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鍼灸のキホン第6回_世界の鍼灸事情

Date
2024/05/14
Writer
佐藤 優子
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みなさんは、鍼やお灸の治療を受けたことがありますか?

最近、NHKなどの健康番組で「鍼灸治療」について取り上げられることが多くなったなと感じます。

その理由のひとつに、有名なアスリートの方や芸能関係の方々が『日頃からケアのひとつとして鍼灸治療を受けている』という情報を知ったから…というのもあるかと思います。

しかし、いま「鍼灸治療」が注目されているのは、これらの理由からだけではありません。

日本ではまだ一般的に受診したことがあるという方が少ない傾向にありますが、海外では、病院に勤めている医師が鍼治療を行うほど、鍼治療が積極的に行われています。

そこで今回は、世界の鍼灸事情を見ていきながら、日本の鍼灸治療の今後についてご紹介していきます。

起源は大昔だけど、伝統医療として認められたのは実は最近!?

これまでもご紹介してきたように、東洋医学である鍼灸の元は中国にて発祥した治療法ですが、現在日本で受けられる鍼灸治療は、日本独自に発展した鍼灸治療になります。

鍼灸医学は今から二千年以上前に、古代の中国で誕生したと言われています。

鍼灸が日本に伝播されるのは、6世紀半ばのことで、 701年の大宝律令の制定以降明治7年の 「医制」 が公布されるまで鍼灸は国の医学の一翼を担い続けました。

奈良・平安時代は中国の鍼灸を受け入れ、 学ぶことが中心ではありましたが、同時に、 日本鍼灸の萌芽が見え始めた時期でもあったとされています。

鍼灸治療は昔からあった治療法ですが、2018年にWHO(世界保健機関)は鍼灸や漢方薬などを「伝統医療」として認定し、ICD(国際的に統一した基準で定められた疾病分類)の中に東洋医学の章が追加されました。

これまで、ICDの中には伝統医療を持つ地域(アジアなど)の情報が入っていませんでした。ここに東洋医学の章が追加されたのは、西洋医学一辺倒だった世界医療基準が大きな転換期を迎えた瞬間でもあると考えられています。

この認定によって、中国とは異なる独自の進化を遂げてきた日本の鍼灸・漢方の有用性にも光が当たり、「日本の伝統医療」として再評価されつつあるのです。

東アジア諸国と欧米との違い?

先ほどご紹介したように、私たち日本を含む東アジア諸国では、昔から鍼灸治療が行われていました。

しかし昨今、欧米での鍼灸治療が盛んで西洋医学と一緒になって治療を受けることができます。

ドイツでは、10人に1人の医者が治療に鍼灸を取り入れているほどだとか…。

鍼灸治療は世界の約53の国々で行われています。その中でもアメリカ、オーストラリア、メキシコ、ニュージーランド、ドイツの国々では特に盛んに取り入れられているそうです。

補完代替医療(CAM)の先進国として知られるドイツでは、CAMについての知識は医師にとって必須のもの。ペインクリニックの約8割は鍼灸治療を実施しており、日本の鍼製造メーカー「セイリン」が唯一、海外支社を置いているのもドイツです。

イギリスの国民保健サービス(NHS)の病院では、出産やペインクリニック、癌治療などで鍼灸が保険適用となっています。

この違いは、昔から鍼灸治療を行っていた東アジア諸国と、最近になって鍼灸治療の効果をきちんと検証し、治療に取り組んでいる欧米諸国にあります。

そもそも東アジア諸国は、鍼灸治療を行う前提で「鍼灸はなぜ効くのか?」というメカニズムの説明や臨床・研究を行っているのがほとんどでした。

一方で、鍼灸治療になじみのない欧米諸国では、多くの臨床家や研究者は「鍼灸は本当に効くのか?」について着目し研究を行っていました。

その結果、様々な疾患で鍼灸治療の効果が判明したことで、西洋医学と東洋医学が統合した治療が多くの病院で受けることができる環境になっているようです。

東アジア諸国の研究は、効果があることが前提で研究されていたため、日本で西洋医学をメインに治療を行う医師には、「エビデンスがない!」「伝統医療でしょ?…」と鍼灸治療を積極的に取り入れてもらえない状況にありました。

現在通われている患者さんの中にも、「整形外科に通ったけど、症状は楽にならなかった…。鍼灸治療を受けたいといったら、効果が保証できないから医師からの推薦はできないと言われました…。」という悲しい言葉を聞いたことがあります。

ツライ症状で悩んでいる方を助けたいと思う気持ちは私たち鍼灸師も同じで、治療に必要な「解剖」「生理」「臨各・臨総」など人体の基礎となる医学を学んでいるのに…まだ日本では認められていないのか…と思うことがありました。

「未病」を治すが当たり前になる!

先ほど、日本より欧米諸国の方が鍼灸治療が盛んになっているとお話をしました。

研究内容がその結果を担っていることは確かですが、もう一つ理由として考えられていることがあります。

それは「保険制度」の違いです。

公的医療制度がないアメリカでは、国民のほとんどは民間の医療保険に加入します。そのため、病気にならないよう予防しようという意識が高く、その考えのもと「未病(病気になる一歩手前の状況)を治す」東洋医学が支持されたのです。

日本でも、昨今大きな問題となっている莫大な医療費。

この費用を抑えるべく、「未病」のうちから治療を行う大切さが着目されるようになりました。

「未病治」の考え方は、病気が発症する前の体の不調やバランスの崩れを治す・正すことを意味します。 鍼灸治療は、その根本原因にアプローチし、体の自然な治癒力を高める手助けをします。

日本国には、政府が進める「健康・医療戦略」というのがあります。

これは、「健康・医療戦略推進法」第17条の規定に基づき、健康長寿社会を形成するため、政府が講ずべき健康・医療に関する先端的研究開発及び新産業創出に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために策定された計画です。

この中に、「未病の考え方などが重要になる」という表現とともに、「未病」の定義が平成29年2月17日に新たに盛り込まれました。

この動きからも、これからの医療業界は「未病」から治療すること含め、今まで以上に鍼灸治療が注目されていくことが期待されます。

同じ腰痛や更年期障害でお悩みの方でも、お一人ずつ痛みの現れ方や症状が異なります。その方の身体のバランス・状態を診て、その方に合った治療法を行うのが鍼灸治療です。

私も一人の鍼灸師として、一人でも多くの患者さんのお悩みを改善できる鍼灸師になれるよう、日々勉強・精進していきたいと思います。

■参照

・東洋医学概論(医道の日本社)
・はりきゅう理論(医道の日本社)
・東洋医学の教科書(ナツメ社)
・公益社団法人 日本鍼灸師会
https://www.harikyu.or.jp/
・内閣官房 健康・医療戦略室
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kenkouiryou/senryaku/index.html
・日本補完代替医療学会誌
国際化する鍼灸 その動向と展望 2)臨床研究方法論の問題と解決
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcam/4/1/4_1_17/_pdf
・一般社団法人 鍼灸医療普及機構
https://harikyuiryo.or.jp/1-acupuncture-in-europe/

Writer's Profile
佐藤 優子

鍼灸接骨院に鍼灸師として勤務。整形外科疾患から、不眠、頭痛、高血圧他、未病分野の治療を行う。院では外来の他、訪問や大学病院で鍼灸師として派遣勤務を行う。

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