「早く行きたいなら一人で行け、遠くに行きたいならみんなで行け」
ということわざが象徴するように、チームワークを発揮してこそ偉大なことが成し遂げられます。
人は一人では生きていけませんから、頼り、頼られることが必須なのです。人に頼ることはコミュニケーションをとる上で大切なスキルの一つだと言えるでしょう。
けれど現実には、「人に頼れない」と悩む人は少なくありません。頭では理解していても、うまく頼れない、辛いけど手を借りられない。「人に頼れない自分」を責めてしまうことすらあるかもしれません。
本記事では、人に頼れない心理を解説するとともに、人に頼ることが上手な人の特徴や、人に頼るスキルを養うために具体的な方法をご紹介していきます。
「人に頼れない。でも、変わりたい」と思うあなたの背中を、そっと押すヒントになれば幸いです。
なぜ?人に頼れない人の心理的な原因・理由
まずは、人に頼れない人の心理について確認しておきましょう。
仕事でも恋愛でも誰かに頼るのが苦手な人は少なくありません。特に、繊細で周囲の反応に敏感なHSP気質の人や、幼い頃から“しっかり者”を求められてきた長女タイプの人に多く見られる傾向です。
人に頼ることに抵抗を感じる理由は人それぞれですが、実はそこには共通する心理的なパターンがあります。以下では、そうした背景にある代表的な要因を解説していきます。
人に頼る=弱いと考える「ウィークネスフォビア」

何でも自分で解決しようとする人ほど、「他人に頼る=自分の無力さをさらすこと」だと感じやすい傾向があります。そして、周りに自分の弱みや短所を見せることを恐れるのです。
ウィークネスフォビアを内面化している人は、自分の弱さだけではなく、他人の弱さも嫌います。そのため、「人に頼ってばかりの人=弱い人」だと断定した上で嫌悪し、「なぜ自分でやらないのか」と怒ることも多いのです。
つまりウィークネスフォビアを抱いている人は、自分にも他人にも優しくない人だということです。
しかし、実際のところ「他人に頼ること=弱さ」なのでしょうか? そうではありません。
他人に頼ることはコミュニーションスキルの一つです。他人に頼られることで嬉しがる人も多いですから、その人間心理を熟知した上で、戦略的に他人に頼る人もいます。
トラウマがあるから人に頼れない
過去に他人に頼った際、迷惑そうな顔をされたり断られたりした経験がトラウマになり、自然と「もう頼るのはやめよう」と自分を守るケースもあります。
特に親や先生、上司といった権威のある人から「甘えるな」と叱責され突き放された記憶があると、「人に頼ること=間違っていること」と無意識に刷り込まれてしまうのです。
自己責任論に囚われて視野が狭くなっているから人に頼れない
「人や環境のせいにするな」「自己責任でやるべきだ」と主張する自己責任論者の思想を内面化し、「すべて自分でやるべき」だと思い込んでいるために他人に頼れない人もいます。
もちろん自立心は大切ですが、自分一人でできることは限られていますし、他人の力を借りた方が良いアウトプットができる場合も多々あるのです。視点を変えれば「適切に助けを求めること」も、立派な判断力のひとつ。
自己責任論にとらわれて、「完全に自分だけで頑張る」に囚われるのは不合理だと言えるでしょう。
完璧主義で他人が信用できないから人に頼れない

「自分ひとりでやったほうが確実でクオリティも高い」「他人に任せると不安」
「誰かの手を借りて失敗されるのが怖い」
という思いから、自分で抱え込んでしまう人もいます。完璧主義の人ほど、人に頼ることが難しくなりがちなのです。
しかし、一人でできることは限られています。他人のアイデアやスキルを借りた方が、より良いアウトプットができる可能性もあるのに、なぜその可能性に気づかないのでしょうか?
それは自分を信頼しているから、というよりも、他人を信頼していないからでしょう。「頼んでもどうせちゃんとしてくれない」「裏切られるかもしれない」といった不信感があると、他人に頼ることができません。
「頼ってうまくいった成功体験」が不足しているから人に頼れない
成功体験は、私たちの行動を後押ししてくれるものです。「人に頼ることでうまくいった」という経験が少ないと、頼ることに対してポジティブなイメージが持てません。
逆に、「一人で頑張った方がうまくいった」という経験が多いと、頼ることがリスクだと感じるようになります。このように経験値の少なさから、人に頼れなくなっている人もいるのです。
なぜ大切なの?人に頼ることがもたらすもの・メリット
「人に頼るのが苦手」と感じている人にこそ知ってほしいのが、頼ることの本当の価値。人に頼ることは、円滑な人間関係を築くために必要なスキルです。
ここでは、人に頼ることで得られるメリットをご紹介します。
信頼関係が深まる

