ポジティブの押し売り「ポジティブ・ハラスメント」に疲れている人へ

「前向きに考えよう!」「気の持ちよう!」「話せばわかりあえるよ!」「元気を出して!」

こうした言葉を聞くたびに、なぜかモヤモヤしたり、ムッとしたり、疲れを感じたりしていませんか? 周りからは「いいことを言ってもらっているのに」と思われがちですが、実はあなたの感じている違和感は正常な反応です。

近年、こういったポジティブの押し売りは、「ポジティブ・ハラスメント」と言われ、ハラスメントの一種だと考えられています。

本記事では、ポジティブの押し売りに疲れているあなたに向けて、ポジティブ・ハラスメントの実態と対処法について詳しく解説していきます。

この記事を書いた人

今来今

切れ味鋭くリアルを斬るフリーライター。恋愛や仕事、社会のモヤモヤをアラサー女子の先輩目線でズバッと斬り込み、読む人に新しい風を届けます。

目次

ポジティブ・ハラスメントとは?ポジティブの押し売りはなぜうざい?

ポジティブ・ハラスメント…

ポジティブ・ハラスメント(通称:ポジハラ)とは、過度にポジティブな言動や考え方を他人に強要することで、相手に精神的な負担をかける行為のことです。

本人には、悪意がないことが多く、むしろ「相手のため」という善意から発生するため、ポジハラをされた側もイラっとしても「嫌だ」と言いにくいのが特徴です。

ポジハラの主な特徴

  • 相手の感情や状況を無視し、一方的にアドバイスする
  • ネガティブな感情を否定する発言をする
  • 根拠のない楽観論を押し付ける
  • 「頑張れば何とかなる」という精神論を強要する
  • 相手の価値観を無視した解決策を提示する

ポジハラをしてしまう日本の社会的背景

日本では古くから「明るく前向きであることが良い」とされる文化があります。いつの時代も、とりわけ職場や学校では、ポジティブ・シンキングが美徳とされ、ネガティブな感情を表現することがタブー視される傾向があります。

このような社会的背景が、ポジティブハラスメントを生み出しやすい土壌となっています。

ポジティブの押し付けがなぜうざいのか

「ポジティブすぎる人がうざい」と感じることは、決して悪いことではありません。

自分が落ち込んだり怒ったり悩んだりしているときに、たとえ応援されてポジティブな声かけをされても、時に「自分の感情が軽視されている」と感じるのは当然でしょう。

また、表面的なポジティブの押し売りに関しては、誠実さが感じられず、本当の理解が得られていないとも感じがちです。また、「価値観を押し付けられている」窮屈さも感じるでしょう。

ポジティブすぎる人の特徴と心理とは?

ポジティブ・ハラスメントの加害者はポジティブすぎる人です。ここでは、ポジティブすぎる人の特徴と心理についてみていきましょう。

ポジティブすぎる人の特徴

  • 問題を矮小化する:深刻な悩みも「たいしたことない」として片付けてしまう
  • 感情を否定する:「そんなこと考えちゃダメ」と感情そのものを否定する
  • 一方的にアドバイスする:相手の話を最後まで聞かずに解決策を提示する
  • 自分の経験を押し付ける:自分の過去の成功体験を他人にも当てはめようとする
  • 現実逃避的な発言をする:具体的な解決策を示さず、精神論に逃げる

ポジティブすぎる人の心理。なぜポジティブすぎる人になったのか

ところで、ポジティブすぎる人はなぜポジティブすぎる人になったのでしょうか?

さまざまな理由が考えられますが、よくあるのは「自己防衛メカニズム」の働きです。自分の不安や恐怖から目を逸らすため、現実逃避としてポジティブに考える人は少なくありません。

また、ポジティブの押し売りをする人は、相手の感情をコントロールしたいという「コントロール欲求」に突き動かされているケースも多々あります。

ネガティブな感情は大切。ポジティブ・シンキングの副作用

ポジティブ・ハラスメントの根本的な問題は、ネガティブな感情を「悪いもの」として捉える価値観にあります。

しかし、感情に良い悪いはありません。
心理学的には、すべての感情に意味と価値があることが証明されています。ネガティブな感情には、重要な役割があります。

ネガティブな感情の重要な役割

  • 危険察知機能:不安や恐怖は身を守るための重要なサインになります
  • 問題解決のモチベーション:不満や怒りは現状を変える原動力になります
  • シンパシー:悲しみは他者との深いつながりを生みます
  • 成長のきっかけ:困難な体験は人格的成長の機会になります
  • 現実を認識する:ネガティブ感情は現実を正確に把握するために必要な場合もあります

ポジティブ・シンキングの副作用

過度なポジティブシンキングを実行すると、本来、ネガティブになることで得られるメリット(危機を察知するなど)を享受できないことになります。そうすると、以下のような副作用が発生するリスクがあるのです。

  • 現実逃避:問題から目を逸らした結果、適切な対処ができなくなる
  • 体調不良:ストレスを認識できず、心身に影響が出る
  • 判断力の低下:リスクを過小評価し、危険な決断をしてしまう
  • 人間関係の悪化:他者の感情を軽視し、共感力が低下する
  • 自己否定:「ポジティブになれない自分はダメ」という自己嫌悪に陥る。

