私たち鍼灸師は、治療の際に鍼の他に「お灸」も使用します。
最近では、ドラックストアなどでも手軽なお灸が販売されているため、日頃からお灸を活用しボディケアをされている方もいらっしゃるのではないでしょうか?
今回は、「お灸」が身体に与える効果についてご紹介したと思います。
お灸が上手な鍼灸師は腕がいい!?
「火を使わないお灸」や「台座がついているお灸」「香りが選べるお灸」などなど、ドラックストアにあるお灸をみると、こんなにもあるのか!?と驚いたほど…。
皆さんの生活に、「お灸」が浸透していることに驚きました。
こちらはとても手軽に、火を使わないものは安全に使用できるのでとてもおすすめのアイテムたちです。
「台座がついているお灸」に関しては、私たち鍼灸師も安全性の面から、治療に活用しているアイテムのひとつです。
私たち鍼灸師にとって、お灸といえば「もぐさ(艾)」が一般的です。
私たち鍼灸師の中でも、特にお灸を治療のメインにしている方や、お灸の効果を治療に最大限活かしたい!!と考えている鍼灸師の方は、「もぐさ(艾)」を活用されている方も多くいらっしゃると思います。
しかしこの「もぐさ(艾)」ですが、小さくひねって直接肌に置き火をつけて使用するもののため、施術者の技量がかなり必要とされるもの…。
試験でも、かなり厳しく高いレベルまでの技量を身に着けることが求められます。
これは個人的な意見ですが、治療にもぐさを使用し、熱が痛みやコリがツライ場所にスッと浸透し、心地よさを感じられる灸ができる鍼灸師の方の治療は、期待以上の治療効果を得ることができる!と感じています。
もぐさを活用した灸が上手な鍼灸師の方は多くいらっしゃいますが、治療院が入っている建物の構造上、もぐさが使用できないところも多く、なかなか治療を受けられないのが残念なところです…。
「もぐさ(艾)」の材料と施術方法
もぐさは、ヨモギ(蓬)の葉から作られます。
ヨモギは「ハーブの女王」と言われ、日本だけではなく世界中でその効果・効能が期待されて活用されています。
ヨモギには抗炎症、デトックス、抗酸化など多くの効果があり、アトピー性皮膚炎の改善から、内部浄血効果、ダイエット、そしてがん予防まで期待されています。
もぐさは、主にヨモギの葉の裏面にはる毛茸(もうじょう)と腺毛(せんもう)からできています。
もぐさの品質は産地や製造方法によって異なりますが、芳香の良い、熱刺激の緩和なものが良質とされています。
施術の際は、ふわふわのもぐさを一定の細さにまとめ、米粒大か半米粒大の大きさにし、治療点の肌の上に置き、専用の線香で火をつけます。
「知熱灸(ちねつきゅう)」と言って、お灸を全部燃やすのではなく、点火した後、施術者の母指と示指で、ゆっくりもぐさを覆い包むようにし、患者さんの気持ち良いと感じるところで消火する方法を用いて治療を行います。
そのため、8~9分ほど燃えたところで消すことがほとんどかと思います。
上記はもぐさを直接肌の上に置いた治療方法ですが、お灸を置く箇所に適量の軟膏を置き、その上にもぐさを置き灸を施す方法がとられることもあります。 いずれにせよ、施術は患者さんの安全を第一に、「気持ち良い」と感じてもらえる施術をすることを一番に考えて行います。
お灸の効果・効能
1.血流改善と血液質の向上
灸の温熱刺激で、血液の循環が悪い場所の血管が拡張されます。
そのため、局所に溜まっていた老廃物などが血管に回収されやすくなり、むくみも解消します。
また、先にご紹介したように、ヨモギが「ハーブの女王」と言われるほど、身体に良い効果・効能を持つため、灸をすることでその効果を得ることができます。
モグサを活用した灸では、赤血球の造成を促し血液中の酸素量を高めたり、血液中の酸化を防いだり(抗酸化作用)、血液中の毒素を発汗や排尿により排出しやすくしたりするため、血液質の向上が期待できます。
2. 免疫力の向上
灸は、患部に白血球を集め、抗体(白血球が使う武器)や補体(標的につけるしるし)を併せて呼び寄せるため、白血球の食作用や抗菌作用を強めること(オプソニン効果)で免疫作用を高めます。
2_1. 抗アレルギー作用
上記の免疫作用を高める効果・効能から、過剰反応を起こす免疫細胞を鎮静化してアレルギー反応を抑えます。
3.自律神経を整える
灸は、徐々に熱量が増して、少しずつ熱が冷めていきます。
すると、熱量の増加に合わせて、局所の血管は徐々に拡張し、その後ゆっくりと時間をかけて収縮していきます。
このように、熱刺激で血管に働きかけて、血管の運動性を高めると、血管を動かしている自律神経が本来の働きを思い出して、正常に機能するようになります。
4.若返り・健康寿命を延ばす
4_1. 細胞の機能亢進作用
機能不全を起こしている細胞を刺激して機能を亢進させます。
4_2. 神経伝達の調整
興奮している神経細胞を鎮静化させたり、弱っている神経細胞を興奮させたりすることで神経伝達を調整します。
■参照
・東洋医学概論(医道の日本社)
・はりきゅう理論(医道の日本社)
・東洋医学の教科書(ナツメ社)
・東洋医学用語集(医道の日本社)