思い出してみてください。
好きな人や大切な人、尊敬する人から頼られて、嬉しかったという経験はありませんか?
「信頼している」「必要です」と言われて嫌な気持ちがする人はいません。
人に頼ることは一見すると頼る側にメリットがある行為に見えるのですが、実は頼られる側にも心理的充足をもたらす、双方にとってメリットの大きい行為なのです。
心の負担が軽くなる
すべてを自分一人で抱え込むと、ストレスが溜まりやすくなり、気づかぬうちに心が疲弊してしまいます。
仕事でもプライベートでも、上手に助けを求めることで、自分の心身にゆとりが生まれます。
その余裕があるからこそ、周囲にも優しくなれたり、冷静な判断ができたりするのです。
チームワークが向上する

すべてを自分でやろうとするより、得意な人に任せて役割分担することで、効率よく物事が進みます。
一人で頑張ることも素晴らしいですが、誰かと力を合わせて成果を出すプロセスには、達成感と安心感の両方があるはず。
頼ることで、チーム全体のパフォーマンスも引き上げられるでしょう。
視野が広がり、成長できる
人に頼ることで新しい発見があり、自己成長につながる場合もあります。
また、人の助けを受け入れることで自分の得意・不得意がクリアになり、改善と成長のきっかけになる可能性もあるでしょう。
【改善策】人に頼れない人が「頼る」というスキルを鍛える3つのステップ
「人に頼れない」と感じているなら、それはあなたの性格や能力の問題ではなく、単に慣れていないだけかもしれません。
頼ることはいわばスキルです。トレーニングによって、コツをつかめば、誰でも少しずつ上手になれます。
最後に、人に頼るというスキルを身につけるため、できることを紹介します。
ちょっとしたことを頼ることから始めてみる

最初の一歩は、とてもシンプルでかまいません。まずは「ちょっとしたお願い」から始めてみましょう。
例えば、「重い荷物を持ってもらう」「コピーをお願いする」「ランチの予約を頼む」など、些細な頼みごとでOKです。
小さな頼みごとを日常的にすることで、頼ることへの抵抗感を減らしていくことができます。
「頼んでみたら案外スムーズだった」「相手が快く引き受けてくれた」といった成功体験を積んでいけば、頼ることに徐々に慣れていくでしょう。
頼られた経験と気持ちを思い返す
誰かに頼られた経験を思い出してみましょう。色々な感情が湧いてくるはずです。
大変だった、びっくりした、という感情もあるかもしれませんが、「頼ってくれて嬉しかった」「力になれてよかった」という思いもあるのでは?
そうした記憶を思い出すことで、「頼る=迷惑ではない」という感覚が腑に落ちるはずです。「頼られることは悪いことではない」と実感できたら、頼ることに対する意識が変わるでしょう。
人を信頼する訓練をする

「人に頼れない」背景には、「人を信じきれない」という気持ちがあることもあります。だからこそ、「信頼する力」を育てていくことが頼るための土台になります。
とはいえ、信頼とは一方的に与えられるものではなく、“育てていく”もの。そして、信頼関係はいつも双方向です。信頼できる人を見つけたいなら、あなた自身も信頼される人間になる必要があるでしょう。
また、類は友を呼びます。自分にも他人にも正直に誠実に生きることで、周囲に信頼できる人を増やしていくことができます。
刹那的な関係ばかり求めるのではなく、長期的に信頼関係を築きあげることができる人との関係を大切にしてください。そうすれば、頼りになる人が自然と見つけられるはずです。
「人に頼る」は甘えじゃない!「お互いさま」の意識を持ち、人にも自分にも優しくなろう
「人に頼ることは、自立の対極にある」と思っていたかもしれません。
ですが実は、人に頼ることは、より良い人間関係を築き、精神的な安定を得るために必須のスキルです。
小さなことから実践し、徐々に頼る力を身につけることで、人生はより豊かになるでしょう。
「全部自分でやらなきゃ」という思い込みや「自己責任」の洗脳から脱し、「お互いさま」の意識を持ち、信頼できる人に頼る勇気を持ってみてください。それだけで、あなたの毎日はもっとラクに、そして豊かになるはずです。

