」が体にどんな影響を与えているのか、その治療効果についてご紹介いたします。

鍼灸は昔からある治療法のひとつー鍼灸の歴史―


中国で起こったと言われている鍼術ですが、現在日本で受けられるほとんどの治療法(刺鍼法)は、鍼術が日本に伝来し、江戸時代の鍼灸師たちによって形成された治療法(刺鍼法)です。

鍼灸の知識は6世紀頃(飛鳥時代)、朝鮮半島から日本に伝えられ現在までに日本独自の発展を遂げています。

「すごい長くて太い鍼を体に刺して治療するんでしょう?」

「痛そうだし、怖い!」

なんて声をちらほら聞きますが、日本の鍼はとても細く、刺すときの痛みをまったく感じさせないような作りをしているものがほとんどです。

こんな昔からあり、日本に根付いた治療法であるのに、注目されたのが最近なんてちょっとびっくりですよね。

東洋各国で発展を遂げた鍼灸治療ですが、WHO(世界保健機構)で世界的な治療基準(ツボ)や適応疾患も確定されており、実は日本より海外での方が鍼灸治療を身近に受けている方が多いこともあるのだとか。

どんな治療をするの?


鍼灸の治療では、痛みや症状が出ている箇所に鍼やお灸をする場合と、体全体の状況を確認し、痛みや症状が出ている場所から離れている場所に鍼やお灸をする場合があります。

ちょっと話が広がるのですが、

医学には東洋医学と西洋医学があり、我々が体調不良の際に一般的に受診をしているのは西洋医学の分野での治療です。

首や膝が痛かったら整形外科にいったり、風邪をひいたら一般内科を受診しますよね?

ざっくりですが、東洋医学は体全体の状態と症状が出ている箇所を診て治療を行い、西洋医学では痛みや症状が出ている箇所、原因となる箇所を局所的に治療を行います。

つまり鍼灸治療は東洋・西洋、両方の特徴を活かして治療を行うことが可能なのです。

「腰痛」の中で急性的に起こる「ぎっくり腰(筋筋膜性腰痛)」の治療を例にしてお話してみますね。

まず西洋医学(現代医学)的な考え方として、以下のように病態を診ます。

・急激な動作で筋に過度な負荷がかかり、部分的に筋が部分断裂して起きた急性的なもの。

・筋疲労などによる血行等の循環障害や刺激が原因となって起こる慢性的なもの。

上記のことから、治療方針として、局所の血流改善、硬結(筋が固くなっている箇所)を取り除くため、これらの症状が出ている場所に鍼灸治療を行います。

一方で、東洋医学的な考え方としては、以下のように病態を診ます。

・急性タイプ

気血そ滞によるもの

動作により腰部の経脈、経筋を損傷。これにより気血が滞り急性腰痛が起こる。

つまり、西洋医学で診た急性的なものと同じ考えですね。

治療方針としては、西洋医学と同じように、気血の運行を改善を目的として、局所に鍼灸を行います。


・慢性タイプ

寒湿による腰痛

寒湿の停滞により腰部の経絡帰結の流れが悪くなると起こる。

つまり、体が冷えたりすることで体内に湿がたまり、腰部の血流が悪くなって起こったというもの。
東洋医学では、体は寒温(陰陽)のバランスが取れていることが正常として考えられています。体のバランスが寒湿に寄ってしまうことが血流不良の原因として考えます。

治療方針としては、体の陽気を強めて寒湿の除去をはかり、経脈の通りよくして気血の運行を改善します。

この体の陽気を強めて寒湿の除去をはかるため、症状が出ている腰以外の、体全体にあるツボから、陽気を強めるツボを選出し、その部位に鍼灸治療を行います。

このように、鍼灸治療は体全体の不調を診て治療を行うため、主訴だった腰痛の他にも、「なんだから体が軽くなった」「前より体調が良くなった」という声が多く聞かれる理由です。

なぜ鍼灸がいいの?


前述したように、鍼灸治療は症状の原因となっている筋、部位に直接アプローチできるため、治療効果が高いと言われています。

さらに、体全体のバランスを診て鍼灸治療を行うため、全体的に体調が良くなったと感じられることが多くあります。

この特徴は美容鍼でも効果を期待できるところで、

直接お顔に鍼を行うことでお顔全体の血行が良くなる=ハリ感アップ!
全身への鍼で、ニキビや吹き出物などの原因となる胃の不調の改善などが期待できます。

他にも、今回は「腰痛」を例にしてご紹介しましたが、不眠や頭痛、高血圧などの治療効果は、鍼灸治療による刺激が、自律神経や内分泌機能に作用することで改善が期待できると言われています。

局所と全体の両方からの治療ができる「鍼灸治療」

なんとなく最近体がだるい、眠れない、疲れやすいなど、病院にかかるような症状が出ていない「未病」の段階でも治療が受けられますので、気になった方はぜひ一度、鍼灸治療を受けてみてはいかがでしょうか?

参照

・東洋医学概論(医道の日本社)
・はりきゅう理論(医道の日本社)
・はりきゅう実技(医道の日本社)
・東京有明医療大学
https://www.tau.ac.jp/department/healthsciences/acupuncture/history-a/
・World Health Organization (WHO)
https://www.who.int/

Writer's Profile
佐藤 優子

鍼灸接骨院に鍼灸師として勤務。整形外科疾患から、不眠、頭痛、高血圧他、未病分野の治療を行う。院では外来の他、訪問や大学病院で鍼灸師として派遣勤務を行う。

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