スポーツ選手や芸能人の方々が治療を受けているということもあり、より身近に感じてもらえることが多くなった「鍼灸治療」。
ですが、鍼灸治療、いわゆる東洋医学と聞くと、「中国の医療でしょ?」と、考えられている方が多かったり、「痛そう」「怖い」と思われている方が多くいらっしゃいます。
そこで今回は、日本における鍼灸治療・東洋医学についてご紹介。
・鍼灸治療は国際的にも認められた治療法だった!!
・実は、気が付かないうちに東洋医学に助けられていた!?
などなど、奥深い東洋医学・鍼灸の世界を簡単にちょこっと知れる情報をお伝えしていきます。
国際的にも認められた治療法
鍼灸の治療効果は、中国・韓国・日本などのアジアだけでなく、欧米でも採用されています。
私の友人の話を聞くところによると、鍼灸治療は日本よりもっと身近にあるもので、日本でいう大学病院のような、大きな総合病院でも受けているという声を耳にすることがあります。
近年では、NHI(米国国立衛生研究所)が、病気に対する鍼灸療法の効果とその科学的根拠、西洋医学の代替治療法としての有効性を発表しました。
また、WHO(世界保健機関)は、鍼灸治療の有効性を認めた病気として、
・神経系治療(神経痛、脳卒中後遺症、自律神経失調症、ノイローゼなど)
・運動器系疾患(関節炎、リウマチ、頸肩腕症候群、五十肩、腱鞘炎など)
・循環器系疾患
・消化器系疾患
・代謝内分泌系疾患
…など、多くの疾患を挙げています。
鍼灸治療には、対症療法と根治療法の2つの治療方法があります。
対症療法は、今でている痛みや症状を緩和するための治療。
根治療法は、今でている痛みや症状、病の原因を治療する治療法です。
この二つの治療が可能だからこそ、「体がツライのに、原因がわからない」「薬を飲んでも一向に良くならない」など、いわゆる未病と言われる症状への対処が可能な治療法と言えます。
「病院に行くほどでもないけど…」と思うようなツライ症状がおありでしたら、
無理せず、一度鍼灸院を訪ねてみてくださいね。
さて、鍼灸治療が国際的にも認められた治療法であることをご紹介した次は、歴史についてお話したいと思います。
現在日本で受けられる鍼灸治療のほとんどは、日本独自の発展を遂げた治療法で、昔からの日本の風土や思考に基づいて発展を遂げているため、我々日本人に合った治療法となっているのです。
日本の東洋医学の歴史
現代医学には大きく分けて、西洋医学と東洋医学の2種類があります。
日本では一般的に、主に欧米において発展した医学を「西洋医学」。
主に中国で発展した医学を「東洋医学」としています。
明治政府によって西洋医学が導入されるまでの間、中国大陸で生まれ日本に伝来した東洋医学が日本における医学の主流でした。
東洋医学は約2千年前の中国古代医学に源を発し、日本をはじめ東アジア諸国に広がり、各国それぞれ独特の発展を遂げています。
治療法には、鍼灸、湯液(漢方薬)、気功、導引・按蹻(あんきょう)※現在の按摩・マッサージ、指圧、カイロプラクティック、整体術などの手技療法※などが含まれます。
聖徳太子による遣隋使の派遣が日中間の公式な交流の始まりとされていますが、古代の日本の東洋医学には、隋唐の影響を受けて形成・発展したものです。
奈良時代には、鍼博士や鍼師などの官職が存在していたこともわかっています。
日本(伝統的鍼灸)と中医学の鍼灸の違い
中国伝統医学(中医学)が日本に伝来したのは6世紀頃とされていて、約1500年の歴史があります。この間、東洋医学は日本の風土、文化、思想などの影響を様々に受け変化し、現在に至っています。
結果として、現代中国の伝統医学との違いも多くみられています。
1.診察の違い
日本は主に、触診を重視して診察を行います。痛みを訴えているところや体全体の状態(腹診※お腹の状態を診る※、脈診※脈の状態を診る※)に触れ、必要な治療箇所、方法を定めます。
中医学では、特に問診(病状、既往歴・家族歴を聞く)の情報を重視する傾向があるようです。
2.鍼と刺入方法の違い
日本で開発された刺鍼法で「管鍼法」が一般的。江戸時代に完成された刺鍼法で、鍼を肌に刺すとき、無痛で行うことを可能にした方法です。
中医学では、いわゆる響きといった、刺されたときに感じる感覚を重視し、刺入前後に鍼を回転させたりなど、刺激が感じられる刺鍼を行う傾向がある。
身近な東洋医学
身近な東洋医学で一番メジャーなものと言えば、「薬膳」
寒くなり体を温める効果として、生姜入りの飲み物や料理を食べたことはありませんか?
これは、生姜が持つ体を温める成分の効果に期待しているもの。
また、ウコンには肝機能の向上・胆汁の分泌を促進する効果が期待でくるため、アルコールを摂取する前に飲んでいる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
このほかにも、私たちが毎日口にしている食材それぞれに、様々な効果効能があります。
そこに着目し、体の不調を整えることを目的に作られているのが「薬膳」です。
私たちの体は、食べているものから作られています。
ですから、「体の不調も食べて治す」という考えが成り立つわけですね。
東洋医学と聞くとなんだか近寄りがたいもののような気がしますが、
食生活という健康を考える上で大切な部分にしっかり根付いている、身近な医学であることを知っていただけたら嬉しいです。
参照
・東洋医学概論(医道の日本社)
・はりきゅう理論(医道の日本社)
・東洋医学の教科書(ナツメ社)
・東洋医学用語集(医道の日本社)