ポジティブの押し売りをしてくる人への対処法

過度にポジティブになると上記のようなさまざまなリスクが発生します。リスクを避けるために、ポジティブ・ハラスメントをする人への対処法について確認しましょう。

彼氏がポジティブすぎる場合

恋人がポジティブの押し付けをしてくる場合、関係性を考慮した慎重な対応が必要です。

彼氏がポジティブの押し付けをしてくる場合は、「なぜその言葉が辛いのか」を具体的に伝えましょう。また、「今はポジティブな言葉が欲しいんじゃなくて、愚痴に共感して欲しいだけ」など、あなたが望む対応を明確に伝えるのも一案でしょう。

感情的になりそうな時は、一時的に距離を置き、冷静になった際に、話し合いの場を設けてください。


職場の人がポジティブすぎる場合

職場では働く立場や関係性により、直接的な反論が難しい場合があります。

まずは、相手とのコミュニケーションを必要最小限にとどめるために距離をとりましょう。
また、相手の発言内容や頻度などを日記に書くなどして記録を残してみてください。

その記録を証拠として確保した上で、ポジティブの押し売りが目に余る場合は、信頼できる上司や同僚に相談してみてください。

友人がポジティブすぎる場合

友人がポジティブすぎる場合は、率直に気持ちを伝えましょう。

その際、「心配してくれてありがとう。でも」など、最初に感謝の気持ちから伝えるのが効果的です。次に、「話を聞いてもらえるだけで十分」など具体的な対応の仕方を伝えましょう。

ポジティブの押し売りを求めていないことを伝えても理解されない場合は、一時的に距離を置くのも一案です。

ポジティブ・ハラスメントから身を守る方法

次に、ポジティブ・ハラスメントから身を守る具体的な方法を解説していきます。

即効性のある対処法

  • 心の中で反論する:「そんな簡単な問題じゃない」と心の中で否定する
  • 深呼吸する:感情的になりそうな時は深呼吸で冷静になる
  • 話題を変える:「ところで…」と自然に話題を転換する
  • 時間を区切る:「そろそろ時間が…」と会話を終了する

長期的な対策

  • 自分の価値観を明確にする:何が自分にとって大切かを整理する
  • ポジハラしない人と繋がる:理解してくれる人とのつながりを大切にする
  • 専門知識の習得:心理学やカウンセリングの基礎知識を学ぶ
  • セルフケアの実践:ストレス管理や感情調整の技術を身につける

自分を守るために、境界線を付き方を

  • 明確な意思表示:「今は前向きなアドバイスは求めていません」と断言する
  • 理由を説明する:「なぜポジハラがいやなのか」を簡潔に説明する
  • 代替案の提示:「こういう風に関わってもらえると嬉しい」と提案する
  • 必要に応じて距離を置く:理解されない場合は接触を減らす

自分がポジティブの押し売りをしないために

次に、あなた自身がポジティブ・ハラスメントをしていないかを確認するために、以下の要注意サインを確認してみましょう。

ポジハラの要注意サイン

相手の話を最後まで聞かずにアドバイスしている
□ 「でも」「しかし」を使って相手の感情を否定している
□ 自分の経験談を頻繁に持ち出している
□ 相手の表情や反応を観察していない
□ 「前向きに」「ポジティブに」という言葉を多用している

これらのチェックリストに多数当てはまる場合、「求められていないポジティブ・アドバイス」をしてしまっている可能性があるので、注意が必要です。

効果的なコミュニケーションの原則

ポジティブ・ハラスメントをしてしまう危険がある場合は、以下のコミュニケーションの原則を意識してみましょう。

  • まずは傾聴:アドバイスより先に、相手の話を十分に聞きましょう
  • 感情を受け入れる:ネガティブな感情も否定せず、受け入れましょう
  • 質問する:「どう感じているの?」「どんな支援が必要?」と質問しましょう
  • 選択肢を提示する:一つの「正解」を押し付けるのではなく、「こういう考え方もある」という選択肢を示しましょう。

まとめに。あなたの感情はあなただけのもの。誰にも否定される筋合いはない

ポジティブの押し売りに疲れているあなたへ。

あなたが感じている違和感や疲労感は、決して間違った感情ではありません。むしろ、それは健全な感覚であり、自分を守るための大切なサインなのです。

社会には「明るく前向きであることが良い」という価値観が根強くありますが、人間の感情は本来もっと複雑で多様なものです。悲しみ怒り不安絶望といったネガティブな感情も、人間として自然で大切な感情です。

覚えておいてほしいことは、すべての感情に価値があるということです。自分が感じていることを抑圧し、むりやりポジティブになろうとしても、どこかで歪みが出てきてしまいます。自分の感情を否定せず、受け入れることが必要でしょう。

もし周りにポジティブの押し売りをする人がいても、あなたが変わり反省をする必要はありません。上手に適切な境界線を設定し、付き合い方を考え、自分を一番大切にしてください。

そして、あなたに相応しい、あなたを本当に理解し、思考に共感してくれる人との関係を大切にしていってください。

あなたの感情は、あなただけのものです。誰にも否定される筋合いはありません。

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