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鍼灸のキホン第4回_なぜ鍼灸がいいの?

Date
2024/03/12
Writer
佐藤 優子
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最近、テレビ番組で「鍼灸」について取り上げられることが多くなったな~と、しみじみ感じるようになりました。

というのも、これにはちゃんとした理由があります。

それは、最近の研究結果で、鍼灸による体への影響がきちんと数字として照明がされるようになったからです。

これまでの鍼灸のキホン編でお話してきたように、鍼灸の世界は古くから確立されているのに、西洋的な視点での研究がとても少なく、エビデンス、いわゆる西洋医学的な『証拠』が少なかったのです。

しかし、昨今多くの医師を含む医療系研究者が、鍼灸の効果効能について研究を進め、その結果は発表されることで、多くの注目を集めています。

今回は、最新の研究結果を元に、鍼灸が体に与える影響についてご紹介していきたいと思います。 皆さんの体のメンテナンスに、鍼灸を取り入れるきっかけとなれればうれしいです。

そもそも『鍼灸治療』ってどんな治療なの?

ギックリ腰や、肩の脱臼、首・腕・足の痛みで接骨院や整骨院、整形外科に行かれた際、鍼灸治療を進められたことはありませんでしょうか?

多くの方のイメージとして、『鍼を体に刺す』『お灸を体に置く』と思われている方が多いと思われるのですが、その通りです…。

ただ、「痛そう」とか「やけどしないの?」という声をよくいただくのですが、お灸に関してはやけどしないタイプのものを使用しますし、鍼も髪の毛くらい細い鍼を使用するので、注射を打つときみたいな痛さはありません。

本当にまれに、毛穴に刺さってしまうと、ピリッとくるときがあります。

お灸は、じんわりとした温かさが伝わってきますし、鍼は刺された・刺されている感じがまったくしないか、筋肉がぎゅーっと押される感じがした後、ふわっとほぐれていく感じを体感していただけます。

つまり、お灸も鍼もどちらも「気持ちいい」ものだと感じていただけたら嬉しいです。

治療としては、患者さんのお悩みの症状や疾患に適した経穴(ツボ)に、細い鍼を刺入したり、艾(もぐさ)を置いて燃焼させたりして、生体に刺激を加えることで、元々身体に備わっている病気を治す力を高めて元気にする治療法です。

鍼灸による体への影響

次に、鍼灸をすることで得られる体への効果についてご紹介します。

肩コリ、腰痛、神経痛、関節痛などに適応しますが、鍼灸は多くのつらい症状や病気に効果が期待できます。

というのも、一般にはあまり知られていないことが残念でならないのですが、鍼灸は以下の効果を持ちます。

・血液循環を改善

・免疫細胞の増加・活性化

・内臓の働きを調節する自律神経を整える

・身体の持つ恒常性維持機能を高める

※恒常性維持機能とは、外部環境の変化にかかわらず生体の内部環境を一定に保とうとする機能のこと。一般的には、自律神経、ホルモン、免疫などをいいます。

上記のことから、最初は肩こりや腰痛で鍼灸治療を受けていたけど、最近、風邪をひかなくなった、体が軽くなった、肌の調子が良いなど、全身で健康を感じられるようになってきます。

鍼灸の働き

鍼灸が体に与える影響についてご紹介しましたが、なぜ鍼灸するとこのような効果が得られるのか…。

鍼灸を施した際、体がどのような反応をすることでこれらの影響を得られるのかについて、詳しくご紹介したいと思います。

人が持つ自然治癒力&免疫力をアップ

私たちの身体には、病気やケガを自分で治す自然治癒力や、外から入ってくる病原体から身を守る免疫力が備わっています。

身体がケガをしたりすると、これらの作用が働きだし、身体を守ろう・治そうという様々な反応が起こります。

例えば、

・血管を拡張し酸素や栄養を含んだ新線な血液を集め、新陳代謝を高める

・身体の中に侵入してきた異物(細菌・ウイルス)と戦う白血球を呼び寄せ、傷ついた部位から感染を防ぐ

これらのような作用が身体の中で起こります。

鍼灸治療は、このような反応を利用して、皮膚や筋肉に目には見えない微細な傷や小さな火傷を作り、筋肉の血液循環を改善して肩こりや腰痛を治したり、傷害を負った部位の修復を促進したりします。

痛みを抑制

私たちの身体には、痛みを抑制する様々な仕組みが備わっているのをご存じでしょうか。

お腹が痛むとき、お腹をやさしくさすったり、ケガをした箇所や周りを押さえたりすると、痛みが和らいだりすることありませんか?

また、何かに集中したり、楽しいことをしている間は痛みが気にならなかったなど、誰もが一度は経験されたことがあるかと思います。

鍼灸の刺激は、このような痛みを抑制する仕組みを働かせるきっかけになり、その結果として鎮痛効果を発揮します。

「痛み」というのは、痛みが出ている箇所から感じるものではなく、脳に痛みの信号が送られて、「痛い」と感じます。 鍼灸で刺激すると、中枢神経内にモルヒネのような役割を持つホルモンが放出されます。 この物質(内因性オピオイド)が、痛みを抑え、痛みを脳に伝える神経経路をブロックすることで、痛みを緩和します。

自律神経の活動を調整

身体には、皮膚や筋肉などに刺激が加えられると自律神経の活動が変化し、自律神経が支配する臓器・器官の働きが反射的に調節される仕組みも備わっています。

鍼や灸の刺激はその仕組みを利用して自律神経活動を変化させ、血管の調節をしたり臓器の働きを良くしたりします。

その結果、血圧が調節されたり、ホルモンバランスが整えられたり、免疫系が活性化したりなど全身性の広範な効果が引き起こされます。

このことから、鍼灸治療を続けていると体調が良くなり、病気になりにくくなるのです。

鍼灸治療は、身体が持つ自然治癒力や免疫を高める効果を持ちます。

そのため、病気になりにくい身体を作ることができる治療法だと私は考えます。

今回の記事が、皆さんの鍼灸治療を受けるきっかけとなればうれしいです。

■参照

・東洋医学概論(医道の日本社)
・はりきゅう理論(医道の日本社)
・東洋医学の教科書(ナツメ社)
・東洋医学用語集(医道の日本社)
・公益社団法人 日本鍼灸師会
https://www.harikyu.or.jp/

Writer's Profile
佐藤 優子

鍼灸接骨院に鍼灸師として勤務。整形外科疾患から、不眠、頭痛、高血圧他、未病分野の治療を行う。院では外来の他、訪問や大学病院で鍼灸師として派遣勤務を行う。

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