
もう30歳なのに何もかも中途半端。人生手遅れかも?
なんとなく不安やモヤモヤ、焦りを感じていませんか?
俗にアラサーと呼ばれる時期には、キャリア、人間関係、結婚、子どもなど、さまざまな問題や立ちはだかる壁に直面し、それによりなんとなく不安な気持ちが膨れ上がってしまいがちです。
今回は、アラサー・クライシスに陥ってしまう原因や、対処法、また、30代以降に人生が変わった女性の事例をご紹介します。今現在、なんとなく不安を感じる、アラサー・クライシスの兆候がある方は本記事をチェックしてみてください。
なぜ女性は30歳前後に不安になるの?アラサー・クライシス(クォーターライフクライシス)
まずは、なぜ女性は30歳前後に「なんとなく不安」「モヤモヤ」を感じてしまうのか、その理由について詳しく見ていきましょう。
周りと比較してしまう


30歳は、女性の生き方が大きく変わっていく時期です。現在の男女ともに平均初婚年齢は30歳前後ですから、「周囲の友だちが次々と結婚していっているのに、自分はしていない」などの比較が生まれやすくなってしまうのでしょう。
結婚願望がない人でも心苦しく感じるシーンは増えます。自分は結婚したいと思っていないのに、周囲の友だちから「○○も誰かいないの? 結婚しないの?」と問われ続けることで自分の生き方を否定されたように感じ、つらい気分になってしまう人もいるのです。
一方、結婚し、夫の転勤や出産などを機会にキャリアを中断せざるをえなくなった女性からすると、バリバリ働いている友人に対し、劣等感を抱くケースもあります。
これまでは横並びだった友人たちと、パートナーの有無や年収、肩書、住んでいる場所などが違ってきて、この先も大きく差が開いていく……という予感により、「自分の生き方はこれでいいのだろうか」と不安になる人も少なくないようです。
可能性が逆に不安に変わる
女性は33歳と37歳で厄年が訪れます。前後二年を前厄、後厄と考えると、30代の大半が厄年とされてしまうのです。
なぜこんなに30代に厄年が密集しているのかというと、昔の人も30代は女性にとって様々なライフイベントが訪れ、変化が多く、それゆえリスクもある年だと捉えていたからでしょう。
20代前半のころは、「将来どんな仕事ができるだろう」「結婚相手はどんな人になるだろう」といったことに希望を抱けます。ミュージシャンや小説家のような夢を追いながら、その日ぐらしのバイトをするのも楽しいでしょう。将来のことを考えずに、今この瞬間を楽しむことができます。
この不安は、日本社会の構造が一因でしょう。
日本はとくに、年齢が上るにつれて転職が難しい仕組みになっています。アメリカのように、「履歴書に年齢を書くのはNG。年齢差別につながるから」といったカルチャーが日本にはありませんから、「もうこの年になったら転職できないのでは?」「育児で仕事を中断したから、働き始めようとしても低賃金のバイトしかないのでは?」という不安を女性は抱きやすいのです。
年齢を重ねるにつれて、「さまざまな可能性の扉が閉じていく」ように感じて、アラサー・クライシスに突入する女性も少なくありません。
妊娠・出産にタイムリミットがあるという現実


30代を迎える女性が不安を抱く理由のひとつに、「妊娠・出産のタイムリミット」があります。
近年は40代での出産も一般的になりつつあるとはいえ、自然妊娠の確率は加齢とともに確実に下がっていくという事実に変わりはありません。
とくに35歳を過ぎると「高齢出産」とされ、妊娠のしづらさや出産時のリスクが上がることは医学的にも知られています。
また、仮に将来パートナーと出会い、すぐに妊娠したとしても、出産・育児には多くの体力・お金・社会的サポートが必要になります。
それらを見越して早めに動かないと…と焦る一方で、「そもそも結婚もしていないのに、何を焦ってるんだろう」と自分を責めてしまうこともあります。
加えて、職場の理解や制度が十分でない場合、「妊娠したらキャリアが止まってしまうかもしれない」「育休を取ると昇進に響くのでは」といった現実的な不安も拭えません。
妊娠・出産をめぐる選択は、単なる個人の問題ではなく、社会の構造が問いかけてくるジレンマでもあるのです。
若さ至上主義の内面化
日本では、女性は若いほうがいいという文化、女子高生という子どもの時期を「女性が一番美しい時代」と捉える文化、いわゆるロリコン文化が蔓延っています。
「30過ぎたらババア」のような年齢蔑視・女性蔑視が蔓延しているため、女性でもそういった価値観を内面化している人も少なくありません。
そのため、人生100年と考えれば、まだまだ若いはずのアラサーでありながらも、「もうババアだから」と自虐フレーズを言い放つ女性も数多く存在します。
経済的不安


