鍼灸のキホン第11回目の今回は、前回から引き続き「鍼治療を行う際の流れ」について、ご紹介していきます。
第9回目から、鍼灸治療を行う際の問診についてご紹介してきました。
10回目では、身体の各部位別、主に五管に注目した方法についてご紹介してきましたが、11回目は頭部・咽喉・胸部・腹部・全身症状で診る方法についてご紹介していきます。
余分な水分と脂肪がめまいの原因?
頭部の問診では、頭重感や眩暈など頭部に関わる症状があるかを確認します。
頭重感
頭が重く感じる症状で、痰湿の状態であることが多いです。
眩暈(めまい)
眩暈は、内風によるものが多いと言われています、内風とは、体内の機能失調や機能低下により生じるもの。 内風は、血虚(血が不足している体質)や陰虚(身の潤いが不足していることが特徴の体質)がベースにあり、気の流れの制御ができなくなると生じます。
さらに、腎精不足や脾の昇清の失調、痰湿などが要因として考えられます。
頭重感・めまいの原因としてある痰湿ですが、余分な水分や脂肪が溜まってしまっている状態であると考えます。
ストレスは喉の違和感になって現れる!?
咽喉部の問診では、咳などの咽喉に関わる症状があるかを確認していきます。
具体的には、咳や痰がらみがないか、呼吸困難や喉に詰まった感じがないかをヒアリングしていきます。
喉が詰まった感じは、気滞や痰湿によるものが多いと考えられています。
梅核気(ばいかくき)
最近、ストレスなどが原因となり、お悩みの方が増えてきているのが『梅核気』
・なんとなく喉が詰まるような感じがする
・喉に物がひっかかる感じがして、飲み込みづらい
・呼吸が浅く息が苦しい感じがする
上記のような症状を東洋医学では梅核気と呼びます。
西洋医学では咽頭神経症や咽喉頭異常感症、一般的にはヒステリー球といった名称で呼ばれています。
梅核気は、気滞と痰湿が咽喉部に集まっていることが原因と考えられます。
胸の痛みは心と肺に原因あり
胸部の問診では、心悸(しんき)や胸悶など胸部に関わる症状があるかを確認していきます。
心悸とは動悸のことで、心臓の鼓動が平常よりも強く早くなることを言います。
胸悶は胸が苦しくなることを言います。
心悸は心臓の病変を示しますが、胸悶は東洋医学で言うところの、心と肺の気機の失調によるものが多いと考えます。
胃の調子はお腹の症状で診る
お腹の症状では、具体的にお腹が鳴るかや、張っているか、胸やけや吐き気があるかについて確認していきます。
腹満
腹部に膨満感、腸満感があるけど、外見的にはそれほどの張りを認めないものは、脾胃の病変に多く見られると考えます。
胃は飲食物を受け入れ、消化し、食べた物を人体に吸収できる形(清)に変化させてそれを脾に渡し、残りのかすを下の小腸・大腸に降ろします。脾は、清を吸収して肺に持ち上げ、気血を生成し、全身に輸送します。この脾胃の機能の失調により、腹部膨満感が生じます。
胸やけ
五臓の肝の機能がストレスなどの影響によりスムーズに働かなくなって鬱帯して肝鬱気滞(かんうつきたい)証となり、熱邪を生み、それが胃の運動を妨げて胸やけを生じます。
全身症状から診る体調不良
倦怠感や疲労感、身体の重ダルさ、浮腫みなど全身に現れる症状について確認していきます。
倦怠感、疲労感
慢性的で少し動いただけでも倦怠感や疲労感が起こりやすいものを、病的な状態として診ます。原因として、気血の消耗によるものが多いと考えます。
身体の重ダルさ
身体が重い、ダルイと感じるもので、湿邪や脾・肺・腎の機能失調により津液の代謝が悪くなった場合に多く見られます。
浮腫み
痰湿が停滞している状態として診ます。外邪が原因だったり、脾・肺・腎の機能失調による津液の代謝が悪いものに多く見られます。
東洋医学では、各臓腑に関連したツボが存在することを前回お話ししました。
今回は、頭部・咽喉・胸部・腹部・全身症状から診る、身体の状態を知る方法についてご紹介しました。
身体の症状から、どの臓腑が弱っているかを判別し治療を行います。
次回は引き続き問診で、汗や痛みの種類で診る方法についてご紹介していきます!
参照
東洋医学概論(医道の日本社)
東洋鍼灸理論(医道の日本社)
東洋医学の教科書(ナツメ社)