数年前から改めて注目されるようになった、私たちの睡眠。
睡眠の質を上げるドリンクや、なかなか寝付けないという方向けに、ドラッグストアなどで睡眠改善薬やサプリなどが手軽に買えるようになりましたね。
2021年版の経済協力開発機構(OECD)の調査では、日本人の平均睡眠時間は7時間22分で、33カ国の中で最も短いという調査結果が出ているほど、現代の日本人は睡眠不足なんです。
最近なんだか寝つきが悪い。
熟睡できない。
そんな睡眠のお悩みを改善するおすすめのツボをご紹介します。
『不眠』とは?
一言に不眠といっても、その原因や症状の内容(型)によって不眠の種類を分類します。
・機会性不眠
→騒音など、外からの刺激や日常生活の乱れが原因となるもの。
・症候性不眠
→体の痛みなど、睡眠を障害する要素を持つ病気や精神病、神経症が原因となるもの。
さらに、不眠症状の型として以下の4つに分けられます。
・入眠障害
・早朝覚醒
・熟眠障害
・まったく眠れない
鍼灸治療で適用になるもの
こちらは西洋医学的に診て分類した場合の見方ですが、機会性不眠と神経性不眠が治療の対象となります。
・機会性不眠
外からの刺激や生活習慣の乱れ、精神的緊張などによって睡眠が妨げられたり、睡眠のリズムが崩れたりしているものをいいます。
ほとんどの場合は、原因となっているものがなくなる、改善することで症状は改善されます。しかし、不眠が原因による精神的興奮の持続や、自律神経の乱れなどの悪循環により、症状が定着してしまい、なかなか改善しないことが問題になります。
治療方針としては、精神的興奮を抑え、全身の調整を行い悪循環を改善していきます。
・神経性不眠
機会性不眠が心理的なことから完全に不眠となる症状が定着してしまう場合と、原因となるものが認められないにも関わらず発症する場合とがあります。
治療方針としては、機会性不眠と同じではありますが、より心理的な配慮が重要となってきます。
鍼灸の治療方針としては、肩や首回りの緊張をほぐすことを目的に、頭・頚・肩周りの緊張し凝り固まっている箇所に鍼を行っていきます。
東洋医学で診る『不眠』
東洋医学で不眠は、『常に睡眠は不足している状態』のことをいいます。
一時的な精神的な緊張や、騒音、暑さ・寒さなどが原因となる不眠は病態ではないと考えます。
東洋医学で不眠は、原因によって以下のように分類されます。
①痰熱
②肝火
③心脾両虚
④心腎不交
いずれも、身体の不調状態を表しているものになります。
痰熱は食生活の乱れ、肝火はストレスや激怒。心腎不交は慢性疾患などで腎陰を損傷。これらにより体内に熱や火が起こり、心神(精神活動)に影響し不眠を起こします。
心脾両虚は、考えすぎや心労、疲労や老化および病気の慢性化により、脾を損傷。それにより気血の生成が悪くなり、心の栄養が不足し心神が不安定となり不眠を起こすと考えます。
不眠でお悩みの患者さんの状態を細かく確認し、不眠の原因がどの分類になるのかを確認し、それぞれにあったツボに鍼治療を行います。
①と②が実証。つまり、量の過剰や停滞、機能の過亢進状態。③を虚証、生体内の必要物質や生体機能が不足・低下した状態と診ます。
④は虚実狭雑症。「実証」に「虚証」が混ざった状態で、虚と実が同時に存在する状態のことをいいます。実証・虚証にわけ、治療に適切なツボを決めます。
睡眠の不調におすすめのツボ
【実証】
■豊隆(ほうりゅう)_胃経
場所_脛(すね)の少し外側で、膝と足首のちょうど中間あたりの高さに位置します。外くるぶしの一番高いところから指11本分上に上がったところ。
■厲兌(れいだ)_胃経
場所_足の人差し指の爪の生え際からわずかだけ身体よりのところ。
胃の井穴(セイケツ)と言われ、胃の経絡の始まるツボ
■内関(ないかん)_心包経
場所_手のひら側の手首のシワから肘に向かって指の腹三本分で真ん中あたり、細い腱が二本並んでいるところの間。
【虚証】
■太溪※太谿※(たいけい)_腎経
場所_内くるぶしとアキレス腱の間の窪み。
■神門(しんもん)_心経
場所_手のひらを上にして、手首の小指側にある骨の出っ張りの少し下のへこみ。
■大陵(だいりょう)_心包経
場所_手首のど真ん中にあり、手首を曲げると浮き出てくる二本の腱の間。
心包経の「原穴」(気血がもっとも集まる部位)で、不安で落ち着かない、動悸、不眠といった症状の時に使用するツボ。
参照
・東洋医学概論(医道の日本社)
・東洋医学臨床論(医道の日本社)
・ツボ単~経血取穴法・経血由来解説・兪穴単語帳
・女性の不眠症に対する鍼灸治療の効果(https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspog/23/2/23_89/_article/-char/ja)
・厚生労働省 健康づくりのための睡眠指針検討会報告書
(https://www.mhlw.go.jp/shingi/2003/03/s0331-3.html#sankou)