日本は男女の賃金格差が大きい国です。女性は正社員でも男性の7割程度の賃金しか得られていません。役員などの上層部に女性がゼロという企業も少なくなく、企業内で女性が昇進するのはとても難しいというのが実情です。
また、全世代の女性のうち、ふたりにひとりが非正規雇用です。
こういった、不安定雇用を解決しようと専門職を目指しても、保育士、介護士、看護師、臨床心理士などの女性が多い職場は「ピンクカラー」と呼ばれ、その実質の労働力に比べて、賃金が低く抑えられているのが現状です。
20代前半は、「男女で大きな賃金格差がある」ということになかなか気が付きません。しかし、20代後半になるにつれ、自分より勉強ができなかった男友達が、自分よりもはるかに多額の給料を受け取っていることに気が付く人も少なくないのです。
低賃金・不安定雇用・男女格差、という現実に気が付いても、それは社会全体の問題であるため、自分ひとりでは解決できません。構造的な女性差別があると気がつくのもアラサー世代が多いのです。
それゆえ、無力感、虚無感を抱いてアラサー・クライシスに突入してしまう人もいるようです。




キャリアもプライベートもそこそこだけど満たされない理由


側から見れば問題ない生活を送っていて、悩みなんてなさそうに見える人でも、満たされない思いを抱えている人は少なくありません。「何もかも中途半端な自分」と感じてしまう背景には、現代社会特有の課題があります。
選択肢が多すぎる
現代女性は、昔の女性に比べて多くの選択肢を持っています。
しかし、選択肢が多すぎることで「本当にこの選択で良かったのか」「他の道を選んでいたらもっと幸せだったのではないか」と常に迷い続けることになります。この状態を心理学では「選択のパラドックス」と呼びます。
SNSで“完璧な生活”を目にしている


現代社会では、キャリアも恋愛も趣味も、すべてを完璧にこなすことが求められがちです。
SNSで見る他人の生活は編集された「ハイライト」であることを忘れ、自分の日常と比較してしまい、「私の人生はなんて平凡なんだろう」と落ち込んでしまう人も少なくありません。
周囲からの承認を求めすぎる
SNSの普及により、他人からの「いいね」や承認を求める気持ちが強くなりがちです。
「いいね」をたくさんもらえたら、その瞬間は気分が高揚するでしょう。しかし、外部からの承認だけでは決して心は満たされません。
内面的な満足感や自己肯定感が育たないまま30代を迎えると、「周囲から憧れられている生活を送っているのになぜか満たされない」という感覚に陥りやすくなります。
周囲から「いいね」と言われる道を選んで進んだ結果、虚しく感じてアラサー・クライシスに突入する人もいます。


「30代、人生こんなもん?」と思ってしまう夜に…アラサーの不安を解消するヒント


次に、アラサークライシスの乗り越え方について確認していきましょう。
深夜にふと「私の人生、このままで終わってしまうの?」と不安になることはありませんか?そんな夜のために、実践的なアドバイスをお伝えします。
自分自身について深く知る
他人と比較してしまい不安を感じている方は、まずは自分にとって大切なもの、自分が求めているものを明確にしましょう。
以下の質問に答えてみてください。
- 子どもの頃、何をしているときが一番楽しかった?
- お金のことを考えなくていいなら、何をして過ごしたい?
- どんな瞬間に「生きていて良かった」と感じる?
- 自分が心から尊敬する人はどんな人?
他人と比較してうらやましがっていたけれど、実はそれは自分がほしいものではなかった……。
と気が付く可能性も大いにあります。自分にとって本当に大切なものはそう多くはないはずです。
メリットはデメリットでもあると知る


他人との比較防止に有効なもう一つの方法は、どんなメリットにもデメリットがあると知ることです。
たとえば、素敵なパートナーと結婚した人は、独り暮らしの気楽さをもう味わえません。かわいい子どもに恵まれた人は、自分の時間が少なくなり、寝不足かもしれません。フォロワーが多い人は、おいそれと発言できず、自由にSNSを楽しめないかもしれません。
小さな変化から始める
「人生を変えたい」と思っても、大きな変化を一度に起こそうとすると挫折しがちです。まずは小さな変化から始めてみましょう。
- 毎朝5分早く起きて、ヨガをする
- 週に一度、新しいカフェに行ってみる
- 気になっていた本を1冊読む
- 昔の友人に連絡を取ってみる
過去の自分をライバルにする


他人と比較するのではなく、過去の自分と今の自分を比較してみましょう。
1年前、5年前の自分と比べて、どんな成長をしましたか?
じっくり考えてみると、新しくスキルを身につけたり、精神的に強くなったり、さまざまな成長をしていることに気づくはずです。
専門家に話を聞いてもらう
不安で夜も眠れなかったり、うつ病のような症状があったり、死にたい気持ちが湧いてくるという場合は、精神科・心療内科を受診しましょう。睡眠薬をもらったことで、眠れるようになり不安が解消する可能性もあります。
また、不安を吐き出したい場合は、友人や心理カウンセラーなどを頼るのもいいでしょう。近年はオンラインカウンセリングも増えてきているので、外出するのが億劫という人でも、気軽にカウンセリングを受けることができます。
キャリアで迷いが生じている場合は、先輩やキャリアカウンセラーに相談したり、転職エージェントを覗いてみたりするのもいいでしょう。キャリアプランの設計に役立つアドバイスを聞けるかもしれません。
大切なのは、ひとりで抱え込みすぎないことです。


なんとなく不安なアラサーを乗り越えて…30歳から人生変わった女性たちの事例


次に、「クォーターライフクライシスを乗り越えられた」「30歳から人生変わった」という女性たちの実体験をご紹介します。年齢を重ねたからこそ、生きるのが楽になった、より自分らしく生きられるようになった、という人も少なくありません。
未経験からIT業界へ転職したAさん(31歳)
29歳まで事務職として働いていたAさんは、「20代も終わるのに何もしてこなかった」という焦りを感じていました。しかし30歳を機に一念発起し、プログラミングスクールに通学。31歳でIT企業に転職し、現在は年収が200万円アップ。
離婚後に専業主婦→起業したBさん(32歳)
Bさんは結婚生活がうまくいかず、32歳で離婚しました。当初は専業主婦生活が長く、就職も厳しいと考え、「もう人生手遅れかも」と思っていたと言います。
しかし、ひょんなことから昔から好きだった手作りアクセサリーをネットで販売し始め、数ヶ月後に奇跡的に事業が軌道に乗ったのです。現在は月収50万円を超える人気作家として活躍しています。
海外留学を決意したCさん(33歳)
「なんの取り柄もない」と悩んでいたCさんは、33歳でカナダへワーキングホリデー。語学力を身につけ、現地の日系企業に就職しました。
フリーライターとして独立→会社経営を検討中のDさん(32歳)
平凡な会社員生活に「人生こんなもん?」と感じていたDさんは、趣味で始めたブログが人気となり、30歳でフリーライターとして独立しました。
資格取得でキャリアチェンジしたEさん(29歳)
「中途半端な自分」に嫌気がさしていたEさんは、社会保険労務士の資格を取得。29歳で労務管理の専門家として転職を成功させました。
ハラスメントや“なめられ”が減ったFさん(35歳)
営業職Fさんはその可愛らしいルックスゆえか、20代の頃はセクハラ被害やストーカー被害に頻繁に会っていたと言います。30代に入り、大人のビジネスパーソンとしての貫禄が出てきたため、昨今は以前のようになめられることが減っていったと語ります。
離婚を機に自分らしさを取り戻したGさん(34歳)
20代で結婚し、夫に合わせた生活を送っていたGさん。31歳で離婚し、最初は「人生終わった」と感じていました。しかし徐々に自分の好きなことを見つけ直し、34歳の今は「20代より断然幸せ」と実感しています。「離婚して数年経ってから、夫はモラハラ気味だったとやっと気がつけました」と語るGさんは現在、
人間関係を整理して楽になったHさん(33歳)
20代は誰にでも好かれようと無理をしていたHさんは、30歳を過ぎてから本当に大切な人間関係だけを残し、ストレスの原因となる関係は断捨離したと言います。
これらの事例に共通するのは、年齢を言い訳にせず、小さな行動から始めたこと、そして30代になって自分らしさを受け入れられるようになったことです。
「30歳から人生変わった」人たちは、特別な才能があったわけではありません。ただ、現状を変えたいという気持ちを行動に移したり、年齢とともに得られる内面的な成熟を活かしたりしただけなのです。
焦らず、ゆっくりと歩んでいこう


アラサー・クライシスは誰にでも起こりうるものです。「最近、将来が不安」「未来に希望を抱けない」「友だちと比べて私にはなにもない……」そんな気持ちに苛まれるのは、特別なことではありません。こんな時代ですから、将来が不安になるのはごく当たり前のことです。
「このままでいいのか」と不安になったときは、現状を打開する一歩を踏み出すことが大切です。
ただし、現実的には時間的・経済的・精神的余裕のなさから、身動きがとれないケースもあります。そんなときは自分を責めずに自分を労わってあげることを第一優先にしましょう。
30代は人生の終わりではなく、新しい始まりの時期です。「29歳なのに何もしてこなかった」「30代だしもう人生手遅れ」と悲観的になる気持ちも理解できますが、実際には30代以降に大きく人生を変えた人はたくさんいます。



